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『新古今和歌集』「秋下」秀歌 梶間和歌選

『新古今集』ことはじめ

『新古今和歌集』。
これは、近現代日本社会において広く読まれてきた勅撰和歌集では決してありません。

世間一般の通念を無批判に受け入れ、読んだこともないくせに『万葉集』と引き比べ貶める輩は論外として、

『新古今集』に興味関心はあるもののとっつきにくい、
2千首近く収められているという和歌集を読み通せる気がしない、
どうやらすごい集らしいし、何が良くて何が良くないか判断する目もないのに安易に手を付けるには気が引ける、

など、謙虚さゆえに怖気づきこのすばらしい和歌集に手を出すことをためらっている方、
また単に触れる機会がなかっただけで、偶然辿り着いたこの記事によって興味が湧いてきた、という方のため、

この記事では「秋下」巻から梶間和歌の選んだ秀歌を、梶間のコメントを添えてご紹介します。


もとは私オリジナルの作品でも文章でもなんでもない他者の歌、そしてそれらの編まれたアンソロジーからの秀歌選。
当然無料記事として公開したいのですが、

noteの仕様上、無料記事として出しますと、
記事が加筆、更新された際にどなたにもその旨が届かない、その方の最初に見た瞬間までの記事しかその方には(おそらく)永遠に読まれない、

ということがございます。

これを避けるため、低価格ですが有料記事とすることで、購入者の方に更新の都度通知を飛ばす形を取らせていただきます。

『新古今』にほぼ初めて触れるという方には「こんな歌があるのか」と知るための取っ掛かりとしてお楽しみいただきつつ、
長年の梶間の読者様には、歌を選ぶ際の梶間の基準をおもしろがったり、添えたコメントから梶間の思想の理解を深めたり、といったところにも価値を感じていただけたらと思います。


基本は手元にあります佐佐木信綱校訂『新訂 新古今和歌集』(岩波文庫)を参照しますが、疑問のある表記は他の資料を参考しつつ改めることがあるかもしれません。

こちらにピックアップする歌のうち、その一定数については、過去にブログにて訳や解説をしております。
大変な数になりますため、すべてのリンクを貼ることはできませんので、
この記事で「この歌、いいな」「もっと知りたいな」と思ってくださいましたら、ぜひ梶間和歌ブログ「わたる風よりにほふマルボロ」でその歌を検索してみてください。
読みの浅かった昔の記事が出てきた場合は……どうか、笑って読み流してくださいね。

また、こちら有料記事ではありますが上記のとおり、もとが他者の歌のアンソロジー、あくまで私がそこから選びコメントを付した形になります。
スクリーンショットでの拡散は推奨できませんが、引用などはご自由にどうぞ。
これがきっかけで『新古今』の魅力を知る方の増えますことは、喜びでしかありません。


あなたの有意義な旅のお手伝いができますこと、心よりうれしく思います。

「秋下」以外の巻の秀歌選を読む


『新古今和歌集』「秋下」秀歌選

妻恋ふる鹿のたちどを尋ぬればさやまが裾に秋かぜぞ吹く
み山べの松のこずゑをわたるなり嵐にやどすさをしかの声

牡鹿は妻を求めて鳴き声を立てるとされ、その声はせつないものとされます。
萩の花を牡鹿の妻と見立てて詠む和歌が多いです。
実際には……花を食べているらしい。それが、「あはれ」……。

ほととぎすにしても鹿にしても、実際聞くと 「この声が……あはれ? 」 と首を傾げたくなるところはある。
特定のコミュニティにおいて共有される美は共同幻想である、という面が決して否定できない。人間だもの。


鳴く鹿の声に目覚めてしのぶかな見はてぬ夢の秋のおもひ

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