SNSで簡単に「証拠」にされてしまう、有名人のインタビュー記事について

メディアに関わり、自分でもインタビュー記事を発表してきた人間として申し上げますが、メディアに発表されたインタビュー記事は「参考」や「資料」にはできても、「証拠」とはいえません。

というのも、それは第3者の聞き取り+書き取り+編集が行われているから。そして、本人への内容確認は「まともなメディア」であればしないことになっています。ただ、PRを兼ねたタイアップ記事的な要素をもつ場合(芸能関連多し)は本人あるいは所属事務所のチェックを受けることが多いですね。ジャーナリズムの世界では、後者はPR記事とみなされます。もちろん、それは本人側が言いたいことの「声明」に近く、「事実を伝える報道記事」ではないことは明らかです。

特にメディアがその専門とするジャンルと違う「有名人」をインタビューした場合、自分たちの読者に合わせて記事を「わかりやすく」したり、あるいは「興味深く」したりと編集が行われます。

最悪はインタビューに遣わされるライターがインタビューイー(インタビューされる側)の活躍する世界をあんまり知らないというパターンもあります。そうなると、インタビューイーが日常よく使っている言葉の意味すらライター(インタビューアー)が聞き取れず、誤解することもあります。あるいはインタビューイーが質問に対して関心を寄せて答えてくれなかったところが、実はそのメディア読者向けへのセールスポイントにされることもあります。

また、本人が丁寧に長く説明したところを、「読んでいてかったるい」「うちの読者にはどうでもいい」と思ったら編集側の判断でカットしたり、縮めたり、あるいはそこで使われた言葉を書き換えてはしょる、という手段も取られます。

つまり、読者として皆さんが読んでいるのは、あくまでも○○さんにインタビューした結果、編集部がまとめた記事で、文責はインタビューイーではなく編集部にあります。

だから、それがそのインタビューイーの発言の「証拠」にはなりえないのです。とくに一つの言葉尻をとってその言葉そのもの自体を「証拠」とみなすのはほぼ論外です。

一般公開された情報を拾ってるだけなのに刑事になったような気分になるのはやめたがいいです。

これは付け足しですが、私の知り合いで英語も中国語も朝鮮語もできないのに、「わたしはある意味朝鮮問題のエキスパートだから」と言っている人がいました。その情報源は日本で流れているテレビワイドショーとか本とか。それじゃエキスパートじゃなくて、ただのオタク、あるいは野次馬です。
その程度で「エキスパート」になれちゃう日本の今の言論界隈って、本当に危険だと思います。

#私的NC

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