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真反対の2人を繋いだ"音楽の力"と、楽曲に込めた想い 〜「音楽は笑った」リリース記念 鈴木何某✕今井まい特別対談〜

2023年1月4日(水)に、「鈴木何某×今井まい - 音楽は笑った」が、SpotifyやApple Music、AWAといった各種ストリーミングサービスよりリリースされた。また、鈴木何某のYouTubeチャンネルにて、ミュージックビデオも公開されている。明るい楽曲の中に香るノスタルジックで切ないイメージを表現した映像となっている。こちらも是非ご覧頂きたい。


今回は鈴木何某と今井まいの対談インタビュー形式で楽曲についてひも解いていく。

―まずは自己紹介をお願いします。

今井まい(以下今井) シンガーソングライターの今井まいです。「ふたりだけに季節を」というユニットのボーカルもしています。ユニットの方はバンド曲、個人の活動では主に歌謡曲寄りのJ-POPを作っています。

Twitterに生息しており、活動拠点も顔も非公開で、オリジナル曲やカバーを投稿したり、他のアーティストさんの楽曲にボーカルで参加したり、他のアーティストさんやリスナーさんと戯れ合ったりしています。

好きなCHELSEAはヨーグルトスカッチ、髪型はボブです。

鈴木何某(以下鈴木) 鈴木何某です。「なにがし」です。アレクサで僕を呼び出す場合「すずきなにぼう」と言わないと出てこないそうなので、アレクサに認知されることが第1目標のシンガーソングライターです。

冗談はさておき、元々バンドマンでしたが今はソロで活動していて、自分と向き合いながら自画像のような楽曲を制作しています。ちなみに本当の目標は、武道館でライブすることです。

普段は会社員として働いていて、勤め先の知り合いの方は僕が音楽をやっていることを皆さん知ってくれていると思います。今井さんと同じくtwitterメインでオリジナル楽曲の発信を行っていますが、顔も歳も公開しています。

そう考えてみると、twitterで活動していること以外、性別から何から全部真逆ですよね。改めて面白い組み合わせだなと思います。


―楽曲が生まれたキッカケを教えて下さい。

今井 何某さんと初めてやりとりしたのは何某さんの楽曲『MONSTER』がきっかけです。それ以前にもお名前とアイコンは見たことがあったんですが、MONSTERを聴いて「スパ〜ァァァァァァァアアイルァールで」に撃ち抜かれ、空リプで初会話をゲットしました。

今井と鈴木が初めて会話したツイート

鈴木 懐かしいやり取り、もう1年近く前ですもんね。MONSTERの「自分が何がしたいか」という歌詞の中に僕の名前「何某」が隠れていること、きっとこの先誰も気づかないんだろうなと思っていたので、拾って頂けたことはかなり嬉しかったの覚えています。それでつい、フレンドリーなリプライをしてしまいました。

今井 この会話の中で何某さんからコラボのお誘いを受け、当時は社交辞令だろうな〜と思いつつも提案いただいたカバー曲のセンスに共感し、いつかできたらいいな〜......と静かに自分の生活に戻りました。

そのあと何某さんからDMが来たのは1時間後(早い...)。そこでオリジナルのコラボデュエットを提案されました。...え、カバーじゃなくて?今日出会ったばかりなのに?えっしかもめっちゃ忙しそうじゃん恐縮すぎる(涙)(涙)(涙)という気持ちでしたが答えは迷わずYES。すぐに話を前に進めました。

鈴木 当時の僕はどこか「忙しいけど仕事こなす奴かっこいい」と思っていた節がありまして、今井さんにもその雰囲気を醸し出してしまいましたが、別に全然忙しくなかったと思います、すみません(笑)

僕も以前から今井さんのこと知っていたんですが、「ふたりだけに季節を」さんの楽曲を聴いて、伴奏やMIXが凄く良くて聴きやすい上に、耳に残るキュートな歌声が耳から離れなくなって、アンテナが反応したといいますか、オリジナルを二人でやったら絶対に良い作品が出来る!という根拠のない自信が溢れでたんです。

冷静になるまで待つと、お互いが遠慮気味になってしまうのもコラボではよくあることだったりするので、そのアンテナに引っかかった嬉しい思いを最優先に、すぐにお声がけをさせて頂きました。

今井 その後はお互いのできることや活動スタイルを確認し合ったり、コラボの方向性を決めていったりと色々な会話をしたんですが、割と序盤で、超真面目人間だと思っていた何某さんのフランクさやお茶目さに安心できたのが、このコラボをうまく進められた理由の一つなんだろうなと今では思います。


―「音楽は笑った」の歌詞に込めた思いとは?

※歌詞はMVを掲載しているYouTubeの概要欄参照

今井 歌詞の意味などを語ることは普段しないので少し恥ずかしいんですが(笑)、せっかくのコラボなので二人の意図を全部晒します。

まず大枠ですが、最初にお互いの活動についてお話しした時に、二人とも「音楽をこの先もずっと楽しんでいたい」という方向性が一致していたので、そこに重心を置こうと思いました。

鈴木 先ほど言ったように真逆とも言える二人なので、共通点を見つけ出す為にいくつかパーソナルな質問もさせて頂きました。こんなこと聞いちゃって大丈夫かな?と思いながら少しヒヤヒヤしていたんですが、今井さんはちゃんと答えてくれた。そこで、音楽をつくることに対して真摯な方なんだなって理解して、俄然やる気が出ましたね。

今井 目に見える歌詞については、「このご時世、様々な場面で大変な思いをすることもあるけど、どんな時でも世界中で音楽は鳴り続け、人々にそっと寄り添い、また人々も音楽を求め、この先もずっと奏で続けるだろう」という、音楽の力をテーマにしました。

そしてこの曲自体も、聴いてくださる方の苦労や悩みに寄り添いながら、聴いているとなんだか元気が出てきたと感じられるような曲になるように思いを込めました。

とは言っても応援歌というわけではなく、クリエイター目線の気持ちもたくさん入れさせてもらっています。特に2番は、1番とも繋がってはいるものの、9割くらいは自分達のことです。

具体的には、衝動のままに好き勝手作った曲でも受け入れてくれる私達のリスナーさんに対する思いや、スランプに悩んだとしてもリスナーさんや音楽に支えられているということについて、そんなところです。

特に自分のリスナーさんへの気持ちを自分の曲に表現することはしてこなかったので、何某パワーにあやかって、この場をお借りさせてもらいました(笑)

作詞作曲してる時の音声メモ(iPhone)
デモ(超ラフ)を作った時のDAW画面(Cubase) - 今井

鈴木 楽曲と歌詞の初稿があがって来た時どこまで変更を加えるか凄く悩んだんですが、歌詞の内容からフォロワーの皆さんに感謝を伝えたいという意志が垣間見えたので、「新しい今井まい」を示してまず注目してもらいたいなと思いました。

その為にお互いやったことのないようなモダンな楽曲を参考にしながら、結構大胆に編曲させてもらって。ギターは弾むようなリフを入れて、ベースはスラップでグルーブ感を出して、がちゃがちゃ楽しい感じを意識しました。それに伴って変わるメロディと歌詞を、大事な部分を損なわないように二人で詰めていったんです。

↑完成した楽曲のDAW画面(Studio one) - 鈴木

今井 その大胆な編曲で、二人が目指す音楽にかなり近づいていて驚きました。あと少しそれますが、普段曲作りは、自分が歌って気持ちいい歌詞とメロディーを目指してやっているので、特に作詞はそこまで深い意味は持たせていないと今までは思っていました。ただ今回完成させていくにあたって、お互い1行ずつ歌詞の意図を書き込んでいくことになったんです。

そしたらまぁ出てくる出てくる(笑)自分でもビックリしました。案外私ってちゃんと曲書いてんだなって。そういうのも今回のコラボの戦利品です。

歌詞が生まれてから完成に至るまで詰めていくやり取り

鈴木 この楽曲は「○○として」というフレーズが沢山出てくるんですが、語感だけで選ぶとせっかく込めた思いが薄れてしまうし、かと言って別のフレーズにするとメロディやノリが死んでしまうので、決めるのに相当苦労しましたね。


―ミュージックビデオはどのように生まれたんでしょうか?

MVに出演した行木さん(左)と、Bluetoothスピーカーで音源鳴らす係りの鈴木何某(右)

今井 何某さんの活動スタイルを見ると、顔出しを拒否するのは不便をかけそうだぁとかなり思いました。なので早めに言っておこうと思ってDMが始まって2ターン目くらいでねじ込みました(笑)

鈴木 ねじ込まれましたね(笑)でも、そこで顔出ししてもらうまで粘るってのも「この二人でしか出来ないことは何か」って考えた時に、違うなと思いました。

ただ、僕一人だけ出演するのもおかしいし、歌詞だけのリリックビデオって雰囲気の曲でもないし…。みたいな感じで具体案が浮かばなかったんです。なので、いつも僕の活動に協力してもらってる映画の宣伝プロデューサーの近藤くんにお願いして、監督を頼みました。ただ、彼も映像制作はしたことなかったので、かなり不安そうでしたが(笑)

二人で秋葉原のルノアールでどうしようか悶々と話す中で元気なイメージの中にどこか切ない部分を感じる楽曲なので、普段は明るく都会的な女性が日常に疲れて、海のある街で楽曲を聴きながら歌い上げるというようなイメージが出てきました。

歌詞では「日々の生活で寄り添ってくれる音楽は、幸せを感じさせてくれること」を歌っているので、身近なところから「音のある風景」を切り取るという方向性もその時決まりました。

その後、MONSTERの時にお世話になったヘアメイクアーティストの石渡チカさんに衣装のご提案をご依頼しつつ、女性のモデル候補を数名ご紹介頂きました。その中から選ばせて頂いたのが行木千賀さんです。

今井 行木さんはとても綺麗な方で見惚れました。私のリスナーさんには実写版今井だと伝えようと思います。

鈴木 未だに勘違いされてる方いらっしゃいますもんね、MVのアウトロでクレジット出てるのに(笑)違います、別人です。

行木さんは千葉県御宿町の地域おこし協力隊として活躍されているとも伺ったので、ロケ地は御宿にして、なんなら案内してもらいながら撮影しようということになって。

台本一切なしで、ひたすら撮りまくるといういわゆる「ナリ」での撮影だったので少し不安もあったのですが、行木さんとお話したり、御宿の美しい景色をみてすぐにその不安も吹き飛んで、終始楽しく撮影ができました。

御宿町の美しい海は、サーフィンを楽しむ人たちで賑わう
カメラをまわす近藤監督(左)
行木さんに紹介して頂いた名店「藤与し」で昼食。絶品の「なめろう定食」
御宿岩和田漁業協同組合様ご協力のもと、漁港近くで行われた撮影

鈴木 本当はこの楽曲を10月に出す予定だったのですが、諸事情で年明けにまでズレこんでしまったので、その分編集に時間を費やすことができました。

今までリリックビデオ的なものは作ったことがあったんですが、実写は初めてだったので、まず何から手をつけて良いかわからなかったです。でもそこは近藤くんと色々相談しながら詰めていって、正直相当良い出来になったなと思ってます。次同じクオリティのもの作れと言われても、多分無理だろうなと思うくらい(笑)

編集の終盤では楽しくなってしまって、ギリギリまでずっと修正してました。出来上がったのが2023年の元日なんですよね。MVのリリース1月4日なのに(笑)年越しの時も、動画の編集やってました。大変でしたが、楽曲が良いので最後まで悪あがきさせてもらった感じです。

年が明けたことも気が付かず、集中して映像編集作業する鈴木


―さいごに、聴いてほしいポイントを教えて下さい。

今井 一番はやっぱり二人の掛け合いです。後半に行くにつれて自然と踊り出しちゃうようなノリが出せてるんじゃないかなと。あと何某さんのギター。最初にデモを渡した時に、2番のAメロで意味不明なギターを弾いてくださいって無茶振りをしてしまったんですが、もう全体的に意味不明ですよね(笑)天才だと思いました。

鈴木 ははは(笑)意味不明なギターって、考えすぎると哲学的になってきちゃって、ある時「はっ、何考えてる時間だこれ」と思う時はありましたね。でもギターソロだけじゃなくて、Cメロ(棘のついた言葉が〜)も歌とトランペットは6/8拍子なのにドラムは8ビートでハネてて、ギターは右と左で交互になってて、その上「輪唱」っていうむちゃくちゃの意味不明なつくりになってますしね。

↓楽曲の伴奏(歌なし)


鈴木 「誰かが泣いて 誰か歌って そうずっと 音楽はやまない」という歌詞があります。音楽って必要最低限の生活に必要かと問われれば不要であるのはわかりきっているのですが、音楽自体に責任はなくて、いつだってどこかで誰かが奏でた曲は自分の味方をしてくれる(笑ってくれる)存在だってことを主張することで、僕らミュージシャン自身の存在を肯定するような曲にしたかったのもあります。

仮タイトルだった「音楽は笑った」が、そのまま本タイトルになったのも、これ以上この楽曲に適した名前がなかったからで。曲全体を通して、この気持ちが伝わったらなと思っています。

今井 それからもう1つ。今回のコラボでは普段二人ともがやらないジャンルに挑んだこともあって、言葉選びもメロディも歌い方も、全部が新しい鈴木何某と今井まいになっているんじゃないかなと思っています。

特に日頃からよく聴いてくださっているお互いのファンの方々には、そういう点も楽しんでいただけたら嬉しいです。

私は今回のコラボで、私達に寄り添ってくれる音楽をまた1つ生み出すことができたと思っています。この先の辛い時や楽しい時、それらの感情に寄り添う音楽として、時に『音楽は笑った』が選ばれることがあれば嬉しい限りです。


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