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男性の高音の美声に酔いしれる

皆さんは男性でも女性のような高い音域を歌える歌手がいるのをご存じでしょうか?

男性でも女性の音域が歌えるカウンターテナー

日本では岡本知高さんがソプラ二スタ(男性で女性のソプラノを歌える歌手)として有名ですよね。

岡本知高Concerto del Sopranista 2023

初めて岡本さんの存在を知った時、衝撃的でした。ド派手なドレスのような衣装とメイクで、LGBQの人かな?と思いましたが、そうではなく、幸運にも高い美しい声が成人になっても出せる男性です。
普段着の岡本さんはごく普通の男性でした。

カウンターテナーはそんな女性の音域(アルト、メゾソプラノ、ソプラノ)を歌える男性歌手の総称です。

私のクワイヤーメンバーの中にもカウンターテナーの男性ロンがいます。
普段の会話で特に声が高音と感じたことはありませんが、ロンの横で歌ったときに私と同じソプラノパートを歌っていたのはびっくりしました。
実際にいるんですね。

人為的に作ったカストラート

そんなカンターテナーやソプラニスタを人為的に作り出したのが「カストラート」です。変声期前の7歳ー11歳ぐらいの美声の男の子を去勢し、歌の練習をさせ、成人しても高音で美しく歌える男性歌手が「カストラート」です。

バロック時代は女性が教会や劇場で歌うことが禁じられていたため、聖歌隊のボーイソプラノだけでなく、女性の音域が出せ、しかも成人男性の肺活量でダイナミックに歌えるカストラートがもてはやされた時代だったのです。

人気のカストラートとして成功すれば、一財産を築けるため、17、18世紀の最盛期には毎年約4000人の男子が去勢させられたそうですが、カストラートとして成人し、成功できるのはごくわずかでした。

ちなみにベートーヴェンも幼少期に美声のボーイソプラノだったため、周囲からカストラートになることを望まれたようです。しかし、父が反対し、偉大な作曲家になったことは周知の通りです。

映画「カストラート」のフォリネッリ

そんなカストラートの中で、伝説の偉大なカストラートとして記録に残っているのが、通称フォリネッリことカルロ・ブロスキ(Carlo Broschi 1705-1782)です。

そして、そのフォリネッリの生涯を映画化したのが「カストラート」(1994年製作・イタリア、ベルギー、フランス合作、(伊Farinelli Il Castrato, 英Farinelli))です。

私もこの映画を本当にウットリして観てしまいました。
フォリネッリは3オクターブ半歌えたといいますから、驚きです。
当時、このフォリネッリの舞台や歌声を聴いて聴衆が熱狂したり、貴婦人たちが失神したというはわかります。

フォリネッリは背が高いイケメンの男性だったらしく、この映画でも長身でどこか憂いのあるステファノ・ディオニジが見事に演じています。
あんな男性にあの声であんな風に歌われたら、私も失神するかもですよ。

劇中でヘンデル作の「泣かせてください」(Lascia ch'io pianga)をフォリネッリが訴えかけるように歌いますが、心を奪われますよ。悲しくも美しい。

映画には際どいシーンもありますが、それも時代や官能的な世界を感じさせるアクセントになってます。バロック時代の煌びやか世界も楽しいです。

ステージ上では白塗りのお化粧をするので現代感覚だとちょっと違和感がありますが、普段のシーンの素顔はすごく甘くカッコいいですよ。

音楽がとてもいいので、クラシック音楽スキの方なら、文句なしで楽しんでいただけると思います。

私のようにクラッシック音楽に詳しくなくても十分楽しめましたよ。

現代のフォリネッリたち

現在はカストラートのように去勢をすることはないでしょうが、フォリネッリのように高音の美声で歌う男性シンガーは世界で活躍しています。
彼らもとてもイケメンですよ。
こんな風に歌えるの?と思うほど見た目が男性的だったりします。

   ↑女性も交えての聴き比べができます。

  ↑私はこのIestyn Davies が好きです。

カウンターテナーの素晴らしい生の歌声を実際に聴いて、その向こうにある作曲家たちとも繋がるようなウットリ感を味わってみたいです。

おまけ)
映画を観た後に「カストラート」のメイキングを観るのも驚きの事実があり、面白いです。



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