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「アラブの奥さんは今日も命がけ」・・ ・・・⑱ 新刊・日本語訳

今回の本は、Kindle 本ではなくペーパー本です。原作は「The Daily Hazard Of A Middle Eastern Wife」英語版。著者はエジプト人のSoad Nasr 。この本の日本語版が「アラブの奥さんは今日も命がけ」で出版されました。

皆さんはアラブの女性の恋愛、婚約、結婚、子育てに興味はありませんか?中東やアラブというと日本人には歴史も馴染みがなく、遠い地域です。紛争やテロも多いし、女性はベールをかぶっているし、ドバイはピかピカしだけど、飲酒は禁止だし・・・、女性たちはどうしているの?と思ったそんなあなたにぴったりの一冊です。

  ↑ こちらは日本語版。今年の発売。

コミカルなアラブ女性の本音の本気トーク

著者は「私は物書きというわけではないので、文章が上手く書けるわけではありません。反感や批判を持たれることも覚悟で率直に書きます。」と言っています。

アラブ諸国のニュースを見ると紛争、テロ、戒律が厳しい、人権がない、女性の地位が低いとか、ネガティブなものが多いです。どれだけ、女性たちは虐げられて、苦しんでいるのかと思います。

でも実態は私たちもアラブの女性も基本変わりません。

報道にあるような日本ではありえない、名誉殺人とか著者自身も納得しない極端な伝統もありますが、すべてではありません。女性は、程度の差や文化の違いはあっても同じようなことで悩み、日々の生活は似たように大変です。女性にとって、結婚は、嫉妬、優越感、重圧の入り混じった人生の転機。本書に出てくる女性の本音トークに「そうそう、ある、ある」のオンパレードです。

結婚は契約

結婚式では新郎新婦の権利と義務について書かれた結婚の契約書に新郎新婦・証人が署名し、さらに新郎新婦が拇印を押します。この契約書には、いろいろな項目をつけることができ、「妻の同意なしに第二夫人と結婚できるかどうか」「離婚した時の家具やジュエリーに権利について」なんてのもあるそうです。まさに契約書ですね。

婚約前・婚約中に婚約者やその家族の職業、地位、経済力、財産、家柄、容姿・素行を調査して、相応しい結婚かをちゃんと値踏みします。そして結婚の条件・契約を整えていきます。条件や契約に問題があれば破談になります。

結婚の契約が成立して、結婚した2人は晴れて身体的接触が認められます。万が一婚約中に破談になったときのリスクも考えて、女性に不利にならないように厳格に契約が守られているのかもしれません。


邪眼の呪縛

本書のアラブの文化で印象的だったのが「邪眼(evil eye・アイン・アルハスード)」の考え方です。邪眼は誰かをじっと見つめたりにらんだりすることで、害や不幸をもたらすという眼差しです。

世の中や人々に起こる悪いことは、すべて邪眼を送っている誰か?のせいにする風潮に著者は強く否定的です。邪眼 (妬み・嫉妬)があるのは理解できますが、なんでも邪眼で片づけられ、場合によっては、邪眼の嫌疑が掛けられるような社会はちょっと怖いですよね。

邪険を避けるためにギリギリまで友人に婚約を話さない、男の子を解任中とは言わない、なんてこともあるらしい。嫉妬の対象になるのを避けたい気持ちはわかりますが、誰かを疑ったり、疑われたり、なんかリラックスできない社会ですよね。

あなたの「○○の奥さん・夫は今日も命がけ」は?

著者は、アラブ的な良いことも不満なこともコミカルに率直に書いているので、読者は楽しく読みながら、アラブの女性について知ることができます。でもこの本の出版は、伝統的価値観の強いアラブ諸国の女性として、とても勇気のいることだったと思います。

私たちは政治家やニュース越しに世界を見ています。その向こうには実は同じような庶民がいて、同じような気持ちで生活していることを忘れてしまいます。ショッキングなニュースばかりだと、いつの間にか理解不能の国や人々になってしまいます。

だからこそ、著者はごく普通の本音トークしたんでしょうね。同時にアラブ諸国の現状に軽やかに自分の意見を述べたんでしょう。

誰かが勇気を持って自分の意見や実態を紹介しないと、なにも見えてきません。同じようなことを思っている人が実は他にも大勢いることに気づかず、孤立して、仕方ないと諦めている人も多いかもしれません。他の国の人の場合は、誤解してたり、全くの無知かもしれません。

いろいろな考え方や状況がわかれば、理解しあえたり、助け合えたり、もっと生きやすい社会に変われるはず、という著者の願いが込められた本です。

おススメ。


おまけ

この本は友人が翻訳に携わった本でした。タイトルがとてもいいので、興味を惹かれますよね。そんな関係がなかったら、買って読むことはなかったと思いますが、おかげでオモシロイ本が読めました。私のまわりのアラブの友人たちのことが少しわかりました。

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