【読んでみました中国本】遠ざかっていく香港の味わいを思い起こさせてくれる「香港うんちくグルメ」:蔡瀾『人生の味わい方、打ち明けよう』

蔡瀾・著/新井一二三・訳『人生の味わい方、打ち明けよう』(角川書店)

「また香港です。お目にかかるチャンスがあれば嬉しいです」

と書いて「送信」を押したら、すぐにスマホが震えた。

「メッセージは送信されましたが、相手が受け取りを拒絶しています」

あら。

手元に残っている最後のやりとりは昨年のもの。香港返還20周年取材の企画で、返還当年よりもずっとずっと昔の香港の話題から始めたいと思い、お話を伺わせていただけないでしょうか、と連絡したときのものだった。

「政治は嫌いです」

ほぼ間髪入れず、と返事が来た。「大変失礼しました」と返したものの、きっとこのときのやり取りで気を害したのだろう。そうだった、蔡瀾さんは政治が嫌いだったんだった。といっても、わたしも政治の話を尋ねるつもりはなかったんだけど。

●蔡さんのこと

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