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あなたの人生の最後にできること


ばあちゃんが、緑の星に還りました

去年あたりから心臓の数値が悪くなり
身体が弱って、転倒することも多くなってきた

病院がとにかく嫌いで
在宅緩和ケアを受けながら

いつも同じ場所に座っていたおばあちゃんは
介護ベッドに場所がかわり

医師から、いつその時を迎えてもおかしくない状況なので覚悟はしてください

そう告げられた

なんの病気でってわけではなく「老衰」

悲しくもあるけど、すごいことだなって思う


じゃあ、最後を迎える93歳のばあちゃんに
おれにできることはなんだろうか

そう考えて…

やっぱり、幸せに笑って逝ってほしいなって

職場から実家は近くて
前からよく顔を出しに行っていた

「ばあちゃ〜ん、水ちゃん来たよ〜」
そう言うと
「は〜いいらっしゃ〜い!」

と手を広げて素敵な笑顔をいつも見せてくれた

帰る時には「いつでも帰っておいでよぉ〜」
いつもそう言ってくれた

おれが来るといつも喜んでくれた

この時の笑顔を、喜びを、最後までばあちゃんにたくさん感じてほしいな

そう思って、毎日実家に通う日々が続いた

ばあちゃんの足をマッサージしてあげて
「ばあちゃん、気持ちよかったねぇ」

ご飯を食べさせてあげて
「ばあちゃん、美味しいねぇ」

身体が動かなくなってきてからは
母と一緒にオムツ交換をして
「ばあちゃん、スッキリしてよかったねぇ」

少しでも嬉しい感情を感じてもらえるようにと

だんだん体力がなくなってきて、ご飯を食べることができなくなってきた

むせることも増えて誤嚥のリスクも高くなってくる

1日のほとんどを寝ていることが多くなってきた

仕事終わりにいつもばあちゃんの顔を見に行って「ばあちゃ〜ん、水ちゃん来たよ〜」

ばあちゃんの耳元でそう言うと
ゆっくりと口を開いて

「あぁ…水ちゃん来てくれたんだねぇ」
と、差し伸べたばあちゃんの手を優しく握る

そんな毎日が続いた

耳はちゃんと聞こえてるけど
目を開けるのはだんだんしんどくなる

ある日…差し伸べたばあちゃんの手に
自分の頭を出してみたら、ゆっくりと撫でてくれた

「ばあちゃ〜ん、35歳になっても孫は孫だからね、  嬉しいよ〜ありがとうねぇ〜」

ばあちゃんは、ゆっくりと笑っていた



ばあちゃんの誕生日は3月3日

あと2時間で94歳を迎えるという時に

たくさんの人に自宅で見守られて息を引き取った

ばあちゃんを抱きしめて
「長い長い人生の旅路、お疲れ様でした」

そう伝えた

12時を回ってから
ばあちゃんにハッピーバースデーの歌を
みんなで歌った


ばあちゃんは………幸せだったかな


最後の最後まで
「あぁ…やっぱり水がいちばん美味しいねぇ」
と飲んでいたな

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家で看取るなら1人では無く、一緒に介護ができる家族が必要である

わかってはいても
なかなかうまくいかないのも事実

母さんは、日中ずっと1人で介護をしていた

「お母さんがぜんぶやってくれるから助かってるよ〜」

おばあちゃんの言葉は嬉しくもあり、呪縛のようにもなっていた

やりもしないのに
ああだこうだと言ってくる人たち

自分の母親なのに上手く協力してくれない父さん


私が毎日実家に通ったのは
ばあちゃんだけじゃなく、母さんの心の心配もあってのことだった

介護で疲れている身体をマッサージしてあげたり
休みの日は少しでも寝れる時間を作ってあげたり
愚痴を聞いてあげたり

食事や水分も後回しにしがちで、やつれているのも目に見える状態だった

少しでも食べやすくて栄養のあるものをと買ってきてあげたり、声掛けをしてあげたり


それでも、私も仕事があるから
上手く協力できているわけではない

「とにかく、いてくれるだけでいい」
「それだけであなたは私の支えになるから」
そう言われた

母さんの頭の中が休まる時はなかった


介護をしたくない…とかじゃなくて
みんなでやろうよ、どうして私だけがこんなに…

口に出すことはなかったけど

だから少しでも、心が安らげばって
ばあちゃんが寝てる時には一緒に楽しい話をして

母さんと一緒に
いつも昔の曲の話をして一緒に歌ったり
オススメの曲を紹介しあったり

あっ、バースデーライブも一緒に聴いてて、母さんと「これなんの曲だっけ!?」「あぁ〜懐かしい!」ってすごい盛り上がってました

工藤静香と中森明菜は他にもいい曲沢山あるんだよ〜って教えてくれました


そんな母さんの懸命な介護も、急に終わりがくる

母さんは泣き崩れた

本当にお疲れ様でしたと、母さんを抱きしめた



通夜と葬儀が終わり
まだまだやることはあって落ち着かないし

簡単に気持ちが切り替えられる人じゃないからいろんな葛藤があると思うけど

母さんだっていままでずっと真面目に頑張ってきたんだから

自分のために
好きに生きたっていいんだ

残された人生の時間は限られている



自分で縛りつけて隠していたその背中の翼

解いてあげよう

翼の広げ方、忘れちゃったよね

急に広げると痛いから、ゆっくりでいいよ

飛び方は教えてあげるから


不安なら一緒に飛ぼう


そこには素敵な世界が待ってるからね♪


ばあちゃんにちょうだい(゚∀゚)ってもらった
アメジストは小さい頃からずっと置いてあったもの

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