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【ぶんぶくちゃいな】2022年中国春節、3つの家族の物語

中国ではオミクロン株の大流行、春節の到来に冬季オリンピック…と大きな出来事が続くなか、すでにこの秋に行われる予定の中国共産党第20次全国代表大会(「二十大」)に向けたムード作りが進められている。

中央電視台が先週放送した汚職取り締まりドキュメンタリーシリーズ「零容認」は5回に分けて逮捕済みの汚職高官に焦点を当て、当人の供述を散りばめつつ、それぞれの行為とそこに連なる人物らの「人間模様」と「罪状」を掘り起こす形で構成され、ドラマチックな番組に仕立て上げられていて注目された。

但し、その内容は正直なぜこの人物がそこに至り、また官職を駆け上ることができたのかという「深み」や「痛み」を分析することはしない。ほぼその高官らが逮捕され、党籍を剥奪されたときに党が発表した漫罵のような批判をなぞって、時にはそれらの言葉をそのまんまナレーションに使って再現するだけにとどまっていて、それをドキュメンタリータッチに仕上げた「政治批判番組」なのだ。例えば、公安部の孫力軍・元部長兼党委員に対する批判とはこんなものだった([]内は筆者注、段落後で解説)。

調査によって明らかになったのは、孫力軍はかつてこれまで理想と信念をきちんと確立しておらず、「二つの維持」[*1]に離反し、「四つの意識」[*2]をまったく持たず、政治野心を極端に膨らませ、政治的資質は極めて悪く、権力や政績に対する視点は非常に歪み、党中央委員会の全体政治方針を勝手に論じ、政治デマを作って撒き散らし、面従腹背、上も下も欺き、政治資本をかき集めていた。個人的な政治目標達成のために手段を選ばず、権力を操り、党内で違法な仲間を駆り集め、結託して個人勢力を培い、利益集団を形成して、重要な政府当局を集団で操ろうとし、党の一致団結に深刻な悪影響を与え、政治安全に重大な危害をもたらした。傲慢で自分勝手、特権を操り、新型コロナ感染対応の最中にその最前線を勝手に離れ、大量の機密情報を個人的に保管し、長期に渡って迷信活動を行った。公安の捜査手段を利用して組織の審査に対抗した。組織の原則に背き、組織の問いかけにも実情を説明せず、賄賂で官位の取引を行い、自分の部下を引き立て、人事を支配し、公安の法律政治システムにおける生態を深刻に破壊した。党中央の八項目規定[*3]の精神を無視、生活は腐敗堕落し、長期に渡り大量の高価な物品を受け取り、長期に渡り公正な公務執行に影響を与える可能性のある宴会や高額な消費娯楽活動を受け入れ、長期に渡り私企業経営者に自分のために高級住宅賃貸費用を払わせ、長期に渡りさまざまな贅沢なサービスに溺れた。最低限の道徳意識を持たず、権力や欲望、金銭のやり取りを派手に行った。極めて強欲で、ひと目をはばからず権力と金銭の取引を行い、巨額の金品を違法に受け取った。
[*1]「二つの維持」:「二つ」とは、「中国共産党の核心とする習近平の地位」「党による中央権力とその集中的統一指導」を指す。
[*2]「四つの意識」:「四つ」とは、「政治意識、大局意識、核心意識、一致意識」のこと。
[*3]党中央の八項目規定:八規定の内容は、「基層の調査研究」「会議活動の簡素化」「文書の精度向上」「外出活動の規範化」「警備活動の改善」「文書発表の厳格化」「政治資源の節約と簡便化」。

これを読むだけで頭の中にさまざまな「あくどい」シーンが浮かんでくるはずだ。そんなシーンが汚職取り締まりドキュメンタリーシリーズ「零容認」でこれでもかこれでもかと繰り返されるのである。もちろん、自分には直接関係のない娯楽番組として見る限りは、まるで日本の勧善懲悪時代劇みたいな気分で楽しめるのだろう。そして、中国のほとんどの庶民たちはそれを見て「スカッとする」のかもしれない。

だが、そんな政治キャンペーンよりも、足元をよく見れば、中国の民間にはさまざまな「悲劇」が転がっており、少なくともわたしの周囲ではテレビドラマの内容よりも、ネットを通じて伝えられるそんな名もない一庶民の生活に関心が向けられていた。

●中国人留学生はなぜ死ななければならなかったのか


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