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【2度見したら良く分かったシリーズ】「がんばれ!ベアーズ」は、やっぱり奇跡の映画だった!

先日、BSで何気なく録画していた本作を、出勤前に見始めたら止まらなくなって仕事を半休してしまいました。子供の頃もちろん見ていたが、その時に分からなかった感動があったんです。

この映画は1976年に公開され日本で大ヒット。その後テレビで何回も放送されているため40代以上の人は大抵見ています。
よく企画の打合せでも「がんばれベアーズ系」「クールランニングっぽい」などと、スポーツ&サクセスストーリーの例題としてよく出てきます。
ただ賞をとるタイプの名作ではなく、カルト的人気のある映画という訳でもないため、大人になってみる機会はありませんでした。
自分自身が歳を重ねて、子供もいるようになってから観ると、リトルリーグのコーチ役ウォルター・マッソーの気持ちがよくわかるようになっていました。
子供の頃見た時は「ダメなチームが頑張って試合に勝つ、女の子のピッチャーが強くて面白かった!」という程度で、コーチはビールばっかり飲んでいるダメな男と言うくらいの印象でした。

カリフォルニア州の地方都市を舞台とした少年野球の話なんですが、現在見直すとその背景に、地域コミュニティーでのスポーツやイベント重要さ。「父から子へ人生の何かを伝えたい」というアメリカ独特の文化性がベースに強くあることを感じました。野球好きの親子で構成される日本のリトルリーグと大分違います。

ストーリーは、スポーツ苦手な息子に何とか野球チームで活躍させたい若い議員が、コーチとしてマイナーリーグで何かあった男・バターメイカー(ウォルター・マッソー)に依頼するところからスタートします。序盤は大変静かで、音楽もほとんど流れません。鬱展開からのスタートです。
ここは「巨人の星」「あしたのジョー」「アパッチ野球軍」などをオリジンとする、貧しさ、障害、特異な環境などどうにもならない初期設定をバネとした「日本の少年コミックスポ根もの」からみるとかなり物足りない。

しかもこの映画は、子供たちの社会背景は描かず、大きな事件や敵も登場しません、ベアーズが試合に勝つかどうかの話だけで、大人の登場人物は最小限にされています。設定だけみると「モロ子供向け映画」ですが、それが40年後見ても心に沁みてくる感動作になっている要素はどこにあるか?
それは無駄をそぎ落とし、シンプルなテーマで押し切った脚本にあると思います。

「ベアーズ」に入る子供たち(小学生)は、狭いコミュニティの中での現実とイジメ構造の中で、最初から傷ついています。歪んでいる者もいます。敵チームは背の大きな白人の高学年中心ですが、ベアーズはチビ、デブ、アフリカ系、メキシコ系と様々。
「どうせ、俺たちは期待されていないし、何もできない」

コーチになったバターメイカーは、思うようにならない人生の葛藤を酒浸りの日々で腐っています。でも、この子供たちとの触れ合いを通じて、心の奥底にしまっていた「普遍性ある希望」を見出していくからたまらない。
最初は事務的に指示をすると子供たちは生意気に反発し、怒って強く言うとすぐ傷つき、やる気をなくします。

でも子供たちの姿の中にバターメイカーは自分の存在証明、真実の人生を発見します。「打ち勝つことを覚えさせたい、そのチャンスを全員に機会を与えたい」という気持ちで子供たちに声を掛け、自信を持たせていきます。
そこから、脚本のお手本のように、バイクに乗った喫煙不良の助っ人と、コーチの別居中の娘が入ることで俄然パワーアップしていき、やがて子供側も変わり始めます。

そして、あのカルメンのテーマ曲登場!ドライブギアが入る!

映画のクレジットをみると70年代らしく、パラマウント社単独での制作になっています。ここからは妄想ですが、脚本の出来の良さを見たプロデューサーが会社と掛け合い、ウォルター・マッソー、テイタム・オニール、ヴィック・モローといった有名キャストの出演と低予算を条件にOKを出したのではないでしょうか?
おかげでキャスト費に大半を持っていかれ、撮影は短期間に行われたと思います。その証拠に、試合のシーンで日差しや影が良く変わり、絵がつながっていません。

でも、ドキュメントタッチの手持ちカメラの映像は、子供たちの心境の変化を生き生きと捉えています。
野球版の「二十四の瞳」(もちろん木下惠介)「ミツバチのささやき」だと思いました

映画後半で長く描かれる決勝戦の描写、ラストは名シーンです。
仕事のストレスや、悩みだらけで眠れない夜。本作は押し付けがましくなく淡々とドラマが展開します。
今でもいろいろなメディアで現在も手軽に見ることができますので、ぜひお時間あれば配信などで探してみてください!


間違ってはいけないのが、本作のヒット後に「がんばれ!ベアーズ大旋風 -日本遠征-」という映画が東映製作で作られているのですが、歴史に残る珍作になっています。

若山富三郎、アントニオ猪木、萩本欽一が出演する不思議な映画です。




ドラマ企画100本目指します!