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非顧客と未顧客 「買わない人」を分析する

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
今週のテーマは、「非顧客」ないし「未顧客」です。すなわち、まだ自社商品を買ってない人を対象にしたお話になります。
「非顧客」への理解は、「中の人」が上級ウェブ解析士講座を受講した際にブルーオーシャン戦略に活用できるフレームワークのひとつとして出てきましたが、実際は新規市場開拓の際だけでなく、既存商品の拡販にも活用できるものなのではというところから「”非”顧客」と同時に「”未”顧客」についても触れたいと思います。

非顧客とは

非顧客は冒頭にも述べた通りブルー・オーシャン戦略に活用するフレームワークのひとつです。未だ自社商品を購入していない顧客層を3つのカテゴリーに分けて分析し、それぞれのカテゴリーの共通点を導くことで潜在的な市場を模索するものになります。
既存の市場に存在しない顧客をを想定することは、市場の枠組みを一旦取り払い、買い手を見直すことを意味します。非顧客のフレームワークは、これを意図的に機能させることで市場の境界線を引き直そうとする試みです。

3つの非顧客層

上述の通りこのフレームワークでは非顧客を3つの層にカテゴライズして分析します。

(1)消極的な買い手
すぐに離反しかねない潜在的な顧客全体を指します。
購入意欲が低く、代替品があればそちらで済ませようとします。
代替品に逃げる要因を取り除く必要があります。
(2)利用しないと決めた買い手
検討した上で購入や利用を控えるという結論を出した人々です。
商品に不満を持っているケースが多く、その不満や利用しない要因を取り除く必要があります。
(3)市場から距離を置く買い手
市場から最も遠い位置にいて、自社商品も代替品も購入しない層です。業界内のどの企業からも潜在顧客とみなされず売り込み対象外になっている人々です。
この層の潜在的需要に着目することで新しい市場が見えてきます。

非顧客ではそれぞれの層にどのような人々がいるのかを想定するだけでなく、それぞれの層の共通点に着目します。顧客でない人々が持つ「買わない理由」の共通点を見つけることができれば、それを突くことで新たな顧客層を大きく取り込むことができます。

未顧客とは

新しい市場開拓に活用する「非顧客」に対して、「未顧客」は新規顧客を獲得することに重点を置いて分析します。同じように、今はまだ顧客でない人に顧客になってもらうための分析ですが、目的地が「新しい市場開拓」なのか「新規顧客獲得」なのかというニュアンスの違いが存在します。
芹澤連氏の著書では、顧客が商品を選択するプロセスをサイコロを振ることに例えて以下のように説明されています。

大前提として、ヘビーユーザーは何もしなくてもサイコロを振ってくれますが、ノンユーザーやライトユーザーはそもそもサイコロを振ってくれません。未顧客に購買してもらうためには、まずサイコロを振ってもらうことから始めなければいけないのです。そのためには、未顧客の生活文脈の中にブランドへの入り口をできるだけたくさん設けて、ブランドにたどり着く確率を高めていく必要があります。

芹澤連『”未”顧客理解』日経BP

顧客になっていない層に対して、ブランドや商品とのタッチポイント=カテゴリーエントリーポイントをできるだけ多く設けて、購買のきっかけを作るために検討するのが「未顧客」なのだそうです。

未顧客理解のための5原則

未顧客を理解するためには5つの原則を段階を経て実践する必要があるのだそうです。
ひとつめの原則は「再解釈の重要性」です。これは未顧客を理解するための視点になります。
未顧客に購買してもらうには、「買いたい」と思うきっかけを作ることが重要です。そのために、購買に至るまでのコンテクスト(文脈)を捉えることが大事です。
例えば、普段は健康を気にして甘いものを買わない人でも、自分へのご褒美などでスイーツを買うことがあるでしょう。その場合「糖質控えめ」をアピールしても売れません。高級感などを演出してご褒美としての魅力をアピールした方が売れるかもしれません。このように、どんな人がどんな場面で買うのかというコンテクストをしっかり理解して、解釈を変えていく必要があるのです。
ふたつめの原則は「市場の再解釈」です。これは、未顧客を軸に商品を売り込む市場を再定義することに役立ちます。
今までの顧客が集まる商材カテゴリーと、未顧客が属する市場は必ずしも全てが一致するわけではないようです。「未顧客はもっと大きな別の市場の一部なのかもしれない」という視点を持ってパラダイムシフト(文脈を変える)ことを実践していきます。
芹澤氏の書籍ではワークマンの事例が紹介されていました。
「作業服」というカテゴリーで「屋外作業者向けの防水防寒スーツ」を「機能性が高く、ツーリングに最適としてバイカー向けに売り出したり、「厨房の水回りでも滑りにくいシューズ」を「転倒防止ができ、妊婦さんに最適」としてマタニティカテゴリに置いたりとパラダイムを変えることで「低価格高機能ウェア」としてのブランドイメージを築き直してきたそうです。
3つめの原則はた「ターゲットの再解釈」です。これは顧客視点で合理的かどうかを再検証しましょう。という視点になります。
企業側の合理では顧客は動いてくれません。一見不合理に見える行動も”顧客の中では”筋が通っていてることも多いです。
例えば、先ほどのスイーツを買う人について見てみましょう。
スイーツを食べたいけど、健康を気にして食べない人がいたとします。企業の合理で行けば、糖質オフや低カロリー表示などで健康をそれほど害さないという印象を与えれば勝ってくれそうです。
しかし、実際には贅沢に生クリームを使った商品を買っていくこともあります。企業視点で見ると全く合理的ではありませんが、顧客側から見るとそうでもありません。この人は、普段は健康を気にして抑圧されてるので”ご褒美”として贅沢なスイーツが欲しいのです。
といった具合に、コンテクストを再解釈した上で、しっかりとターゲットニーズを見直す必要があるということです。
4つめの原則は「ベネフィットの再解釈」です。顧客にとっての便益をしっかりと言語化することで未顧客のコンテクストに合わせて購買意欲を掻き立てます。
引き続きスイーツを例に考えると、「健康を気にして甘いものを控える人でも、自分へのご褒美にスイーツを選ぶ」という前提でいくと、この人に伝えるべきベネフィットは「健康的」なことよりも「ご褒美になるほど贅沢」なことです。どうしても企業が努力して開発した機能的価値を訴求したくなりますが、実際は「これは贅沢だ」と思えるような情緒的価値が重要だったりするものです。
最後は「ポジショニングの再解釈」です。商品が使われる行動の増やし方を考えるという視点だそうです。
往々にしてマーケターは因果関係を重視しますが、顧客視点で考えると理由と行動が逆転することがあるそうです。
マーケター視点では「ブランドAが好きだから、ブランドAの商品を買う」というのがオーソドックスな因果関係ですが、その実、未顧客の場合は「ブランドAの商品を買ったから、ブランドAが好き」となることが多いそうです。
そうさせるのは「選択盲」という、人は自分の行動や選択に合わせて理由を後付けするという事象なのだそうです。
ここで重要なのは、既にファン化した顧客などが述べる購買理由を、未顧客に提示したところで行動してくれないという点です。買う理由は後付けなのだから当然ですよね。なので、購買する理由を与えるよりも直接行動するように働きかけるのが未顧客向けのマーケティングなのだそうです。

まとめ

まぁまぁ文字数が増えてしまったので、この辺でまとめようと思います。
新規市場開拓に活用される、ブルー・オーシャン戦略で使用する「非顧客」は買わない理由の共通点を探って、新しい市場を模索します。
一方で、既存商品をベースに展開される「未顧客」では買わない人のコンテクスト(文脈)を理解した上で、カテゴリーエントリーポイントを増やして新規顧客の獲得を目指します。
どちらも似たような考え方ですが、「未顧客」では因果関係が逆転するなどの特徴的な違いもあります。
この記事では「未顧客」の面白いところが全然伝わらないので(笑)、興味がある方はこちらの書籍をご参照ください。

ちなみに、顧客の3分類で考えると「未顧客」と「非顧客」は、厳密には似て非なるもののようです。
スーパーマーケットを例に挙げると、
・顧客=スーパーマーケットで食品を買う人
・未顧客=他社のスーパーマーケットで食品を買う人
・非顧客=どのスーパーマーケットでも食品を買わない人
なのだそうですよ。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
ふと思うんですが、上級ウェブ解析士講座で取得した知識が風化していく関学があるんですよね。もう一度講座をやり直したくなるなぁ。と、そんな思いで上級ウェブ解析士講座の時に支給された資料を見ていて思いついたテーマでした。
「未顧客」の捉え方も「非顧客」に活用できそうだなぁなんて思ってました。
今週も1週間ネタ探ししてきますね。
それではまた来週お会いしましょう。

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