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100年前の料理本を訳してみます1ーはじめに

 数年前、ドイツの小さな町のアンティークショップで見つけた古い料理本。調べてみると、この本の初版は1845年に出版され、その後76度も版を重ね、合計4万部以上を売り上げたという当時ドイツで大人気の料理本であることがわかった。
 この本を買ったすぐ後に、前日同じ宿に宿泊していたご夫婦に出くわし、この本を見せると2人ともとても懐かしがっていた。昔はどの家庭にもあったようだ。
 作者の名前はヘンリエッテ・ダヴィーディス(Henriette Davidis)、本のタイトルは『日常的かつ洗練された料理のための実用的料理本(Praktisches Kochbuch für die gewöhnliche und feinere Küche)』。私が買った第48版はルイーゼ・ホレ(Luise Holle)による改訂・出版とある。
 まず作者について少し紹介する。本名ヨハンナ・フリーデリカ・ヘンリエッテ・カタリーナ・ダヴィーディス(Johanna Friederika Henriette Katharina Davidis)1801年ルール地方ヴェンゲルンで、13兄弟の第10子として生まれる。家庭教師の訓練を受け、上流階級の家庭の令嬢たちに教え、料理を教えるための教科書の必要性を感じて自ら本を書くことにする。地元の料理だけにとどまらず、ドイツ各地の他イギリス、フランス、オランダ、スイスの料理も含まれ、出版後ベストセラーとなり、オランダ語、フランス語、英語、デンマーク語にも翻訳された。
 第32版から改訂を加えたルイーゼ・ホレは、この料理本に高級料理や病人用の食事の他、残り物の活用法などを加え、調理法や料理技術を時代に合わせて更新している。

 本来なら初版があればそれを訳してみたかったけれど、持っているのがこの48版だけなのでとりあえずこれを訳してみる。ドイツの大学図書館のサイトで3版のデータを見つけたけど、そのうち時間があれば比較してみるのも楽しいだろう。

 これが私が手に入れた48版である。布製?で表紙もかなり改訂されてきたようだ。

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 テキストはフラクトゥール(第二次世界大戦頃まで使われたドイツの書体)で書かれ、600ページ以上もあるため、かなり時間がかかりそうだ。途中で飽きたり挫折したりするかもしれないけど、深く考えずにのんびり楽しみながらやっていきたいと思う。
 ちなみに勝手に翻訳をしても大丈夫かどうか、ハンブルクで図書館司書を務める友人に聞いてみたところ、調べてくれて著作権はもうないから大丈夫だとのこと。
 
 当時の調理法、食材、今よりも家庭での作業は多かったはずだし、調理道具も今と違うから、そうした発見ができたら楽しい。さらにそこから見えてくるものがあればそれもまた楽しい。

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