「雨傘運動は過激に」は毎日新聞の誤報でした。

わたしが「毎日新聞社取締役 小川一さんへ」で指摘した、小川さんの「雨傘運動は過激になって失速した」という発言は、毎日新聞外信部の誤報記事を発端とした発言であることがわかりました。こちらではその担当デスクとのやりとりをまとめました。

(このポストは、「毎日新聞社取締役 小川一さんへ」の続きです。やり取りの詳細はそちらに書きましたので、まだの方は先にそちらをご覧ください。)

●「雨傘運動が過激になって…」は毎日新聞の誤報だった

毎日新聞社取締役の小川一さんがニューズピックスに「雨傘運動は過激になって失速した」と書いたまま、だんまりを続けているうちに、わたしのポストはどんどん読まれ始め、すでにこの3年半書き溜めてきたポストのうち、アクセス数2位になりました。わたしにはTwitterやFacebook上でのシェアくらいしか実感はないのですが、そろそろ小川さん周囲の方やマスメディア界隈の方にも読まれ始めたらしく、小川さんの部下にあたる毎日新聞社の外信部デスク、米村耕一記者からこんなリプが入りました。

米村記者は、北京駐在経験があり、ちょうどわたしの北京滞在時期とも重なっていたことから、わたしが北京で親しくお付き合いした記者さんのうちのお一人でした。北京語、韓国語、英語を操る記者さんで、何度も中国事情について意見交換をしたことがある方でした。

以降、米村デスクの連投と、わたしのリプライを張っておきます。

…と言っているうちに見つけました。この記事です。

有料記事であるため課金していない方は中身が確認できないはずなので、関係の部分だけ以下キャプチャ:

つまり、これは毎日新聞の誤報ですね。しかし、わたしの「訂正と謝罪を」という先のツイートに対して、米村デスクの回答はこうでした。

新聞というメディアは「一人が勝手で決めたこと」、それも定説をまったく覆した内容を、課金した人が一方的に読まされるものなのでしょうか?

●誤報の指摘に対する毎日新聞担当デスクの言い分

(なお、この間、わたしがちょろまかと米村氏のツイートにリプライしていますが、重複している点も多いので、ここに貼るのは止めておきます。ただ、それらは削除せずそのまま残してありますので、内容を確認なさりたい方は、ここに挙げる米村氏のツイートをクリックしてスレッド形式で読むか、直接わたしのTwitterでご覧ください。)

●「なぜ定説を翻すに至ったのか?」への根拠提示はないまま

(ここでの「意義はない」は「異議はない」のタイポです。御理解いただけるとうれしいです。)

●「アカデミニズムなら」…の妙論出現

以上が7月15日未明までのやり取りです(わたしのツイートの一部で、リプライのやり取りで前後した部分を読みやすいように並べ直してあります)。「アカデミズム(学術)の世界では定説から外れた議論について訂正して謝罪しろとは言いません」といいながら、アカデミズムの世界で求められる根拠は最初っから提示なしのまま、逆に「訂正や謝罪」にこだわるだけで議論は終わっています。

米村氏はなんども「これ以上コメントしない」といいながら、返事をくださっているのは、面識がある仲ということもあってのことだと理解しています。この点に対しては感謝します(これまで、さんざんこの「Lost in Translation」ではメディアの誤報を指摘してきましたが、どこも知らん顔したままです)が、アカデミズムを持ち出すなら、もっとアカデミズムに必要とされる基礎条件から考えていただきたかったです。

これではただメンツにこだわって拒絶しているだけという印象が強くなるばかりです。小川さんも米村さんも、社や社内の後輩記者を守りたいだけでだんまりを続け、結局それを読んで知識をふくらませる読者のことはまったく意識にないのが大変残念です。

●付録:日本新聞労働組合連合会「新聞人の良心宣言」

新聞人の良心宣言
はじめに

 ジャーナリズムがかつてない危機に直面している。マルチメディア時代をにらんで大資本によるメディア関連産業への参入が進む中で、古い歴史を持ち、権力の監視や自由で公正な社会の実現に向けてもっとも大きな役割を果たしてきた新聞の現状を、新聞に携わる私たち新聞人は憂うべき状況と認識している。紙面の内容、記者のモラルなどがたびたび批判され、市民の信頼を損ない、読者離れを引き起こしているからだ。権力監視を怠り、戦争という悲劇を招いたかつての苦い経験を踏まえ、改善の努力はしてきたものの、それは十分ではなかった。私たちは、市民の信頼や支持を失った新聞が権力や大資本の介入を招きやすいことを知っており、それを何よりも懸念している。新聞が本来の役割を果たし、再び市民の信頼を回復するためには、新聞が常に市民の側に立ち、間違ったことは間違ったと反省し、自浄できる能力を具えなくてはならない。このため、私たちは、自らの行動指針となる倫理綱領を作成した。他を監視し批判することが職業の新聞人の倫理は、社会の最高水準でなければならない。私たちはこの倫理綱領を「新聞人の良心」としてここに宣言し、これを守るためにあらゆる努力をすることを誓う。

基本姿勢
 新聞人は良心にもとづき、真実を報道する。
 憲法で保障された言論・報道の自由は市民の知る権利に応えるためにあり、その目的は平和と民主主義の確立、公正な社会の実現、人権の擁護、地球環境の保全など人類共通の課題の達成に寄与することにある。
 (1)市民生活に必要な情報は積極的に提供する。
 (2)社会的弱者・少数者の意見を尊重し、市民に対して常に開かれた姿勢を堅持する。
 (3)十分な裏付けのない情報を真実であるかのように報道しない。
 (4)言論・報道の自由を守るためにあらゆる努力をするとともに、多様な価値観を尊重し、記事の相互批判も行う。

I[権力・圧力からの独立]
 新聞人は政府や自治体などの公的機関、大資本などの権力を監視し、またその圧力から独立し、いかなる干渉も拒否する。権力との癒着と疑われるような行為はしない。
 (1)公的機関や大資本からの利益供与や接待を受けない。
 (2)公的機関の審議会、調査会などの諮問機関に参加しない。
 (3)情報源の秘匿を約束した場合はその義務を負う。
 (4)取材活動によって収集した情報を権力のために提供しない。
 (5)政治家など公人の「オフレコ発言」は、市民の知る権利が損なわれると判断される場合は認めない。
 (6)自らの良心に反する取材・報道の指示を受けた場合、拒否する権利がある。

II[市民への責任]
 新聞人は市民に対して誠実であるべきだ。記事の最終責任はこれを掲載・配信した社にあるが、記者にも重い道義的責任がある。
 (1)記事は原則として署名記事にする。
 (2)公共の利益に反し、特定の団体や党派のために世論を誘導する報道はしない。
 (3)情報源は取材先との秘匿の約束がない限り、記事の中で明示する。
 (4)記事への批判や反論には常に謙虚に耳を傾け、根拠のある反論は紙面に掲載する。
 (5)誤解は迅速に訂正し、掲載時の記事に対応した扱いにする。
 (6)誤解により重大な人権侵害が起きた場合は、紙面で被害者に謝罪し、誤報に至った検証記事を掲載、防止策を明らかにする。

III[批判精神]
 新聞人は健全で旺盛な批判精神を持ち続ける。
 (1)批判はあらゆる事象に向け、皇室も例外とはしない。
 (2)批判の目的は市民の利益を守ることにあり、市民の利益を損なうような誹謗と中傷には陥らない。

IV[公正な取材]
 新聞人は公正な取材を行う。
 (1)詐欺的方法で取材をしない。
 (2)他人の著作物や記事を盗用したり、趣旨を変えて引用しない。

V[公私のけじめ]
 新聞人は会社や個人の利益を真実の報道に優先させない。
 (1)会社に不利益なことでも、市民に知らせるべき真実は報道する。
 (2)仕事を通じて入手した情報を利用して利益を得ない。
 (3)取材先から金品などの利益供与は受けない。

VI[犯罪報道]
 新聞人は被害者・被疑者の人権に配慮し、捜査当局の情報に過度に依拠しない。
 何をどのように報道するか、被害者・被疑者を顕名とするか匿名とするかについては常に良識と責任を持って判断し、報道による人権侵害を引き起こさないよう努める。
 (1)横並び意識を排し、センセーショナリズムに陥らない報道をする。
 (2)被疑者に関する報道は「推定無罪の原則」を踏まえ、慎重を期す。被疑者側の声にも耳を傾ける。
 (3)被害者・被疑者の家族や周辺の人物には節度を持って取材する。
 (4)被害者の顔写真、被疑者の連行写真・顔写真は原則として掲載しない。

VII[プライバシー・表現]
 新聞人は取材される側の権利・プライバシーを尊重し、公人の場合は市民の知る権利を優先させる。
 (1)人格、暴力、性的事象に関しては、適切な表現に努める。
 (2)報道テーマに直接関係のない属性の記述によって、差別や偏見を招いたり侮辱を与
えたりしな
いよう配慮する。
 (3)私人の肖像権を尊重し、原則として当人の同意なしに写真を撮影、掲載しない。
 (4)事件・事故、自殺などについては、個人のプライバシーを尊重し、遺族や関係者への配慮を欠かさず、慎重に取材・報道する。

VIII[情報公開]
 新聞人は、市民の知る権利に応えるため、公的機関の情報公開に向けてあらゆる努力をする。

Ⅸ[記者クラブ]
 新聞人は閉鎖的な記者クラブの改革を進める。
 (1)記者クラブには原則としてあらゆるメディア・ジャーナリストが加盟できる。
 (2)記者クラブに提供された情報は、取材者だれもが利用できる。
   クラブ員は記者室への市民の出入りの自由を守る。
 (3)記者クラブは、取材・報道に関して談合をしない。人命にかかわる場合などを除き、報道協定を結ばない。
 (4)権力側のいわゆる情報の「しばり」は、市民の知る権利に照らし合わせて、合理的で妥当なもの以外は受け入れない。
 (5)報道機関の目的、役割を逸脱するサービスを受けない。

X[報道と営業の分離]
 新聞人は営業活動上の利害が報道の制約にならないよう、報道と営業を明確に分離する。
 (1)記者は営業活動を強いられることなく、取材・報道に専念する。
 (2)記事と広告は読者に分かるように明確に区別する。

http://www.ritsumei.ac.jp/~syt01970/newpage27.html より)

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