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太田雄貴氏に学ぶ男子新体操普及の道筋

先日、スポーツ超会議というコミュニティが主催するセミナーで元フェンシング銀メダリスト・太田雄貴さんのお話を聞きました。

ほとんどの方がお名前をご存知だと思いますが、選手引退後のご活躍をご存知の方はそこまで多くないと思うので、是非こちらからご確認ください↓

フェンシング界に改革をもたらしただけでなく、現在世界のトップでスポーツを引っ張っている太田さんのお話から学んだことを男子新体操に置き換えて考えてみました。

人気→認知

太田さんのお話から学んだことはたくさんありましたが、その中で1番僕に響き、男子新体操に置き換えやすかったのが「人気→認知へ」ということでした。

簡単に説明すると、
力のないものは
1、何かしら爆発的に人気を集めるコンテンツを一つ作り、そこに熱量の高いコアなファンを集めながらその輪の中で人気を高め、
2、その人気が話題となることによって世の中に拡散され、多くの人に認知を広げる
という策を取るのがいいということです。

話の中で太田さんは、
多くの人は普及の順番を「認知→人気」だと思いがち。
しかしそれは元々ある程度の認知力があるコンテンツでしか使えない"王者の策"であり、力なきものの策ではない。
とのことをおっしゃっていました。

また、太田さん自身はこのことをAKB48のプロデューサーである秋元康さんから教わったらしく、AKB48の実例はすごくわかりやすかったです。

AKB48は、元々秋葉原という限られた地域の地下にあるシアターでのみライブを行うアイドルでしたが、そこに熱狂的なファンが毎晩のように集まることによってその人気自体が話題となり、全国にその名を広げることに成功したそうです。

まさに、「人気→認知」。
ここでいう人気については、決してたくさんの人が集まる必要はなく、少人数でもそこにとてつもない熱量の人がいればいいということなのだと僕は解釈しています。

力無きものの策。
男子新体操ならどうしたらいいのかを、競技人口の増加とファンの増加の2つの面から考えていきます。

競技人口の増加

競技人口を増加させたいと思った時、男子新体操が取り組むべき「人気のコンテンツ」はなんだろう。

そう考えたとき、僕の頭に浮かんできたのは「体操教室」でした。

体操教室は、子どもの習い事ランキングの上位に位置するコンテンツ。
器械体操や新体操などの専門的な教室ではなく、鉄棒や跳び箱、マット運動などを満遍なくこなしながら幼少期に必要な運動体験を培っていくタイプの一般的な体操教室はいつの時代も人気です。

であれば、それを基軸に選手人口を増やしていくのがいいのではないかと僕は考えています。

男子新体操というワードを一切出さず、ただただ体操教室を行い、
「聞いたところによると、いつも子どもがお世話になっている先生は男子新体操というスポーツの出身らしい。なんじゃそりゃ。」
という環境を体操教室人気を利用して作り出すのです。

教室の力が徐々についてきたらプレスリリースなどを利用して地域メディアに取り上げてもらい、「今〇〇で人気の体操教室!教えているのは元男子新体操選手」
なんていう記事を書いてもらうこともできるでしょう。

そして、ある程度教室が安定してきたら、そこに男子新体操教室を作り、体操教室の中からやりたい人を集める。
100人いるうち5人でも10人でも男子新体操に興味を持って始めてくれればそれでいいし、最初は本気で競技をやらずとも新体操の手具を使って遊んでいてもいいと思います。

大事なのは、新体操教室単体で人を集めるのではなく、体操教室の人気に乗っかりながら新体操に触れる機会を作ることではないかと僕は考えています。

この策を全国にいる1500人の選手+もっと多い数のOBがそれぞれの地元で行ったらどうでしょう。
全国に男子新体操選手の卵がたくさんたくさん生まれるはずです。

そこを目指すには、自分の体操教室を開けるだけの知識と指導力が必要です。
教室を管理する力、地域に広める力、お客さんと話す力、子どもに指導する力…
これらを学生のうちに練習しておくことができれば、卒業後も新体操に関わり続けることができるでしょう。

大きな力を持つ体操教室はいくつかありますが、地域に密着しながらそれらとの差別化を図ることはそんなに難しくないと思います。

ファンの増加

ファンの増加において「人気→認知」を考えるのであればエンタメ(パフォーマンス)は外せないでしょう。

僕が思いついたのは、パフォーマンスグループを作りそれを有名な人にプロデュースしてもらうことです。

新体操のパフォーマンスグループを作っても、それ単体だけで活動していては大きな舞台に上がるまでに時間・労力・コストがかかりすぎます。
であれば、ファンにパフォーマンスを売る前に、プロデューサーや舞台監督などにパフォーマンスを売り、その中で認めてくれた人の力を使ってファンに売っていく方が早いのではないかと僕は思います。

そしてそのパフォーマンスは先ほど同様、男子新体操というワードを出す必要はないし、男子新体操の動きをする必要もありません。
自分たちの魅力を最大限活かせるものを研究したらいいと思います。
それらを何かしらのイベントや舞台で知った人がファンになり、
「私が好きなこのグループなんだけど、みんな男子新体操っていうスポーツの出身らしい。どんなのなんだろうね。」
ってなる環境を作れればいいと思います。

そして、何より大切なのはそれをパフォーマー自身が理解していること。
いくらプロデューサーに力があって頑張って売り出してくれたとしても、本人たちがそれを理解していなければグループとしての活動にまとまりが生まれません。

先ほど、体操教室の運営にはその知識と指導力が必要と言いましたが、それと同じようにパフォーマーを目指す現役選手にはファンマーケティングなどを勉強してもらうことが必要でしょう。

パフォーマーがパフォーマンスだけをしていればいいのは、僕がいるシルクドソレイユのような大きな力を持つ組織が管理している場合のみ。
そうでない場合は、パフォーマー自身が自分を売り出す術を学び、研究し、実行していく力が必要だと思います。

必要なのは教育と仕組み

ここまで書いた2つの視点からの策を実行するには現役選手の教育と一つのパターンとして定着させるための仕組み化が必要です。

現役選手が引退しても新体操界から離れずに次世代の教育やパフォーマンスを続けるためには、それをするための知識を現役中に授けることが必要。
そして、その知識の必要性に気づかせるためには、それらを1つの卒業後の進路として確立させなければいけません。

学びは学んだものを使える場所が見えて始めてやる気が出るものであり、それが見えなければ知識の定着も叶いません。

つまり、教育、教育といってただただ知識を押し付けるだけでは何も進歩が生まれません。

そのため、誰かOBがその道を作り、活躍し、その姿を実例として現役選手に見せながら「一緒にみんなで頑張っていこうよ!」と具体的な卒業後のイメージをわかせてあげなければいけません。

だから僕は日本に帰ったらそれをしたいと思っています。
現役選手のうちに体操教室を開業できるノウハウを。
現役選手のうちにパフォーマンスでファンを獲得できるノウハウを。

まだ道の途中ではありますが、株式会社bakutenは道作りのためにここ2年ほど走り続けてきました。共有できるノウハウもそれを教える方法も少しずつ獲得してきています。
ボランティアや善意ではなく、職業として男子新体操に関われる方法を見つけかけています。

まだまだ時間はかかるかも知れませんが、ビジョンと熱意を共有しながらいろんなチームと協力して普及に貢献していけたらなと勝手に僕個人は思っています。

以上、太田雄貴さんのセミナーから学んだことを僕なりに男子新体操に置き換えてみた結果の報告noteでした。

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ではまた次回!


井藤 亘(いとう わたる)
Cirque du Soleil 「Drawn to Life」
男子新体操アーティスト🤸‍♀️

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KYOMEIプロジェクト

名古屋市立原中学校ー埼玉栄高校ー青森大学ーシルクドゥソレイユ

3歳から男子新体操を始め、中学校3年生時の全日本ジュニア出場をきっかけに、埼玉栄高校へ進学する。
骨折などの大きな怪我を克服しながら3年時にインターハイで団体優勝し、名門・青森大学へ進学。
大学では、全日本選手権・全日本学生選手権ともに4連覇を果たし、4年時には主将も務めた。
卒業後は、幼児・小学生を対象にスポーツ指導をしていたが、パフォーマーとしてイベント出演したことをきっかけにシルクドゥソレイユのオーディションを受け合格し、渡米。
現在はパフォーマー業を行いつつ、男子新体操の普及を目標に様々な活動に取り組んでいる。

【実績】
・インターハイ団体優勝
・全日本学生新体操選手権大会団体4連覇
・全日本新体操選手権大会団体4連覇
【出演】
・東京テレビ「年忘れにっぽんの歌」鳥羽一郎コラボ
・TBS「音楽の日」三浦大知コラボ
・BS11 ドキュメンタリー「ザ・チーム 勝利への方程式」
・Avex主催「STAR ISLAND」サウジアラビア公演
・大阪ガス主催「10歳若がえりセミナー」講師
【資格】
・中学、高等学校第一種教員免許状
・ビジネスアスリート2級
・日本スポーツ協会公認スポーツリーダー

20年以上続けてきた「男子新体操」というスポーツをより多くの人に知ってもらうため、日々活動をしています!! 頂いたサポートは、今後の活動費、またはその勉強のために使わせていただきます!🙇‍♂️✨ また、サポートとともに記事のリクエストも募集しております。