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医療施設の高断熱・高気密に意味はない?

 医療施設では高気密・高断熱にするメリットが少ないと言われています。人の出入りが多く、出入口からの吹込みを制御できないためだと言われております。本当にこれだけの理由だけで高断熱・高気密が難しいのでしょうか?

 歯科医院や診療所の規模の建築では軽量鉄骨造が多いです。木造だと柱の位置がネックになることが多いためです。特に歯科医院の場合、配管が複雑になるため、柱や梁と干渉するリスクもあります。軽量鉄骨造は大きな空間が得意なので、医療機器の配置やスタッフ動線計画が容易です。特に医療機器は外国製が多く、日本建築の尺貫法と相性が悪いのです。だから軽量鉄骨造でとりあえず大きな空間を作って、パーテーション等で空間を自由に区切る方が、設計が楽なのです。

 軽量鉄骨造は工期を短縮できるメリットがあります。会社によってはプレハブを使えるため、規模が大きくても工期を短縮させ、ビジネスに影響が出にくくすることが可能です。よってみなさんが相談するコンサルや材料屋さんは軽量鉄骨造の大手HMを推奨するのではないでしょうか。

 この軽量鉄骨造の最大の欠点が「性能が悪い」ことです。高断熱・高気密が非常に難しいのです。構造材である鉄の熱伝導率が高いため、いくらグラスウールや発泡ウレタンを使用しても、外気温の影響を大きく受けてしまいます。
 さらに建築の性能を高めようとすればするほど、手間がかかります。時間がかかるし、職人さんの腕が必要です。工期が長くなるため人件費が高額になります。サッシについても高性能なものは高価です。建築規模が大きいので、必然的にサッシの枚数が多くなります。樹脂サッシのトリプルガラスを入れようとすれば、家一棟分を超える金額がサッシだけで追加になってしまう…。だから医療施設の気密・断熱性能を安易に高めることができないのです。

今後、CLTがどんどん普及すれば、より環境負荷の少ない大型建築が可能になると思いますが、まだ時間が必要そうです。

 よって多くの診療所では大型エアコンをガンガン稼働させています。医療機器もエコの概念が全くなく、電気を大量消費する前提でできています。残念なことに環境負荷を全く考慮されていません。しかし、医療施設だけエネルギーを無駄遣いしていい理由はありません。空調設備に限らず、医療機器においても環境負荷を考えなければいけない時代だと考えております。だから先陣を切って本気で実践しました!

ちなみに冒頭の写真は重鉄の倉庫建築です。

ワタベデンタル

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