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詩:ファスナー



噛み合わせの悪いファスナーを 無理矢理引き上げて閉じたような
居心地の悪い沈黙はすぐに綻びて 役目を果たさなくなった
ぷつり、ぷつりと歯が離れて 広がっていく穴を
諦めのように当然のように ただ眺めているけれど

壊れてしまえば不可逆なそれを
もう一度丁寧に解き解して
改めて繋ぎ合わせられるほどの
熱を あるいは理由を 僕は持ち合わせていなくて


引き攣れた接合と がたついた欠乏と
錆び付いた切望と ざらついた絶望と 
ぷつぷつと 広がって 広がって


やがて離れ離れになったエレメントの上を
不意にスライダーが滑る
繋ぐ役目を放棄して 滑らかに軽々と
噛み合わないままの歯の上を
軽々と
軽々と
自由に



猿荻レオンさまのファスナーフェスに、勝手ながら参加させて頂きました。

ファスナーのアレって何て言うんだ?とググって、スライダーとかエレメントとか固有名詞があることを初めて知りました……奥が深いです、ファスナー道。


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