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他人事ではないヨーロッパの「冬危機」から学ぶこと

ヨーロッパの冬支度が大変な危機を迎えています。
ロシアによるウクライナ侵攻は西側諸国とロシアとの決定的な溝を作り、とても強い経済制裁が発動されています。その結果、これまで依存してきたロシアの天然ガスが入ってこなくなり、ヨーロッパのエネルギー戦略は大きな修正を迫られています。
私たち日本人はあまり実感できませんが、ヨーロッパの冬は日本人の想像を絶する寒さです。かくいう私もよく知っているわけではないのですが(笑)
やはり日本はアジアの温暖な気候の国なので、冬になってもヨーロッパほどの地獄にはなりません。北海道の内陸部でとんでもない雪が降ったりすることがありますが、あれがヨーロッパの冬に近いイメージなんだそうです。そう考えると、すごいですね。

それだけ厳しい冬が毎年やってくるヨーロッパにとって、暖房のためのエネルギー確保は命に関わる問題です。十分なエネルギーがないと、暖房ができないばかりに家のなかで凍死するといったことが頻発しかねません。
ロシアの天然ガスに依存してきた国のなかには、それが現実になろうとしているところがあります。最も深刻なのは、ドイツです。ドイツはロシアから直接パイプラインで天然ガスを輸入していましたが、今回の戦争で発動した経済制裁に反発してロシアは何だかんだと理由をつけて「ノルドストリーム」というパイプラインへの天然ガス供給を止めました。ソ連が崩壊した時にも天然ガス供給が止まることはなかったので、いかに今回のロシアがやっていることが異常であるかが分かります。

そこでEUは、「原発もクリーンエネルギー」と言い出しました。おそらくドイツをはじめとする国々のエネルギー問題を汲んでのことでしょう。それまで脱炭素に関連する国際会議で日本がまだ石炭火力を使用するといったことに対して猛バッシングをしていた国が、です。どの口が言っているのかと笑いたくなりますが、これが国際政治です。
ドイツはさらに、石炭火力発電所まで稼働を強めると言っているのですから、よほど冬に向けてビビっているのでしょう。ここにもヨーロッパ特有の冬への警戒心を感じることができます。
再生可能エネルギーに本格シフトをして、脱原発も達成。そんなドイツが今や、原発の稼働を強めて石炭火力まで活用するといっているのですから、それまで言っていた彼らの「脱炭素」も怪しいものだと感じざるを得ません。単に自国が有利になるために高らかに言っていただけなのか?というわけです。

ヨーロッパに対するツッコミはこれくらいにして、日本のエネルギーについて考えたいと思います。こうした問題は、日本に振りかかってくる可能性は大いにあるからです。いえ、すでに原油高騰やロシアによる「サハリン2」への嫌がらせなどで問題は現実になっています。さらに懸念されている台湾有事が現実になれば、エネルギー問題はさらに深刻化するでしょう。なぜなら、日本に輸入されてくる原油や天然ガスなどのエネルギーは大半が南シナ海や台湾の近くを通ってタンカーで運ばれてくるからです。中国が海上封鎖を行ったら、日本もたちまちエネルギー危機です。これはとてもリアルなリスクですが、どうもこうした問題への危機感が政治的にも社会的にも低いように感じます。

では、どうするか?
ここで私はやはり、再生可能エネルギーを含めたエネルギーの最適な棲み分けを進めるべきだと思います。太陽光発電を手がける企業の代表者ではありますが、私は太陽光発電の限界も知っています。使用電力の全部を再生可能エネルギーに代替することは不可能で、仮にそれができたとしても天候にエネルギー供給が左右されるような不安定さを抱えることになってしまうでしょう。
だからこそ、原子力や火力などの既存電源も必要なのです。特に原子力については日本に世界有数の技術があり、世界有数の発電所があります。これを安全に利用し、さらに太陽光発電や風力発電などのバックアップ電源として火力の電源を確保することも重要です。これもあまり知られていませんが、日本の火力発電所はエネルギー効率が世界トップクラスで、海外のポンコツ発電所と比べるとはるかに省エネで高出力、そしてCO2排出量も少ないのです。
日本人はもっとこうしたエネルギー問題の現実を知り、日本にとって最適な電力供給のあり方を議論するべき時期が来ていると思います。いえ、その時期はもうとっくに来ているので今すぐにでも行動に移すべきだと思うのです。

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