遠野 遊

ものを書きたい妖怪の一種

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さよならユニットバス

さよならユニットバス  ダンボール箱、三箱分。ここ数年分の私の荷物だった。ここで何年暮らしたんだろう。彼と付き合い始めて、何年だっけ。かけた年月を考えると虚しいほど甘くて、悲しいほど無意味な気がして数えるのをやめた。  今日、私はこの部屋を出ていく。忌々しいユニットバスの、安いワンルームを。   同棲する部屋を内覧に行ったとき、彼が「ユニットバスはトイレと風呂の掃除が一度に出来て楽なんだよ。俺ずっとユニットバスだったし」と言ったからこの部屋になったんだっけな。実際、家賃も安

    • レイトショーはお早めに

      Times:Midnight  小山内硝子の好きなものの話  レイトショー。なんて、心が甘くなる響きだろう。  仕事が終わってから向かう夜の映画館は、たとえ誰かと待ち合わせをしていなくても恋人との約束に急いで向かうような満ち足りた甘さがある。お風呂に入っておいて、帰ったらすぐ眠れるように準備してから、夜の海のような街をのんびり歩いていくのだ。人混みが苦手な私にとっては観に来る人が少ないのも有り難いし、気持ち安価に映画が見られるのでドリンクだって少し贅沢できるのもいい。映画が

    さよならユニットバス