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【ダブリン旅行記】ジョイスの足跡

イタリア編ギリシャ編に続き、ヨーロッパ滞在中の旅行メモ第3弾。

Dublin - Ireland, 2023年6月

1年間スコットランドのエディンバラに住むことになり、その期間中に行けたらと強く思っていた都市の一つがダブリンだった。

その理由はダブリン出身の作家、ジェームズ・ジョイス。私が最も好きな作家の一人だ。

ジョイスはモダニズムと呼ばれる文学ジャンル(というよりムーブメント?)における主要な作家の一人で、「意識の流れ」などの手法を取り入れた『ユリシーズ』などの作品は、英文学史の中でも圧倒的な存在感を持っている。

そんなジョイスは、国外に移住した後も故郷であるダブリンを舞台にした作品を書き続けた。
実際の地名などを作品内で多く使っていることも特徴的で、作中で登場人物が訪れた店などに今でも行くことができたりする。

というわけで私のダブリン観光はだいぶマニアックな文学観光になるが、実際に行くことを決めたきっかけはArctic Monkeysのダブリン公演でもあった。

UK・アイルランドツアーのチケッティングに挑戦した時、ダブリン公演のチケットだけがUKと違うサイトで販売されていて、UKの分のサイトで順番待ちの途中にダブリンの分のチケットが取れたのだ。

もともとダブリンに行きたいと思っていた私は、保険のために取ったダブリン公演のチケットをキープして、ライブと観光のためダブリンを訪れることにした。

1日目

友達とArctic Monkeysのロンドン公演に行った私は、その後一人でダブリンへ。

ホテルにチェックインした後、街に繰り出す。まず最初に、ジョイスの像を見に行った。

この像は中心部の比較的賑やかな通りにある。でも、ダブリン自体こじんまりとした街だしあまり賑わった感じはなかった。

続いて、友達におすすめしてもらった「Brother Hubbard」でブランチ。
おしゃれな感じの店で、ちょっと待った。

卵と大量のフムスが乗ったトースト、コーヒーレモネード

続いて、街の中心部を少し離れてサンディマウント・ビーチに向かう。ダブリンではトラムと電車で移動。でも中心部の範囲内なら徒歩で大丈夫。

移動中、行く予定のライブがメンバーの体調不良によりキャンセルになったという知らせを目にする……。
もちろん落胆しつつも、ライブだけが目的で来たわけじゃないのと、ロンドンで一回同バンドを見ていたのでまだよかったなと思う。

ちなみにダブリンの気候はというと、昼間は結構暖かった。上着いらず。
ただ移動中、電車の乗り換え時とかに急に雨が降ったり、かと思えば二駅先では快晴だったり、不思議な天気だった。

中心部から少し離れると一気に人が減り、乗り換え駅もかなり田舎の雰囲気だった。
あとは電車でtap-and-goが使えず、カードを買ってチャージ式だった気がする。

二駅前まで雨だったのに快晴の様子
サンディマウント・ビーチ

このビーチに行きたかった理由は、ジョイスの作品に出てくるから。
ただジョイスの作品にはビーチが登場する印象的なシーンが複数あり、このビーチなんだっけ?と思って、道中に検索した。

その結果、『ユリシーズ』で主人公①のスティーブンが散歩、そして主人公②のブルームが自慰したビーチだった……。
ああ、それか…となりつつ海岸沿いをちょっと散歩して、街の中心部付近に戻る。

次の目的地は、オスカー・ワイルドの家と像。
私自身ワイルドの大ファンというわけではないものの、『ドリアン・グレイの肖像』は普通に好きなので行きたかった。

ワイルドが住んでいた家はボランティア運営のような感じで、入るのに12ユーロくらい払った。

「階段気をつけて」と注意を促してくれるワイルド
ワイルドの像がある公園は、彼の家の真向かい。
こんな感じで窓から見える

家をさーっと見た後は、そのまま公園へ。ワイルド像の左右には、彼の様々な格言が書かれた小さな柱(置物?)が。この引用がどれも良くて、さすがワイルドと思いながら楽しませてもらった。

お気に入りは一番上の"who, being loved, is for?”
このポーズ、表情……

ワイルドの像はネットで検索して写真を見た時に、絶対見に行くと決めた。こんなふざけた偉人像は中々ないんじゃないかな。ワイルドの魅力…。

続いて、行くか迷っていたナショナルギャラリーへ。ダブリンに着いてから検索してカラヴァッジョの絵があることを知ったのが決め手だった。イタリアで好きになったカラヴァッジョの絵をまた見たく、行ってみることに。

ここで出会った意外な画家が、W.B.イェーツの弟であるジャック.B.イェーツ。
私自身イェーツの詩を授業でいくつか読んだことがあったけど響くものがなかった。でも彼の弟の絵はけっこう好きだなと思った。

ジャック・B・イェーツ
モネ
お目当てのカラヴァッジョ

次はトリニティ・カレッジへ。
ジョイスや彼の作品に登場するキャラクター、他にも様々な著名人の出身校であり、名門大学。私もジョイスが好きという理由で受けようかな〜と考えたことがあった。

軽い気持ちで訪れると、観光客だらけ。
有名な図書館はチケットを買えば中を見られるが、当日券はすでに売り切れ。
有名大学であることも観光地であることももちろん知っていたが、ここまでとは思わなかった。構内には大学グッズを持ち歩いている人もたくさん…。

余談だが、私が通っていた大学も観光地にあり、夏のフェスティバルシーズンは屋台が構内にも出店してキャンパスに観光客もたくさんいた。
それでもトリニティカレッジほどじゃなかったので、なおさら驚いた。

ダブリンでのディナーは全てノープランだった。
1日目の観光は終わったのでホテルに帰り、パブに行きたかったので軽く目星をつけてから出た。

まずは有名なテンプルバー地区に向かってみる。
さすがに人が多い!パブも全部混んでる。
入れる店もあったと思うが一人で入るのを躊躇してしまい、もう少し静かそうな方へ。

結局トリニティ・カレッジとホテル近くの「Moss Lane」というパブへ。
ダブリン中心地では、トリニティ・カレッジ周辺が一番きれいで安心感ある雰囲気だったと思う。とにかく小さな街なので、少し歩いただけでけっこう雰囲気(治安とまでは行かなくても)が変わる感じがあった。

パブはイタリア系の店だったのかフードはパスタやピザ中心。私はペストパスタを注文。ギネスを飲みたかったのに、タップでアサヒのスーパードライがあり、1杯目はそれにしてしまった。

ちなみにイギリスでも日本のビールで一番見かけるのはスーパードライ。私は見るたびに必ず頼んでしまう。

2杯目はちゃんと念願のギネスを。

かわいい

実際イギリスで飲むギネスよりおいしく感じたが、気のせいかな。
ギネス工場にも行きたかったけど、ライブとの兼ね合いで行ける時間の予約が埋まっていたので断念。

2日目

朝はホテルの朝食でスタート。

ここでホテルの話をすると、夏のヨーロッパの観光地は本当にホテルが高いし取りづらい。8月に行ったウィーンは全然大丈夫だったのでもちろん場所によるけど…。

特にロンドンやエディンバラは、早めに取らないと本当に痛い目を見る。ダブリンも結構危うくて学生寮に泊まることも検討したけど、そこまで高くないホテルがあったのでそこを予約。
(ちなみにトリニティ・カレッジにも泊まれるが、めっちゃ高かった気がする)

普段は朝食付けないけど、そのオプションがなかったのでひさ〜〜〜しぶりにホテルの朝食を食べた。

絵に描いたような朝食

この日の観光は、ジョイス・タワー&ミュージアムからスタート。
ジョイスが実際に住んでいた灯台だ。これは中心部から少し離れているので、電車で向かった。

この灯台があるビーチには海水浴をする地元人も数人いて、のどかな雰囲気。

外観

中に入ると、スタッフさんたちがパンフレットを渡してくれる。ここは入場無料。

私が訪れた数日前はジョイスの代表作『ユリシーズ』の出来事が起こる日付6月16日(ブルームズデーと呼ばれる)で、毎年世界各地のジョイスファンがダブリンに集まり、いろんなイベントが催される。
スタッフの方によると、「ブルームズデーは混みすぎてたから、いい時に来たね」だそう。

ジョイス・タワー&「ミュージアム」と名付けられたこの灯台だが、実際どんなものが見られるのかはよくわかっていなかった。
来てみると、ジョイスの私物や貴重な品がたくさん……。私個人的には、ダブリンで訪れたいくつかの文学関連スポットの中でも、一番感動した場所だった。

一階の展示物はあとで見ることにして、まず一人しか通れないくらい狭い螺旋階段を上がって展望台へ。

展望台からの景色

建物内に人は少なく、展望台にいたのはしばらく私一人だった。
ここにジョイスが住んでたのか……と感慨深くなりながら、じっくり景色を眺めた。
それから中に戻って展示物を見ていく。

お部屋
ジョイスの私物たち。
ベストはよく見ると動物柄でかわいい
手紙や写真など

下の絵は、姿勢が悪かったというジョイスのイラスト。
以前本で見て好きだったので、ここでもお目にかかれて嬉しかった。

中でも一番感動した展示物が、この鍵。

青年時代のジョイスはこの灯台に、友人と一緒に住んでいた。
彼の代表作『ユリシーズ』の主人公の一人スティーブンはジョイスをモデルに、その友人マリガンはジョイスの友人をモデルにしたキャラクターだと言われている。そしてこの2人のキャラクターも、作中ではこの灯台に住んでいる。

『ユリシーズ』自体、この灯台を舞台に、この2人の会話で幕を開ける。
この第一挿話が私の『ユリシーズ』でのお気に入りのエピソードであり、マリガンこそが私の一番好きなキャラクターなのだ。
そういった理由もあって、この灯台に来ることを本当に楽しみにしていた。

上の鍵は、この灯台の本物の鍵。
『ユリシーズ』の第一挿話では、スティーブンとマリガンがこの鍵をめぐって揉める場面もある。
まさか『ユリシーズ』に登場する“あの鍵”の現物を拝めるとは思わず、かな〜〜り感激してしまった。

来てよかったな〜と思いつつ、中心部に戻る。
この日のスケジュールはゆるゆるだったので、コーヒーブレイクを挟むことに。「Kaph」というカフェで一休み。写真はないけど、たしかカフェが多いエリアだったかな。かわいい感じのお店だった。

確かこのタイミングで、ジェームズ・ジョイス・センターへ。これもジョイス関連の展示が見られる施設。
写真もメモもないので全然覚えてないけど、5ユーロくらいで入れた。

そして最後の観光スポット、アイルランド文学博物館へ。
さすがにジョイス関連の展示が多かったが、他にもベケットやワイルドからもっと現代の作家までの展示があった。

ダブリンの立体地図。
ジョイス作品に登場するロケーションが引用と共に示されている
ジョイスコーナーの入り口。
引用は『ユリシーズ』から

お目当ての観光が終わったので、またホテルに帰ってディナーについて考える時間…。
アテネに続き街が小さくホテルにすぐ帰れるのはいいんだけど、やることがそんなに多くなかったのもあり、ダブリンではひとたびホテルに帰ったら結構ダラダラしてしまった。

バーガーが食べたい気分だったので、「BoBos Burgers」へ。

ここで飲んだIPAがおいしかった。
アイルランドのブルワリーのもの

3日目

この日はエディンバラへ帰るのみ。

余談だけどロンドン-ダブリン間、ダブリン-エディンバラ間で初めてライアンエアーを利用した。値段は時間帯によるが、安い時でなんと片道20ユーロ台。

飛行機は絶対に遅延するので搭乗前にゲートで待たされることが多いのと、機内は水も有料だったと思う。安すぎて不安はあったけど、無事帰れたのでよかった。

ライブが中止になってもちろん悲しかったけど、マイペースに楽しめたダブリン旅でよかった。1人じゃなきゃできないような観光ばかりしていたので、一人旅だったのもよかったのかと…。
次はウィーン編。

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