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「共生型の福祉事業ってなんだろう?」和寒町ふくしのまちづくりNewsletter Vol.2

この投稿は、8月5日に和寒町内に配布された「和寒町ふくしのまちづくりNewsletter Vol.2」と同一の内容です。PDF版はこちらでご覧いただけます。

和寒町ふくしのまちづくりNewsletter Vol.2が刊行されました。今回は、和寒町ふくしのまちづくりラボというイベント報告を軸とし、共生型の福祉事業について重点的に取り上げました。イベントは多くの人で賑わい、今後の和寒町について考えるとても有意義なひとときとなりました。

共生するまちを目指して。

7月20日〜22日、和寒町ふくしのまちづくりラボが開催されました。
まちづくりラボでは、共生型の福祉事業を実践している社会福祉法人ライフの学校 田中さんのお話を聴き、これからの和寒をどんなまちにしたいかについて話し合いました。
共生型の福祉事業とは、ただ利用者がサービスを利用するだけでなく、地域で問題を抱えている人同士の長所を補完しあい、支え合って生きていく福祉事業のことです。
共生型の福祉事業を立ち上げるにあたり、「ただ特別養護老人ホームを建て替えるだけでなく、全ての住民にとって有益なものにしたい。」私達はそう考えています。そのためにも、和寒町のみなさんと、このまちをどうしたいか考えたいです。
あなたも、共生型の未来の和寒について一緒に考えてみませんか?

特養を地域の社会資源とするために
ー社会福祉法人 ライフの学校 理事長 田中 伸弥 氏ー

お話いただいた方 田中伸弥さん
介護老人保健施設での介護主任や、病院併設の老健などを経験した後、2011年に現法人の特養施設長に就任。2019年6月より、社会福祉法人ライフの学校理事長兼任統括施設長。仙台市にて、地域密着型の特別養護老人ホームなどを運営。

社会福祉法人 ライフの学校の理事長を務める田中さんに、事業をご紹介いただきました。ライフの学校が今の共生型の事業所へ変化するきっかけは、東日本大震災で避難しに来た人の一言からでした。「いつも見ていたこの建物が老人ホームだと知らなかったと言われ、とてもショックを受けました。特養は、町や市のお金を使って建てた場所です。特養が特養に入る人だけのものになってはいけないと強く感じています。」
だからこそ、様々な試行錯誤を行い、地域の方々と密接に関わるようになりました。「福祉避難所として使われていたスペースをデイサービスに活用したり、道路と施設を隔てていた生垣を取り除いたりするなど、スタッフの努力によって様々な改善を施しました。」

社会福祉法人 ライフの学校の施設。
施設と道路の境界線となっていた生垣を取り除くことで、
地域の人が立ち寄りやすい場所にしています。

今では、無料学習支援教室や駄菓子屋、子ども食堂など、様々な方法で特養を地域に開放しています。こういった取り組みでは、地域の方と一緒に取り組むようにしています。「地域の問題は、事業所の中だけで解決するのではなく、地域の方と一緒に解決することが大事です。子ども食堂の運営は、地域のボランティアの皆さんだけでなされています。」

また、デイサービスを利用する高齢者の皆さんは幼稚園で雑巾縫い教室の先生を務めています。こういった施設の利用者が誰かを支えることが出来るような、双方型のプロジェクトを進めています。「雑巾縫い教室は、子供たちが学びを得るだけの場所だけでなく高齢者の皆さんの居場所となりました。また、高齢者の生き方から、人間が年老いていくことやいつか亡くなることを子供たちが学ぶことができるのではないかと考えています」

田中さんが自分ごととして考えるようになった死と福祉。ライフの学校でも、どう生ききるかを考えるために、利用者の方の死と向き合っています。「利用者さんが亡くなられた際は、施設内で葬儀を行うこともあります。誰にでも訪れる死を、どうお看取りするのかということについても考えています。特別養護老人ホームが多様な生き方・多様な死に方が集う社会資源として輝くまちにしたいです。」

弱さを支えあう関係をめざして
ー社会福祉法人ゆうゆう 大原裕介ー

社会福祉法人ゆうゆう 理事長 大原より、ゆうゆうの事業について説明されました。障がい者支援を行う学生ボランティアから、ゆうゆうは生まれました。しかし、当時の当別は障がい者に対して排他的な街でした。
「当時、支援体制はほとんどなく、『障がい者がいないまち』とさえ言われるほどでした。」

事業説明を行う大原。

しかし、支援を続けていくうちに、悩みを抱える人たちから電話が殺到しました。「まちでの僕たちの活動を見て、沢山相談の電話が来るようになりました。今思うと、障がいなどのハンディを隠さず活動することで、弱さをさら
けだせる雰囲気が生まれたのだと思います。障がいや介護といった問題を自
分一人で解決しないといけないものとして捉えるのではなく、地域の人に頼
りながら解決する関係性が芽生えました。」

現在、ゆうゆうでは様々な利用者の方がサービスを利用しています。大原
は、利用者が長所を活かし互いに支え合う姿を見て、人の持つ可能性について語ります。
「自分の期待通りに人が動くかどうかはわかりません。しかし、人間はどんな人でも成長します。その人の可能性をきちんと見つめていけるような事業を進めていきたいです。」

まちづくりラボを終えて

今回のふくしのまちづくりラボでは、3日間で累計80人ほどの方が参加してくださいました。子ども連れの方や地域福祉・保育・教育に携わる方、農業や商工、観光に関わる方まで、多種多様な方々が議論している姿を見て、和寒町の皆さんの熱意はかけがえのない素晴らしいものだと改めて感じました。これからのプロジェクトに取り組むにあたって、身が引き締まる思いです。本当にありがとうございました。

また、「今日のことを沢山まわりに」「若い方の意見を聞きたい」「これまでやろうとしてできなかったことばかり思い出されます。今からできることはあるだろうか。」などの前向きな声が寄せられ、とても励みになりました。これからも、町民の皆様と一緒にまちづくりを進めてまいります。よろしくお願いいたします。

事業者紹介

ゆうゆうteco協働体は、和寒町ふくしのまちづくりプロジェクトを実行するために、社会福祉法人ゆうゆうと建築設計事務所tecoが共同して出来た団体です。

社会福祉法人ゆうゆう

2003年に学生のボランティアサークルから出発し、法人格を得て、就学前から成人期まで法制度に則った障害児者福祉サービスや、全世代を対象とした相談支援及びインフォーマルサービスを提供しています。
「一人の想いを文化にする」という理念のもと、支援する人・される人の垣根を超えて地域の皆様と共に共生型のまちづくりをおりなしています。
今回の事業ではこれまでの経験を活かし、地域住民の皆さんと共に新たな拠点づくりを通し新たな文化を作るお手伝いが出来るものと考えております。

理事長 大原裕介

理事長 大原裕介
平成15年に北海道医療大学ボランティアセンターとして設立。学生による任意事業の障がい児預かりサービスや0歳から96歳までの生活支援サービス等を3年間実施。
卒業後、NPO法人当別町青少年活動センターゆうゆう24(現「社会福祉法人ゆうゆう」)を起業する。人口減少時代における、あらゆる住民がそれぞれの立場を超えた支え合いによって福祉的実践を構築する共生型事業や国内外のアールブリュット事業の発信、民間活力を活用した社会的事業の研究など社会に必要とされる様々な実践を創り続ける。
北海道医療大学の理事・評議員・客員教授として、福祉現場の魅力を伝え後進者を育成するほか、一般社団法人FACE to FUKUSHI共同代表として様々な政策の提言にも関わる。

建築設計事務所teco

東京、浅草橋に拠点とする建築設計事務所です。
住宅、家具、商業、福祉、公共空間など、幅広い設計を行っており、まちに関するリサーチを行っています。多くの実績がある子育て・福祉施設では、規模や敷地の検討などの枠組みづくりから行い、地域に開かれた施設づくりを行なってきました。
和寒町のこのプロジェクトにおいても、町民の皆様の声を聞きながら、和寒町の特徴を活かした建築の計画を行っていきます。

teco メンバー写真。

代表 金野 千恵(写真中左)
神奈川県生まれ。2011年東京工業大学大学院博士課程修了、博士(工学)。
2015年一級建築士事務所tecoを設立。住宅や福祉施設の設計、まちづくり、アートやインスタレーションを手がけるなかで、仕組みや制度を横断する空間づくりを試みている。
大𣘺 貴洋(写真右)
栃木県生まれ。2018 年千葉工業大学院 修了。
佐々木 啓(写真左)
島根県生まれ。2021年東京工業大学大学院博士課程修了、博士(工学)
泊絢香(写真中右)
東京都生まれ。2017年 明治大学大学院修了。

これからのプロジェクト

8月中旬には、地域を支える団体の皆さんへのヒアリングや意見交換の場所を行い、9月発行のニュースレターでは、今回で頂いたご意見・ご質問・ご感想やヒアリングの結果を集計し、和寒町のこれからをどうするか、改めて考えた結果をご報告できればと考えております。
今後も、和寒町のより良い未来のために、沢山のご意見をお伺いさせていただきます。ご協力、よろしくお願い致します。

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