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近況


アルバイトが終わり、時計の針は午前2時を指した。

終電はもうとっくに無くて、
会社が手配した送迎タクシーで帰路に着く。

『〇〇駅までお願いします』
『高速使って良いんで、一番速く着くやつでお願いします。』

すっかり言い慣れた台詞を並べた。

流れるように
ラジコを開き、フードを被りイヤホンを耳にした。


僕にとって深夜ラジオといえば、芸人のラジオよりも音楽になる。深夜は基本的に知らない曲しかやっていない。それが頭を空っぽにするのにも、睡眠用にも良かったりする。


「先日、大阪にて行われたツーマンに行ってきました。(感想が続く)」「そんな〇〇さんのリクエスト。(バンド名)で(曲名)。」

どこかで聞いたことのあるバンド名に反応した。

すぐに、Twitterを開いて検索。


『あぁ、思い出した。』『たしか、』



タクシーは強くアクセルを踏んだ。






「〇〇さんっていう女の子知ってる?」

「可愛いし、歌も上手いねんで」「次の出番のバンドのボーカルやで」

『いや、誰だよ。文化祭クオリティやろ?』

「一年の時、同じクラスやってんな」「結構(学年では)有名やで」

「とりあえず、可愛いからちゃんと見てて」



------(バンド名)です。------



「ほらほら、可愛いやろ?」

『んー、タイプじゃないな。まぁ可愛いけど。』




同じクラスになったことが無く、ほとんど何も覚えてないが、高校三年間で友人がしつこく言っていたのでバンド名だけは覚えていた。




Twitterには、告知ツイートと併せて、個人のインスタIDが貼られていた。

当時の記憶を頼りに、Gt&Voと記されたIDを押した。


ガールズバンドらしいアイコン
バンド活動とペットと思われる犬の投稿

『こんな顔だったけなー』

僕の曖昧な記憶はすぐに確かなものとなった。


高校時代の友人が8人もフォローしていたからだ。


女性は髪色が変わっていると本当に分からない。金色のメッシュ?茶色なのか?

ってかメッシュってなに?
僕にはこの髪型が何なのかさえ分からない。




足跡をつけるのが嫌で閲覧垢に切り替えた。


今月末に、
東京で初ワンマンを控えているらしい。

250キャパが埋まるのかな。







すごく葛藤した末にフォローすることにした。


羨望でも、嫉妬でも、悔しさでも
無いはずだと言い聞かせて




メーターはゆうに一万円を超えていた。



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