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PRパーソンと企業のミスマッチを防ぐための5つの判断材料

企業活動における広報PRの大切さが知られるようになり、スタートアップなどでも早くからPRパーソンをつける企業が増えましたが、その一方でPRパーソンと企業のミスマッチの事例もよく聞きます。

「名前の売れている有名なPRパーソンに頼んだのに、思ったより成果が出なかった」
「他の企業ですごく成果を出している人だけど、うちには合わなかったみたい」

こんなことが実はそこかしこで起きている。フリーランスのPRパーソンや独立した人が立ち上げる小さなPR会社が増えていることもあり、PRを外に頼むときの選択肢はとても多くなってきています。

ニーズ急増に伴い乱立状態でもあるので、比例するようにミスマッチも起きてくるのは必然ともいえます。せっかく契約したPRパーソンが合わないと、どちらにとっても不幸せなので、ミスマッチを防ぐために見るといいポイントを紹介します。

企業側ならPRパーソンを見極める指針になるし、PRパーソン側なら自分を客観視してポジショニングするのに役立ちます。自分の状況に当てはめて考えてみてください。

PRパーソンと企業のミスマッチが起きる原因

最近ミスマッチが多発している原因は、大きく以下の2点で説明できます。

広報PRの業務範囲が広がった

かつてはメディア掲載獲得を主なKPIにしていればよかった広報PRも、メディア(情報を媒介するもの)の多様化により、かなり幅広いものになりました。

この10年間だけでもSNSは急速に発達し、人々に情報を届ける手段は凄まじく多様になっています。そのため広報PRの業務範囲も、ひとつの職種ではカバーしきれないほどに広がっています。

これだけ広い海の中では、企業側が「PRに力を入れたい」と言ったときに想像する活動と、PRパーソンが「私が得意とするPRとはこれ」という内容が、ぴったりフィットする可能性のほうが低い。業務範囲や期待値のすり合わせが、より大事になってきています。

なのに広報PRという職種の理解度はまだまだ低い

それでもまだ一般の人が「広報」「PR」と聞いたときに想像するのは、「たくさん発信して自社の魅力を知ってもらう!」とか、「メディアに取り上げられて売上が伸びる無料の広告!」とかだったりします。

浅い理解でPRに過度な期待をしてしまうと、成果が出るまでに時間がかかるリレーション構築を待てなかったり、売上にすぐに反映されるわけではない地道な関係づくりに価値や意味を見いだせなかったりしてしまいます。

それ以前に「成果」や「ゴール」の設定もうまくできていないことも多く、短期的な活動だけを見て「ミスマッチだった」という感覚に陥ってしまうのです。

5つの視点で多面的に見れば、相性のいいPRパーソンは見つかる

PRパーソン自身も、たった数年のキャリアではすべての領域や立場を経験することは不可能なので、自分自身のスキルを客観的かつ立体的に認知できていないことがあります。現に、自分の差別化ポイントや得意不得意を上手に見せられているPRパーソンはあまり見かけません。

これでは企業側もどうやって選べばいいのかわからない……。PRはスキルの属人性が高い職種なので、フリーランスなど個人に頼む場合でも、PR会社の担当者を見極める場合でも、気にするべきポイントはほぼ同じで、これから書く5つの視点を見ておけば大丈夫。

1. 広報PR業務の得意領域、カバー範囲

まずはシンプルに、どういう広報PR業務を得意とする人なのか。

広報を分類するときによくいわれる、ガンガン営業をしてパブリシティを獲得していく「攻めの広報タイプ」か、ブランド価値を守り危機管理もできる「守りの広報タイプ」か、といった感じです。

同じ「広報PR」でも、メディアリレーションズが得意な人もいれば、企画や情報開発力で勝負するプランナー気質な人も、社内外のステークホルダーとの調整力がひたすら高い人もいます。

また、PRの人に頼めばマーケティングもやってもらえると思っている企業さんがたまにいますが、「広報PR」と「マーケティング」は近いながらも別の職種です。周辺領域もカバーできてしまう人もいますが、王道キャリアを歩んできたPRパーソンほど、マーケはやらないと思ったほうがいいです。

広すぎる広報PR業務の中でどのへんが得意な人なのか、というのがひとつめの視点です。

2. PR会社タイプか、事業会社広報タイプか

PRパーソンには大きく分けて2種類の人種がいます。PR会社にいた経歴がある人と、それがなく事業会社の広報としてやってきた人。PR会社にいたことがあるかないかで、仕事を受けるときのフローやスタンスが結構違ったりします。

一番差が出るのは期待値調整の部分。PR会社出身者は、活動内容と報酬をしっかり提示してその合意をしっかり取り、いざ活動がはじまっても少し外からの立場だったりするでしょう。しかし事業会社にいたタイプの人は、あまり細かい業務内容を決めずに時間や稼働日数で引き受け、社員のように動いてくれることがあります。

あくまで「そういう傾向」という話ですが、自分たちがどのような稼働スタイルを求めているか、はっきりさせてお願いしたほうがあとからギャップが少なくて済みます。

3. 得意としている成長フェーズと企業規模

スタートアップにおいては特に、成長フェーズ(シード/アーリー/ミドル他)と、企業規模(主に社員人数で判断できる)によって、必要となるPR活動がかなり変わってきます。

まだPMFしていないような段階だと、ただメディア露出を取りまくることは逆効果。ユーザーインタビューなどマーケティング調査に近い活動や、プロダクト改善のための社内へのフィードバックも大事だったりします。

30~50人くらいの規模になると、社長のビジョンを社内に浸透させるインナーコミュニケーションが必要になったり、採用もPRの大きな目的のひとつになったりします。100人を超えてくれば、PRがチーム化することも多いでしょう。チームで動くにはそれはそれで業務体系化のスキルが必要で、これまた違う様相になってきます。

イメージしやすいように単純化してみると、そんな感じ。誰しも自分が経験したことからしか語れないので、どのへんの成長フェーズと企業規模を得意としている人か、本人もふわっとしていることが多いので注意です。

4. 実務からアドバイザー・顧問まで、関わりの濃度

次に、どれくらいの関わりをしてくれるの?という濃度の話。

「フィットしなかった」と感じてしまうケースの多くが、「ためになるアドバイスはたくさんしてくれて勉強にはなったが、それをやるには実際に中で手を動かす人が必要で、成果らしきものは出なかった」というパターンな気がしています。

成長フェーズが早い段階の企業ほど、中に入って手を動かしてくれる人が必要です。そういう人を採用して育ててもらうという意味で、伴走型のアドバイザーとの相性がいいパターンもありますが、その人材とプロのPRパーソンのスキルギャップが大きすぎたり、性格や志向が合わなかったりすると育成も上手くいきません。

どんなに有益なアドバイスでも、しっかり活かすには企業側にもそれなりに体力がいります。やみくもに任せるのではなく、自社に合った体制づくりから考えましょう。

5. 業界や事業に対する愛の深度

そして最後に、PRパーソン自身がその企業の事業そのものや周りを取り巻く業界に、真に興味をもてているのか、というところ。

PRに最も必要なのは、愛です。愛なきところによいPRは生まれません。どんなに輝かしい経歴や一流のスキルを持っていても、愛をもって接してくれていなければ、出る成果も出ないのです。

人間と人間なので、愛をもって向き合ってくれるかどうか、腹を割って話せばわかります。経営者は人生を賭けて取り組んでいる事業やプロジェクトだと思うので、同じ熱量まではさすがに無理でも、なんらかの当事者意識をもって動いてくれる人が見つけられるといいですね。

おまけ:「オーバースペック」というパターンもあります

PRという仕事において起きている「ミスマッチ」の中には、企業にとってPRパーソンがオーバースペックだったというパターンも結構あるんじゃないかなあと、遠巻きに見ていて思うことがあります。

スキルが高ければ高いほどいいわけでもなくて、ちょうどいい具合というのがあるなーと。社内の体制が全然ないのに強いPRパーソンをつけてしまうと、情報提供が追いつかなくて、逆に疲弊してしまうことも。企画や施策はどんどん上げてもらえているのに実行体制がないと、悲しくなってしまったりもします。

あとはまだただ事業が赤字だったりすると、どうしても短期的な売上を追ってしまいがちになるので、PRにマーケティング機能を過剰に求めてしまうなどして、経営者がよほど強い信念をもってPRにコミットしていない限りいずれ挫折してしまう、ということもありますね。

PRパーソンのミスマッチ、減らしていきましょう

PRはうまく使えば、どんなに小さな企業やスタートアップでも一気に世に知ってもらうことができる、素晴らしい手法です。

せっかくPRに期待をして頼んだのに、相性が合わなくてPR活動自体へのハードルが上がってしまうのは、とても残念なこと。PRパーソンにとっても、せっかくスキルがあるのに場所を間違えて過小評価されてしまうのは、不本意だと思います。

PRパーソンと企業の関係においては、「相性」がかなりあると考えています。この相性診断みたいなものがサクッとできるツールとかがあれば手っ取り早いのですが、今のところなさそうなので、私が人力でやることも可能です。

これまで数多くの企業のPRのお悩みに触れてきて、どんな課題があってどんなPRが合うかの見極めは、よくできるほうだと思っています。「どうやってPRパーソン探せばいいかわからないよ~」という人は、どうぞお気軽にDMなどからご相談ください。

なおこの記事は、SCALE Powered by PR のセミナーに参加して着想したところから書きました。PR人材に特化したマッチングに力を入れている団体です。

ミスマッチが減りますように。最後まで読んでいただきありがとうございました!


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