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noteへぶちかまし

 たったいま、noteへの投稿を書いていたら、ぼくと身内(ヘルパー派遣事業所)の人たちにとって、一目見たら笑いが止まらなくなる文字変換がパソコンの画面に打ち出された。

 「長い行列」と入力するはずだった。
ところが、画面に打ち出された四文字は「永井行列」だった。

 永井くんはどの障害者(利用者)さんからも、家族さんからも、仕事場のスタッフからも信頼され、愛されているおじさんサポーター(ヘルパー)さんに他ならない。

 どこかとぼけていて、とても哲学的で、思考は右寄りでもなく、中道でもなく、左寄りでもない、もちろん、全体主義者でもないし、アナキストでもない。
 裏返せば、すべてを網羅しているというか、永井くん自身がピンときたものは内面へ落としこんで、咀嚼そしゃくしてみて、暮らしや仕事に活かしてみる。
 その技術や価値観がベストに近いものであっても、けっしてそこに留まらず、脳ミソにある引き出しから直感と積み重ねを見繕って、ひと工夫ふた工夫をくわえる。
うまくいかなければ、固執しないで後戻りする。

 そんな永井くんはダジャレの天才であり、ぼくの「ファッションホテルの名前でも考えてみぃひんか?」なんていうアホなメールほど、ちゃんと返信が届く。

 この間は「ひどい物忘れ」を相談したら、「それは禅の教えを活かせばいいと思うなぁ」とアドバイスしてくれた。
「ぼくねぇ、朝食のときにね、白ごはんをクチャクチャ言わせながら、何度も噛むんですよ」
 薄くなったアタマを掻きながら、話はつづく。
「咀嚼っていうやつです。カミさんに『行儀が悪い』って叱られながらつづけるんです。集中して噛む音を聴いてると、お米そのものの甘みとか、旨みがすこしづつ解ってくるんですよ」
 ここで言葉の熱量をすこし落として、永井くんはこう締めくくった。
「毎朝くり返してたら、気持ちがクリアになっていくというか、いろんなものが見えてくるというか、『無の境地』っていうんですかねぇ」
 ぼくの場合は、体の「痛み」に意識を研ぎ澄ませるという結論になった。
ここのところの急な冷えこみで、今日は車いすに乗ると短時間でキリキリと腰がうずいた。
 残念ながら、永井くんのアドバイスは実らず、家へ帰ったあとは着替えもしないで、ベッドインするのみになってしまった。

 それにしても、「永井行列」にはまいってしまった。
 不意打ちだったから、たまらなかった。

 永井くんは事業所で介護技術の担当をしていて、この間は大事な会議中の腰の痛みに、つき添いのサポーターさんにスマホから適切な指示を届けてくれた。

 サポーターさんとふたりで過ごす午後に、訪れた不意打ちの大爆笑をnoteへぶちかましてしまった。
 
 あすは朝早くから、予定が入っている。夕食も、清拭せいしき(体を拭くこと)も、ストレッチも残っている。
 今度こそ、腰の痛みに耳を澄ますことができるだろうか。
 あすはうまくいかなくても、くり返し試してみよう。

 今夜は「永井行列」に出逢って、グッスリ眠れるだろう。

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