読み込みを待ちながら

物心より先にPCの電源をつけたと噂の小学生こと私は、シルバニアファミリーで遊んでいないときは大体マウスで線を描いていた。

PCは父のお古、ソフトは若かりし頃のペイントである。
当時は物が描けなかったので、描くのは色とりどりの線か図形、もしくは文字だけだ。

しかし、手段がマウス、それも我が家のゆかいな背高父さん対応サイズなので、ある日とうとうデスクワーカーのような手の痛め方をした。
母は私に「しばらく描くのやめなさい」と言い、父は母にとばっちりで叱られた。


描くのは中断したが、習慣というのは恐ろしいもので暇だとPCをつけてしまう。
母には嫌な顔をされたが、父は無表情ながらも同士の誕生を喜び、インターネットの使い方を教えてくれた。

自分から検索することはほとんどなかったが、お気に入りのサイトをブックマークして巡回していた。そのお気に入りのほとんどは動画や簡単なゲームで、多数を占めていたのはいわゆるFlash動画だった。

ちなみに、現代ならすぐに表示できるようなものでも、当時はメチャ時間がかかることがあった。
現代人ならブチギレだが、当時の子供たちはダイヤルアップ接続を待つ間に宿題を終えるのがトレンドだった(ここ一文虚偽)。

凝った長編モノのFlash動画なんかだと読み込みはそれなりに遅い。
しかし「裏を返せば、読み込みが遅いほど大作であるというわけだな」という期待もあり、待つのは苦痛ではなかった。

ある日、森の中、読み込みが長い動画に出会った。
パーセンテージを表示するバーはなく、「チョットマッテネ」の文字の下にある数字が増分されていく。
100で終わるのか?と思ったら終わらなかった。数字の増加ペースは速いのだが、なにせどの数字まで言ったら終わりなのかわからない。

パソコンはそのままでいいと言われたので、とりあえず一旦おやつを食べた。

パソコンに戻ると、まだロードしている。
父が後ろから画面を覗き込んできた
「おとうさんこれ読み込まなーい」


「あ、それそういう動画だね」

「えっ?」
「チョットどころかいつまででもマてる動画だね」
「え......なんでそんなの作ったの......?」
「え......人をひっかけるのがおもしろいからじゃない?」※1
「だまされた......」
「だまされたねえ」

※1 私の父はネットが絡まなければ人間の心を持てるのですが......


しかし、そういうのにひっかかるような小学生に、たいした制限もフィルタもかけずにPC使わせるってなかなかの勇気だよなあ、両親。

途中でオチが読めた人は同世代のような気がします。以上。

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