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掃除していると見つかるおこづかい:0048

とうとう最大金額を更新してしまった。
1万円札だ。

普段からためにため込んでいる棚を掃除していると、大体小銭が出てくるだろうと思う。
僕はそこに輪をかけてずぼらなので、結構な大金を手にする事が多かったが、さすがに1万円は初めてだった。

それは薬棚の、漢方薬の銀色のサラサラした包みの間から出てきた。丁寧に桜の柄のポチ袋に包まれていて、おやっと思って開けてみると、つるっとした顔の福沢諭吉さんがこちらを見返していた。

おそらく随分前にもらったものだろう。誰からもらったのかも、もう思い出せない。
一年くらい使われていないせいか、福沢さんはあんまり元気がなさそうだった。



こういう出会いは「やった!〇〇が欲しかったから、すぐに使おう!」なんてなるものでないらしい。
まだギョッとした心臓が落ち着いてないせいか、手放しで喜べないようだ。

思わぬところで芸能人に出会うのに近い。こういうところでフレンドリーに「いつも見てます!握手して下さい!」といける人になりたいのだけれども、僕はそうではないんだなぁ、と改めて思い知る。

まだ福沢さんと握手できる気持ちではないんだ。
でも、会えて嬉しいんだよ。心が追いつかないだけなんだ。


とりあえず福沢さんはポチ袋にしまって、棚に戻しといた。掃除の途中だったし、さすがに再会した一万円札は忘れないだろう。

たぶん。

#エッセイ #雑記 #ピンぼけ日記 #一万円札
#忘れもの #棚

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