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医療事務に必要な「松竹梅」と「Bプラン」

人は選ばなければならないときに、どんな心理が働くか

みたいなことを、皆さん一度は考えたことあるのではないでしょうか。

仕事上で顧客に対して営業かけるとき、上司に対して業務改善を提案するときなど、「相手に選んでもらう」状況というのは本当に多く発生していると思います。また、その際に「自分の思った通りに進まない」なんてのは当たり前に起き、むしろ「思った通りに進み過ぎて怖い」という心にさえなります。

「相手に思った通りに選択してもらう」ための理論とか方法論は本当にいっぱいあって、その関連書籍も膨大にあります。「ペライチでまとめろ」とか「受け入れやすい要求をして『YES』を言わせた後に、難しめの要求をしろ」とか。

ビジネスにおける心理学の理論的なところや、詳細については専門家みたいな人(Twitter界隈によくいる自称コンサルや自称プロ含む)にお任せするとして、「医療事務は、基礎スキルとして抑えておいたほうがよさそうだな」と思われる2つの方法を書いておきたいと思います。

ご存知の方も多いと思いますが、これを意識しておいたおかげで助けられた事例が発生したので、あえて記事にしてみました。

プランを作るときは「松竹梅」で構成する

何かプランを考えついたときって、

これや!これが「さいきょう」や!(ピカーン)

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ってなると思います。自分の得意分野での発想であったり、データから見て明らかな傾向が出たときなどは、「これ以外ないよね!」ぐらいの気分になると思います。少なくとも私はそうなります。

提案資料を作るときも、そのプランを中心に書いていきます。提案するときには「これでお願いします!」という気分になっちゃう。

で、いざ反応を聞いてみると、お客様や上司から思いもよらぬ方向から否定されたり、ボコボコに叩かれたりして、心がベキバキに折れてしまうことってよくあると思います。

これは情報の非対称性による拒否反応が受け手に発生しているんですね。
人は「なんだかよくわかんない」ものを熱烈に押し付けられてしまうと、「わずかなリスク」がないかを精査し、それが「多大なもの」であるように感じてしまうのであろうと、思われます。

保険もそうですよね。よくわからないけど、生保のおばちゃんがごり押ししてくる商品って「でも、これってあやしくない?損してない?」って気分になるとおもうのです。かといって、多すぎると選べないんですが。

なので、

選びやすいように3つのプランを作って出しましょう。
相手に比較検討させる猶予を与え、そのうえで決定させましょう

というのが「松竹梅」作戦です。

自分の本命のプランを真ん中ぐらいのプランにして、それより上等(だけど、すごく大変)なもの、安上がり(だけど、質が劣る)なものを作るというやり方です。
3つというのは「選びやすい(優劣判断しやすい)」分量とされ、また、「比較検討して選んだ」というプロセスに、決定者は満足しやすいという心理を使ったテクニックだそうです。

私の事例で行くと、「病床再編の提案」で使いました。

コロナ禍の影響で病床再編が急展開を見せているのですが、この「病床」というやつは大変センシティブで、ステークホルダーも多いため揉めて立ち消えになりやすいのです。

いかに緊急事態だからと言って油断して「はーい、これでお願いしまーす」としては、どこかで拒否されて動かなくなってしまう。千載一遇の機会を逃すわけにはいかんぞ、ということで3プラン作りました。
ただ、「真ん中を本命」とするのではなく、「本命を梅(一番劣っているプラン)」としました。


めちゃくちゃ理想形だけど、動かしまくる夢プラン(超無理目)

松には劣るが、通常時に提案したら殴られそうなプラン(無理目)

データ的には適切な再編だけど、通常時だと確実に揉めるプラン

結果、竹プランに決着しました。ありえないぐらいのプランが通り、いま実運用に向けて検討が進んでいます。(とはいえ、また蒸し返されるかもしれないけど)

3つ出すということは、それぞれに「ダメなところ」と「いいところ」が見つかると思うのです。何事の施策も「いいとこどり」を完全にすることはできないと思っていて、「このせいでダメになる部分」ってのも発生するんですよ。それを出したうえで、議論ができるのは「決定率」がかなり上がります。
「悪いところがあるはずだ、だからやめとこう」という思考になる前に、「悪いところと良いところを比べよう」思考にしておけば、その3案から選びやすいということですね。
で、日本人的に「良さも悪さも真ん中」になると。賢ければ賢いほど真ん中によりますよね、期待値ってやつです。

これを逆手に取ると、本命を梅にしておけば「どれ選んでもウチの得になる」という手法にも使えるんだなーって思ったのが、今回得た知見です。

ちなみに、ソ〇ー損保も同じ手口(?)を使ってきていることを実感しました。先日、自動車保険の更新でインターネットで申請していると、

・現状通り
・ちょっと高い
・もっと高い

の3案をハナから提示してきました、自動で。やるなー。
この手口を知っておきながら、今まで通りのやつがちょっと不安に見えてくるぐらい、「松竹梅」というのは有効なんだなーと感じた次第です。(現状通りのままにしましたが)

「あなただけに特別なご提案」Bプラン

Bプラン

私はかなり小心者でして、強気に折衝したり、こっちの言い分をフルで伝えるのが苦手です。コンビニとかで横柄な態度はとれないし、クレームなんてもってのほか。なんなら店員さんの肩の一つでも揉んで、気分良くレジ打ちしてほしいとさえ思います。

そんな人間ですので、「交渉する」場にいくだけでも一日、いや一週間はうんざりした気分になるんです。やめよかなーぐらいに思います。
見た目はリッパにおっさんなのに、びくびくしてます。

だから、交渉の際には「Bプラン」を作るようにしました。
『もしダメだったら、どこまで譲歩していいか』
というやつです。これがあるだけで、めちゃくちゃ心救われます。

大抵の人は「これをやってくれ」と言われると、拒否します。
いや、そうじゃないのが普通なのかもしれませんが、以下の記事でも書いた課長代行職でのメンバーはそうじゃなかったのです。

ここで、「調整する幅」の下限ラインとしてBプランを作っておきます。
交渉の場で「何が嫌なのか」を突き止めて、カバーする案をその場で出したりするのです。とはいえ、なんでも受け入れちゃうと計画が瓦解するので「ここまでは譲れる」というところがBプランとなります。

実際に活用したのは、人事異動です。
異動というのは、玉突きで動くことが多いので、何としても「YES」を引っ張り出さないといけない。一方で、業務に固執している部分があるので受け手としては相応のストレスが掛かります。

感情的に怒り出す人、泣き出す人、様々です。それだけ仕事に掛けてくれているのはうれしいのですが、YESと言ってもらわないとちょっと大変なことになってしまうというプレッシャーが私にも掛かります。

そこで、Bプランを使いつつ、相手に合わせて「あなただけに特別なご提案」をさせていただきました。
言い方も考えます。

貴方がそこまで想ってくれているのはうれしい。
だから、こういう形で働けるように再度計画を練ったほうがいいかな?
先生にはこう説明していたけど、私からもう一度調整してみるよ

とかです。
実際に計画を練ったり、調整をするのですが、もうそこは事前に「変更するかも知れない」として手を打っておいたエリアです。安心して譲歩します。

また、スケジュールについても、Bプランを作ります。
スケジュールについては、攻撃的なBプランと、守備的なBプランの2種類を使い分けます。

①攻撃的なBプラン

デッドラインより前倒しでスケジュールを組みます。
人間というのはどうしても「期日ギリギリになってやる」傾向があると思います。特に、自分一人で完結できるレポートとかは事前に提出する人のほうが少ないと思います。夏休みの宿題と同じですね。

今年度KPIにいれた支援計画書の報告期日はデッドの1週間前にしました。新しくてめんどくさくて、意味や重要性の浸透が十分でない報告は特にBプランを採用します。デッド超えてくる人がでると、色々致命的なので。(それでも超える人は超えますが)

②守備的なBプラン

全ての実行項目が頓挫、あるいは裏目にでた場合を想定して組むスケジュールになります。

これも人事異動の時に使いました。
「もしこの人が異動を受け入れることができず、退職する場合はどうなるのか」を考えて、スケジュールを組みました。

繰り返しになりますが、人事異動は玉突きです。この人を出すから、あの人が入ってくるみたいなことが起こっています。
この「出ていく人」がやめると言い出した場合、退職までの引継ぎ期間で当てる人材はいるのかどうかを検討します。入ってくる人以外は引継ぎが出来る余裕がないのであれば、その人が引継ぎに来るギリギリまで言わないほうがいいよね、となります。

最悪の、最悪を想定して、それでも先手が取れる位置にい続けるためのBプランです。
このあたりは、性格が悪い人のほうが向いてますよね。私は向いてました。
『「どうすれば組織が一番困るか」を考えて行動する人』の気持ちになりきれるんです。よくない性格です。

利用できる前提条件

ということで、めちゃくちゃ基本的なテクニックである「松竹梅」と「Bプラン」の使い方を紹介させてもらいました。しかし、この2つを「常に振り回しておけばOK」みたいなことはないと思います。

将棋と同じで、「ゴキゲン中飛車やっときゃ勝てるっしょ!」みたいなことはないし、「穴熊組んでおけば必勝!」ってわけでもないんです。ツヨカワ女流棋士「香川愛生(まなお)」女流三段のYoutubeを見てもらえばわかります。

あくまで「戦術」ですので、「それが使える条件」に落とし込む必要があります。

「松竹梅」であれば、提案の方向性に対して「実施しようとする意識が決裁権者に芽生えている」というのが大事です。問題意識の共有ですね。
まったく病床再編をしようと思ってないのに、3プランだされても「どれもしたくない」と言われてしまいます。
「なぜ病床再編をしなければならないか」という部分の提案には松竹梅ではない、別のやり方が必要だと思います。データだったり、文脈だったり、関係性だったり、それぞれ使う必要性があります。

「Bプラン」は、「交渉目的が明確である場合」でないとなかなか使えないかもしれません。また、時にはAプランでごり押すしかないこともあると思いますし、Aプランがなんだかんだで『本筋』であるのであんまりBプランを多用しすぎると「あいつはすぐ譲歩するな」って思われるかもしれません。
ちなみに私は思われていると思います。Aを説明せず、Bから交渉したりもするので。ここは直さないといけません。

医事の総合職は提案と調整が仕事よね、たぶん

課金請求とかレセとかの業務においては、ある程度の「正解」があると思われます。悩む事例はあれど、最適な解というのもどうやらあるのではないでしょうか。

総合職の場合は、解があるのかどうかわからない業務に従事することが多いと思います。
経営、人事を中心に「やったほうがいいような気もするけれど、やるリスクも相応にありそう」という、「実行すべきか否か」という問題も多いと思います。
そこから、いろんな折衝を重ねて調整して、提案に結び付ける。あるいはその逆(提案⇒調整)をぐるぐるやる。それが今の業務の中心にあるなぁと感じています。

全然成果が出せてないので、偉そうなことを言えませんが、今回紹介した2つは最近使えて役に立ったなぁと思ったので、ぜひどこかで参照いただければ幸いです。

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