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意味が分かると怖い話~超能力~

#意味が分かると怖い話 #怖い話 #宿泊学習 #短編小説 #オリジナル #思い出 #超能力
 ……僕は、超能力者だ。
 はたから見たら中二病患者の戯言にしか聞こえないだろう。残念なことに実際僕は中二病真っ最中だ。しかし、超能力者なのは紛れもない事実だ。
『え、僕がどんな能力を使えるかって? しかたないなぁ、特別に教えてあげよう』
 未来予知が出来たり、重力を操ったり、不死身だったり……重力と不死身の方は、三年前、小学五年生のころにできなくなったが。
                ※
 超能力に気づいたのは小学五年生の宿泊学習の時だ。俺達は山奥でキャンプをしている途中(今どきの宿泊学習にしては少し過激だが、学校側の意思でこのような形になっている)で、皆で焚火を囲むようにして座っていた。やはりキャンプの定番と言えば『焚火』……じゃなくて怖い話だろう。
 一人ずつ怖い話を語っていき、時折女子軍から悲鳴が上がる。俺は当時、口が裂けても物静かな性格とは言えなかったので、その様子を声を上げて笑っていた。実際の話の内容の一例として、いくつか挙げてみる。
「彼はいつも腹を空かせていた。家にあった食べ物も、学校の給食も。すべてを食べたがまだ足りない。『お腹が減ったよ……』といいながら彼は最後に、両親を喰らった。それ以降彼の口は赤く染まり、彼の腹の中で両親は今も生きて、養分をささげているとか……」
 個人的に最も印象深かったのが今の話だが、次の話は別の意味で強く印象に残っている。
「羽を持つ黄色と黒の大軍が、大地を歩き、火を囲んでいる幼きものを襲う。大地を歩く彼らの中から例外が現れ、特殊な力で、羽をもつ大軍を退治するだろう。特殊な者は二年後に死ぬ。それを追うように他の幼きものも死ぬ」
 彼女の話は謎かけのようなもので、その時は誰も理解できなかったので、とりあえず次の話につなぐ事にした。一人一人、百物語のように話をしていく。そしてとうとう、語り手の順番が俺になった時、俺はとある音を聞き取った。
「ブゥゥーン」
 虫が飛ぶような羽の音にしては嫌に大きかった『それ』は、間違いなく俺達の方に近づいて来ていた。ふと横を見ると、皆にもしっかりと聞こえていたようで、その音がする方を見つめていた。
 そして、俺達は見た。闇の中に垣間見える、おぞましい量の蜂の大軍を。怖い話の時のそれとはまったく違う悲鳴が上り、皆が叫んでいた。
「落ち着くんだ! 刺激しなければ蜂は襲ってこない!」
 先生が冷静に指揮するも、その声にはどこか自信が無いように思えた。そりゃあそうだろう、普通蜂はこんな風に人間を襲わないし、大体こんな数の蜂がいること自体がおかしいのだ。
 そうこうしているうちに容赦なく蜂共は刻一刻と迫ってきている。
(……ックソ! せめてあの集団がバラバラになってくれたら! そしたらパニックも収まるのに……!) 
 状況を冷静に分析したら勇気が出てくるのが分かった。ゆっくりと、蜂に向き直り、直感的に開いた両手を突き出す。
 変化は一瞬にして起きた。沢山まとまっていた蜂が、何の前触れもなく飛び散る。その一匹一匹を目で追う事は、スピード的に不可能だったが、本能で俺は悟った。「もう、大丈夫だろう」と。
                ※
 以上が俺が超能力を使えるようになった起承転結だ。俺の超能力は『重力を操る』事。その数日後に、落ちてきた花瓶を止めた時にそれは確信に変わった。あの蜂の一件では重力を無くしたので、蜂の飛行にブレーキが利かなくなり、蜂が吹き飛んだという事らしい。
 そして今、俺は超能力使いとして楽しい日々を送っているかというと実はそうでもない。というのも、がんが発症して病院生活を送っていたのだ。健康的な生活をしていたとは言えないので、自業自得だろう。
 短い、つまらない人生だったと自分でも思う。
≪解説≫
 まず、要点をまとめてみます
①主人公は今中学一年生(→能力が使えるようになったときは小学五年生)
②主人公達は蜂の大軍に襲われた
③『彼女』の怖い話(上側参照)
④主人公はがんを発症して、今は死にそうになっている
 以上です。主人公達は『羽を持つ黄色と黒の大軍』に襲われ(②)、『例外』(つまりは超能力者)が退治しました。実際に二年後の主人公は死にそうなので(①と④)、③の話は実際に起こると考えてもいいでしょう。つまり主人公達は今から死にます。
 ……と、なるならいいのですが。要点その⑤『最初だけ一人称が違う』、その⑥『最初主人公は、自分が中学二年生と言っていた』。
 このことから最初の主人公(彼女、とします)と途中からの主人公(彼、とします)は別人と考えることが出来ます。彼女曰く『重力と不死身は三年前にできなくなった』とのこと。彼女が言う『三年前』、重力を操れるようになった人がいましたよね。もしもその時に『不死身』も使えるようになっていたら……
『彼はがんで死ねず、永遠に苦しむ』
 ということになります。

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