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「SNS少女たちの10日間」を見た

コロナ禍だし、アクセスがイマイチな映画館でしかやっていない。けど見に行かないといけない気がして、普通はしない前日のネット予約をし、見に行ったこの映画。

幼く見える女優が3人、12歳のふりをして、偽アカウントを通じネット上に放たれるとどういったことになるか。。。本作はネット上の児童虐待の様子を捉えようと手がけられたチェコの実験的ドキュメンタリー作品だ。

SNSを通じて危険な目に合う子供たちの話は私にとってはニュースの世界。好奇心だか、悩みを募らせてだか、他にすることがないからか、何らかの理由でネット上をさまよう子供たち。そんな迷子のような子供達にアプローチするような奴らの顔を見てやろうじゃないか。当然普通でもないだろうし、ろくでもない奴らに決まっている。ドキュメンタリーだから啓蒙活動に使える内容の映画だろう(だがR15指定!!)、そんな考えで座席についた。

だが、話はそう簡単ではなかった。。。

ネット上の”12歳”を選ぶ女優達のオーディション。彼女達には作品の目的、更には出演自体、精神的な負担がかかる可能性がある旨伝えられる。幼い頃に実体験のある女性達も多いことに驚く。それがオーディションにプラスとなるのだろうか。。。
選ばれたのは3人の女優達。スタジオ内にそれぞれの子供時代の部屋を再現する。ここで10日間、ネット上の12歳になるのだ。

それぞれが12歳としての偽のアカウントを開いた瞬間にアプローチが次々とくる。「かわいいね」「話しない?」大人の女性にだって危険な環境だ。
撮影現場では女優達には手厚いサポートがある。精神科医、性科学者、弁護士などの専門家がバックにつき、監督やスタッフがセリフを考え、アプローチや会話が危険性を帯びた瞬間、回避可能だ。

本物の12歳だったら。。。親に内緒で一人でPCの前に座る12歳だったら。。。

メッセージや画像のみのやり取りの末(いわゆるグルーミングフェーズ)、カメラをつなくまでに進展すると、ヤツらの勢いは止まらなくなる。
どうにかしてカメラの前の”12歳”の服を脱がせたい。どうにかして”12歳”でイキたい。どうにかして本物の”12歳”に会いたい。なだめ、すかし、哀願しそして脅す。。。そんなクソ野郎ばかり。クソ野郎達はほぼ皆、中年男性。むき出しの下半身の写真を送ってくるのは序の口。獣姦もの、児童ポルノの映像もガンガン送ってくる。。。こんなもん送ってくるだけで犯罪なのに。向こう側にいる男たちの顔もぼかしが入っているので”12歳”の3人のPC上の映像はぼかしだらけだ。

10日間でアプローチしてきた奴らは2,458人となっている。映画の終わりに流れる制作側のメッセージでは、「チェコ警察が映像を要求し、刑事手続きを開始した」となっているが、その一方で「子供たちの話をよく聞くようにしてほしい」という言葉も残している。なぜならば、ここで撮られた輩だけを一網打尽にしたとしても問題の根絶にはならないからだ。

どういった理由であれ、現実世界より自分を愛し、救ってくれるという望み、幻想を持ちネットをさまよう子供たちも減らさないとネット上の児童虐待自体減ることはないからだ。それがひしひしと伝わってくるので後味がひどく悪い。

絶望感を更に深くするのが、映画の中での性科学者の指摘だ。アプローチしてくる大人たちが児童性愛者というくくりには収まらない、と。。。すなわち”12歳”達の服を執拗に脱がそうとする普通とは思えない奴らは、あなたの隣の普通の人なのかもしれないということなのだ。
実際、アプローチしてきた男の中に知人を発見する映画スタッフも登場する。

個人的には、この映画は小学校中学年から上の子供たちに見てもらいたいと思った。全編通してそのまま見せるのは当然無理だし、逆に虐待にしかならないので、年齢に合わせた編集が必要になる。ただ、いわゆる欧米の作品でないところも吉と出ていて、扇情的な演出感がないため、少なくとも素材として活かせるところはいくらでもある。子供たちが後戻りできないところまでネットをさまよわないように。。。そう思えたのが唯一の前向きな感想かもしれない。

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