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事業の競争力を守るMOATとは

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございました。
早いもので99本目の記事となります。これまで書いてきた記事を見ていて、「どう勝つか」という価値筋を見つける手法などを多くご紹介してきたみたいです。一方で、「事業をどう守るか」という話はほぼないことに気づきました。ということで、今回は『守りの戦略』について書いてみようと思います。といっても、思いつかなかったので必死に探して見つけたのがMOATと呼ばれる概念です。今回はMOATについて勉強していきます。


MOATとは

MOATはアメリカの投資家、ウォーレン・バフェット氏が度々述べている概念です。「moat(モート)」は城壁を囲む水堀を指す言葉です。
投資家のウォーレン・バフェット氏が好んで使うように、投資の世界で用いられることの多い概念ですが、テック系企業などではマーケティング領域でも使用されることがあります。
強みや競争的優位性をいかに保ち続けるかというものです。「水堀」という意味が指す通り、競争力を保つための防衛的概念になります。よって、Defensibillity(防衛能力)と同義で使われるようです。

MOATの要因

事業の競争力を守るMOATは大きく分類して7つの要因があるそうです。

①Technology / Engineering(技術力)
②Data / Insight (データ量・データモデル・インサイト)
③Network effect / Business Relationship Asset(ネットワーク効果・取引関係の質と量)
④Brand / Awareness(ブランド価値・認知度)
⑤Culture / Team / CxO(企業文化・MVV・経営陣の優秀者など)
⑥Operational Excellence(オペレーショナルエクセレンス・標準化)
⑦Strategy(戦略性)

それぞれの要因を見ていきましょう。

①Technology / Engineering

例えば、Googleの優れた検索エンジン、TOYOTAの耐久力のある車など他社が真似できないほど優れた技術力というのはそれだけでも強いMOATになるのだそうです。

②DATA / Insight

他社が持っていないデータやデータセットを持っていることが大きな優位性につながります。
例えば、Amazonはレビュー機能を有し、相当数のレビューを獲得しています。ユーザーは買い物で失敗したくないのでレビューを参照することが習慣化し、「多くのレビューが集まる」というのは大きなアドバンテージになっています。

③Network effect / Business Relationship Asset

プラットフォームビジネスなどでは、ある一定の取引量を超えると売り手が買い手を呼び、買い手が売り手を呼ぶようなネットワーク効果が生じるとされています。
DATAで例にあげたAmazonもそうですね。レビューを書く人が増えると、それを参考にして買い物する人も増える。買い物する人が増えると、出店したい業者も増える。出店業者が増えると、買い物客が増える。といったものがAmazonが誇るネットワーク効果ですね。規模の経済性も働いてくるので、またとないMOATになります。

④Brand / Awareness

商売において、「第一想起をとれること」と「ブランドとして信頼されていること」はとても重要な役割を果たします。想起されなければ買われることもなく、信頼されなければ商売は続きません。そういった意味で、ブランドとしての価値と認知度は強いMOATになりえます。

⑤Culture / Team / CxO

強い企業文化というのはそれだけで大きな強みになりえます。大義を掲げ、志を高くすると、それに共感する人々が集まります。強力なカルチャーは優秀なタレントを引き付け保持することができるのだそうです。そうなれば強力なディフェンシビリティになりますよね。
特に、リソースの少ない創業期は、優秀な経営陣=チームは最も大きな差別化要因になるそうです。

⑥Operational Excellence

①で紹介したような技術だけでなく、それを支えるプロセスやオペレーションは模倣が難しく、参入してくる競合に対して優位性を保つことができます。
例えば、マクドナルドより美味しいハンバーガーを提供する店はあっても、マクドナルドより優れたオペレーションでその座を奪える企業は多くありません。他社が模倣することが難しいノウハウや知見はそれだけで優位性を保つことができるのです。
バリューチェーンなどを見直しながら、強力なオペレーションを標準化することができれば強力なディフェンシビリティになりえます。

⑦Strategy

オセロで言えば4隅を取りに行くような、戦況を優位に進めていける効果的・効率的な戦略を持つことはMOATに直結します。
市場に受け入れらた先で、売れ続ける仕組みを構築し、ディフェンシビリティを高めていく方策を検討することが重要なのだそうです。
例えば、ユーザーの囲い込みを行いスイッチングコストを高めることができれば、離反者が減り、LTVを向上していくことにつながります。そうした戦況を作り上げていくのが、戦略性です。

まとめ

MOATを構築することは、事業を持続可能に成長させる上で不可欠です。競争が激化する市場においては、ブランド価値の強化、や技術の独自性、データの効果的な活用などが、事業の成功を左右します。これらの要素を理解し、自社のMOATを確立するための戦略を継続的に磨くことが求められます。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
マーケティングの世界では「いかにして勝つか」という攻めの戦略が重要視されているのか、こういった防衛的戦略に関する文献ってあまり多くないんですね。
事業を継続していくにあたって、自社のMOATはどこにあるのかを理解していると防衛戦略も立てやすくなるかもしれませんね。
マーケティングは「買ってもらうための仕組みづくり」、ブランディングは「買ってもらい続けるための仕組みづくり」なんて言われ方をします。そう考えると、MOATはブランディング寄りの考え方なのかもしれませんね。
それでは、また来週お会いしましょう。

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