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短歌往来2022年8月号寄稿13首「波に揉まれて」

短歌往来2022年8月号寄稿13首
「波に揉まれて」

梶間和歌


睡眠を捨てゝ仕上げた顔をもて男の波に今朝も飛び込む

八分間目を閉ぢ揺られ過ぐしつるゆりかもめを背に見はるかす海

ガチャベルトにラチェットレンチラチェを仕込みてむかひたりたゞ広いだけの南ホールに

どの瞬間「展示会場」となるものかこゝは潮風吹きかよふ場所

確実に組めば組まるゝ基礎かべを振りあふぎ拭ふ顎の玉みづ

この波に交じる孤独を引き受けよ娑婆に紛れぬ我れはをんなだ

えゝこゝで媚びるをんなは疎まれて去るの五尺脚立ゴシャクの小回りのよさ

二千百ミリメートルH壁ニイヽチ三メートルビームさんメーターを外すにも爪先立ちにならず男は

伝ふ汗を払ふ易さに取り替へて布ナプキンを一瞥し折る

男より雄々しくラチェを繰りし人は見えずなりたり母となりけり

女子だからなどゝ言はれぬこの場所に子を産みしそは見たこともない

定位置にけふも提げたるラチェを友に間配まくばられたる部材をつかむ

潮風に馴れて久しき肉体のなかにありてふ海しづかなり


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