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ジョン・レノン日本での足跡◎1971年編

 ジョン・レノンが日本に訪れたのは、ビートルズ来日公演のときも含めて計5回。そのうちの2回目、つまり1971年1月の来日から今日で53年。ジョン・レノンの日本ゆかりの地について研究している身でもあるので、せっかくなので自分なりに当時の来日時に訪れた場所などを考察してみた。
※私の寄稿本『ジョン・レノン フォーエバー 魂の叫びと日本の心』と、レコードコレクターズ増刊『Love JOHN LENNON』という本にもこのときの来日について詳細に書かれているのでこちらも参考にさせていただく。

◇1971年1月13日

 この日、ジョンとヨーコはお忍びで日本に来日(ジョンにとっては2回目の日本)。このとき、プレジデント・クリーブランド号という客船で横浜港から入国したとのこと。おそらく用意していた車でそのまま東京へと向かい、ビートルズ来日のときに宿泊した旧キャピトルホテル東急にチェックイン。取材していた記者が、1005号室からジョンとヨーコが出てくるところを見ているので、まさにビートルズが泊まった同じ部屋で宿泊していたと思われる(他の部屋もおさえていたようだ)。

旧キャピトルホテル東急(2006年撮影)


◇1月14日

 靖国神社とフィリピン大使館を訪れる。そして、渋谷の街を散策したあとに京都へ向かう(たぶん新幹線で)。

靖国神社(2019年撮影)


◇1月15日~19日

 比叡山延暦寺、天龍寺、直指庵を訪れる。ジョンの訃報を伝えた1980年12月10日の京都新聞には、1971年1月に京都滞在の際に宿泊した旅館の女将のインタビュー記事が掲載されており、それによると宿泊したその旅館は『イクヨ』という小さな旅館で六日間そこで宿泊したとあるので京都には19日頃まで滞在していたと思われる。
 私が寄稿したときは、「京都のお寺の中にある小さな宿屋」というヨーコの回想をヒントに、天龍寺の永明院に泊まったのではと予想してそう書いているが、今改めて整理してみると、おそらく宿泊した『イクヨ』という小さな旅館は天龍寺の境内にあったと思われる(その証拠に、その旅館の住所は天龍寺と同じく「右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町」と新聞には書かれているが、天龍寺とその旅館が目の鼻の先なので関係性はなくてもお寺の一部とヨーコが勘違いした可能性もあり)。このnote記事のサムネの、ドテラ姿の二人の写真は、『イクヨ』の部屋の縁側で撮られたものだろう。
 天龍寺の本堂にはもちろん、そこから車で15分のところにある直指庵にもこのときに訪れたことがわかっている。後年ヨーコとショーンがジョンの足跡を巡る旅において訪れているのでこれは確実だと思う。
 比叡山延暦寺を訪れる二人を捉えた写真が掲載されている当時の雑誌アサヒグラフには、「貴船のぼたん鍋を食べた」との記述があるが、おそらく貴船にある料理旅館からぼたん鍋の材料だけ取り寄せて、宿泊していた旅館内でふるまわれたと予想するが、六日間も京都に滞在していたらしいので直接貴船にも訪れた可能性も無きにしも非ずだ。
 あと、『Love JOHN LENNON』には、「洛北のK旅館に宿泊した」と当時の記事とともに紹介されているが、おそらくは京都の寺院を訪れる際に休憩所として利用しただけか、もしくはこちらも宿泊用に部屋をおさえていた可能性もある。それより重要なのは、洛北にも足を運んでいたとなると、上賀茂神社や下鴨神社にも訪れていた可能性は高いだろう。
 ジョンは1977年の来日時にも京都に訪れているが、この1971年のときに金閣寺や清水寺といった有名どころの寺院はすべて制覇していたと私は予想する。

ジョンも撞いた比叡山延暦寺の平和の鐘(2018年撮影)


◇1月20日

 19日のうちに東京に戻った二人はこの日、湯島の骨董品屋『羽黒洞』を訪れ、そこの店主に案内される形で東銀座の歌舞伎座に行って、歌舞伎を観賞。
 この日に帰国するつもりだったが、空港でヨーコのパスポートが期限切れが発覚したため急遽帝国ホテルで延泊することに。このとき、ヨーコの両親が見送りにきており、ようやくヨーコの顔を見れたと言っていたらしいので、鎌倉と辻堂に行くのはおそらくこのあとだろう。
 この日からは帝国ホテルで宿泊。

骨董品屋『羽黒洞』の跡地(2022年撮影)


◇1月21日

 東芝音工の水原健二氏が帝国ホテルに訪れて、二人にインタビューをする。このとき録音されたものは2020年のダブルファンタジー展でも販売されていたEPレコードに収録された。

私がダブルファンタジー展で購入したグッズおよび1971年1月21日のインタビューのときの音源が収録されたEPレコード(右下)


◇1月22~24日

 このあいだにヨーコの実家がある辻堂や、鎌倉のイワタコーヒーを訪れたと思われる。他にも、江の島、鶴岡八幡宮、円覚寺にも足を運んでいる可能性は高い。なお、イワタコーヒーの店員さんによると、この店には1971年の一度しか訪れていないらしい。

鎌倉駅近くにあるイワタコーヒー(2019年撮影)


◇1月25日

 取材相手は不明のようだが、帝国ホテルでインタビューを受けており、午後22時頃の便でようやく帰国の途についたようだ。
 ちなみだが、この来日時は上野にあるレストランキクヤ(現在の黒船亭)にも訪れているが、そのときに撮られた写真はおそらく延泊となって以降に訪れたものと思われる。骨董品屋『羽黒洞』には20日以降も何度か訪れているらしいので、店主に連れて行ってもらった可能性が高い(店主行きつけの店?)

旧レストランキクヤにて(2019年撮影)


 ざっーと整理してみたが、このときの来日でもけっこういろんな場所に訪れているのがよくわかるし、何より俳句や歌舞伎に直接触れたことは、そのあとのジョンの音楽作りに多大な影響を及ぼしたことは言うまでもないだろう。

 帝国ホテル、辻堂、円覚寺など私自身まだ訪れていない場所もあるので、今さらながら今年の抱負としてそういった所にも足を運んでみたいと思う。


自分が訪れたジョン・レノンゆかりの地巡りはこちらでまとめております↓(パート⑥まで)


ジョン・レノンゆかりの地巡り【京都編】は、文藝別冊「ジョン・レノン フォーエバー」に私が寄稿しているのでそちらをご覧ください。

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