見出し画像

舞台『DOWN TOWN STORY』@赤坂RED/THEATER

テレビドラマや映画で多くの脚本を手がけている羽原大介が、NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」という大仕事を終えて、ライフワークだという演劇の現場に戻ってきた。それ以前の昭和芸能舎は劇団の形だったのが、今回旗揚げ公演を行った羽原組は公演の度にキャストを集めるプロデュースユニットの形で、今回のキャストもしるさ、浦島三太朗、田久保宗稔などの旧劇団員や稲村梓のように劇団作品の常連がいる一方、オーディション組も取り混ぜた顔ぶれとなった。

物語は平成元年の東京下町で暮らす3姉妹(しるさ、大滝樹、稲村梓)が、突然大きな借金に巻き込まれる。そこからの脱出のためにもがいている内に、縁遠かったラブストーリーにも巻き込まれて、といった流れで進んでいく。コメディなので所々にくすぐりが仕込まれていて思わずクスリと笑ってしまうのだが、興味深いのは客席が一斉にいうより、異なるポイントであちこちから笑いが起こったところだった。客席を見ると幅広い世代が集まっていたようなので、羽原の撒いたくすぐりがそれぞれ違う世代に効いているのだろう。

羽原組_杏里・和也

逆に考えると、まあよくもこんなに笑いの種を仕込んでくるものだ、とも思った。サービス精神の塊だと言っても良いかもしれない。さらにこのところ先述の朝ドラに絡めて散々な非難を浴びていることも考えると、その鬱憤を思い切り晴らしているようにも感じたのは考えすぎか。

羽原組_杏奈・大城

気になったのは、平成元年が舞台なのに、出てくるアイテムがズレていることが多かったこと(例えば「ダイソー」とか「プリウス」とか)。意地悪な突っ込みはしたくないが、やはりその時期に生きてきたものとしてはそういった“ズレ”は気になってしまう。朝ドラに対するアンチな書き込みもそういったことがきっかけなのではなかろうか。

羽原組_心愛・森下1

まあ、そんなことを棚に上げてしまえば、面白いコメディに仕上がっていた。3姉妹それぞれのキャラクターもバッチリ馴染んでいる。大滝のダンスにも思わず目を見張ってしまったし色々な作品からの引用や恩師つかこうへいへのオマージュなども楽しませて貰った。さて次はどう出るか?今から次回作が楽しみだ。

19日まで 東京 赤坂RED/THEATER


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?