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三沢厚彦と山本精一の"多次元性"

7月末は三沢厚彦さんの展覧会と、その展覧会の一環で行われる山本精一さんのライブへ。場所は千葉市美術館でした。
『リアリズムではなくリアリティ』という言葉が印象的な三沢さんの作品は圧倒的な存在感を放っていました。
言葉社会の密度が増した現代人からは、例えば古代の『像』から、本来持っているものを理解すること、何かを得ることは難しいのかもしれませんが、そう言った時代にあって、現代人である三沢さんが動物を題材にした『ANIMALS』を作っていることがとても興味深いです。
(画像は撮影可能エリアでのものです)

壁に記された言葉の一つです

山本精一さんのライブは二日間で初日がアコギ、翌日がエレキによる完全即興演奏のライブ。

二日間ありまして、日曜日はアコースティックギターによる即興(アンプラグド)で、昨日は会場側が用意したアンプ3台を使ったエレキによる即興演奏でした(三沢さんが「なんとかoffで買いました」と言ったら、「Hard offじゃないですかね」と山本さんが答えるやりとりが)。
展覧会のタイトルは『ANIMALS/Multi-dimensions』なんですが、最初にライブをやりたいという構想があり、三沢さんが影響を受けた建築家の、中庭から考える、という発想を元に、先にライブが行われるスペースを考えて、それから展示の仕方を考えていったそうです。
タイトルの『多次元』から浮かぶアーティストは山本精一さんしかいないということで、それが実現したとのこと。
山本精一さんの「Crown of Fuzzy Groove」はすごい好きで山本さんの歌の作品とともに、今も良く聴くのですが、ライブは初めてでした。結果、行って良かったです。

初日はガット・ギターとフォーク・ギターの2台を使い分けての即興演奏で、アンプは通していませんが、美術館の響く音が良くて聴き入りました。即興をするうちに、良いところに入る瞬間というのがあるのですが、そこに入ったときのグルーヴがすごく良かったです。

1日目の演奏が終わってからの三沢さんとのMCで「リハの方が良かったね」とご本人がおっしゃっていたのですが、実はライブの2時間くらい前に展示を見ていたら、ギターの音が聴こえてきたので、ああ、このフロアはBGMがあるのかと思ったら、ちょうどご本人到着後、おもむろにギターを弾き始めて止まらなくなった場面だったらしく、たしかにそのときの音はとても良かったです。話によるとガット・ギターの弦をライブ前に張り替えたらしいのですが、ご本人曰く、それは弦の張りが安定しないのでやっちゃいけないことだったのに忘れてた、とのこと。ただ、即興演奏しながら、チューニングをしていく感じも自分としては良い感じだと思っていました。

そして昨日のエレキの即興は、もう本当に圧倒されました。足元にいくつものエフェクターが置いてあり、激しいプレイをしながらそれらを使ってサウンドを構築し、ものすごいグルーヴが生まれ、途中からだんだんとアンビエントサウンドに移行し、そのサウンドが会場中に広がっていくのがまさに圧巻でした。また、音が体に当たるのが心地よかったです。

演奏後、三沢さんが「素晴らしすぎて」との言葉に山本さんは「偏差値58」とおっしゃった後、「でも58出ればいいか」とも。自分としては偏差値とは何の関係もない『音世界』を感じることができたと思いますし、最初から最後まで山本精一の時間を堪能できました。
そして、その場を作ろうと思った三沢厚彦さんは改めて流石だと思いました。
千葉市美術館さんに対しても感謝の気持ちでいっぱいです。

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