ロクディムALIVE_003〜カタヨセヒロシとりょーちんとの出逢い

「タケシと同じ歳で面白いやつが1組にいるって」

ロクディムの6人中4人は同じ養成所の仲間である。

養成所は2クラスあって「午前クラス:1組」と「午後クラス:2組」に分かれていた。

ワタリは午後クラスの2組。同じクラスに宍戸勇介がいたのは前回で話ししたね。

今日はもうひとつのクラスにいる2人のロクディムの話。

冒頭のセリフは同じクラスの誰かがワタリに言ったのでした。

「なんだって??ワタリ級に面白いやつがいるだと?」

バリバリの自尊心と自意識をもっていたワタリはすぐにアンテナが1組に。

いつもよりも少し早めに養成所にいくと、ちょうど午前クラスの終わりに立ち会える。

そこで同じ歳の男、カタヨセヒロシを見た。

当時のカタヨセヒロシはワタリの目からはもう吉岡秀隆にしか見えなかった。

「北の国から」のじゅんくんに激似だった。

「東北の男は皆、吉岡秀隆に似るのかな?」なんてことを思った気もする(ちなみに吉岡秀隆さんは埼玉出身)

しかし、いくら気になったとしても違うクラス。すれ違うくらいしか接点がない。

なんか静かで少し影があって、でも注目されている。

ワタリと同じクラスの宍戸勇介とは違う静かさ。

興味はある。しかしこちらは自意識モンスターみたいな状態。

気楽に話しかけるということもなかった。

時々、カタヨセヒロシを見かけては頭の中で「北の国から」のテーマ曲を流して「父さん・・僕はいま東京にいるわけで」と勝手にナレーションを入れてみるくらいしか関われなかった※関わってない

別のクラスだし、なかなか絡む機会もないか。なんて思っていた。が、そうでもなかった。

カタヨセヒロシと、もうひとりの1組にいる男、りょーちんとがっつり絡むのはわりとすぐ。

その年の夏に特別企画として1組と2組の中で有志で「スタジオ公演」をすることになった。

演目は高橋いさをさんの「バンク・バン・レッスン」。

コメディだった。

もちろんワタリは即決。

その中にカタヨセヒロシもりょーちんもいた。

8人くらいで構成されたとおもう。

ここで夏の間、ともに稽古をすることになった。

そこで印象的だったのはりょーちんだった。

作品の中でりょーちんが拳銃に撃たれるシーンがあるんだけど、撃たれた時のリアクションが変だった。

普通撃たれるところで想像されるリアクションというのは「ぐわぁ!」とか「ぐぅ!!」とか「うっ・・・」とか「・・なんじゃこりゃあ!」だろう。

しかし、りょーちんは撃たれたあと、たっぷりの間をとって

「は・・ぱ!!はぱはぱはぱ!!」

と言いながら倒れた。

稽古場で爆笑をかっさらっていった。

「こいつ・・・やるな」

「は」と「ぱ」をあわせる。考えつかない。なんてこった。世界は広い。

と自意識モンスターのワタリは唇をかみしめた記憶がある。

舞台をやっていくと、稽古場でだけ面白いネタみたいなのってあって、それってだいたいは本番でスベることが多いのだけど、この「はぱ」は本番でもウケていた。

気持ちよくなったのかもしれない。りょーちんの「はぱ」は日に日に長くなっていた。

「ばーん」「は!・・・・はぱ!」だったのが、

「ばーん」

「は!・・・・・・・・・・・は!・・・は!・・・はっっっっっっぱ!!!はぱはぱはぱはぱはぱ」

になっていた。永遠に感じるほどの独特の間。でもしっかりウケる。

今思うと、あのとき「北の国から」のカタヨセヒロシは笑っていたのだろうか?きっと笑っていなかったようにおもう。

皆が笑っているのを静かに見つめる。

「父さん・・皆が笑ってます・・僕は・・・東京にいます」

なんて思っていたのかもしれない※きっと思ってない

しかし、その反面。りょーちんは非常に体調を崩しやすかった。

本番間近になったら

「たけちゃん・・ごめんなんだけど、しばらく泊まっていいかな?」

と養成所の近くに住んでいるワタリ邸に1週間ほどいた。看病した記憶もある※具だくさんの味噌汁を飲ませたりした

そういうこともあり、りょーちんとはすぐに仲良くなった。

座組じたいもいい雰囲気だったようにおもう。

楽しく公演をした。ワタリにとって初舞台だった。

カタヨセヒロシとの仲が深くなっていくのはもう少しあと。

即興を本格的に始めた時からスタートする。

この養成所は2年目も通おうと思ったら通えたし、塾長にも好かれていたし、続けようか?っていうのもあったが、上京して1年経つ頃にはワタリは即興の面白さに夢中になっていた。純さんとの仲が良かったのもある。純さんもワタリのアパートに泊まりにきて、いろいろ語り合ったのもある。

また養成所にいたころに、純さんが「他の専門学校でも即興を教えててね、そこにいる子達の発表会があるんだけど観にいく?」と誘われて観に行った発表会がとんでもなくパワフルで。とくに女性陣たちが異常な熱を発していたのに感動して

「こういう人たちと一緒にやってみたい」と思ったこともあり。

また今井純さんももっと本格的に即興を学べるワークショップをはじめるというタイミングだったこともあり。

「今井純のところでもっと即興を学ぼう」と決めた。

ということで俳優養成所は1年学んで最後に卒業公演をして終わる。

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りょーちんの寝顔。まだ髪がある。完全体になる前のりょーちんだ。

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