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【ニッチなプロダクトのマーケティングを考える】10万円超えの罠センサーは高いか(後編)

前編ではスマートトラップのマーケティングを考えるうえでのコンセプトについて書きましたが、後編ではコンセプトを実現するにあたって取捨選択したものについて書いています。コンセプトも異なるからこそ、競合とは異なる取捨選択するからこそ、「使ってちゃんと得するものを一緒に作る」といったコンセプトが実現できます。


取捨選択1「捕獲単体でなく捕獲~加工~流通のスコープで事業をみる」

スマートトラップは主に捕獲作業を効率化するためのプロダクトです、一方huntechではおいしいジビエを食べたいとの下心から始まっているため、捕獲だけでなく川下の加工~流通や付帯する書類作成業務等の支援も事業のスコープとしてみています。そのため、huntechとしてはスマートトラップだけに収益を頼る必要はなく、加工~流通や付帯業務の支援といったサービスを含めて展開した時にバランスすれば問題ありません。

スマートトラップのみを展開する初期段階では収益的には厳しいものの、担い手の減少を背景に業界としてもICT活用機運の高まりを感じる中、このような技術普及を優先すべきと判断し本体購入価格(=売価)を大幅に抑えることにしました。
※売価の1~2割程度といわれる量産製品における原材料費からすると、スマートトラップの原材料費が売価に占める割合は実際めちゃくちゃ高いです苦笑


取捨選択2「できるだけシンプルにありものを使って作る」

スマートトラップでは「現場に向かう必要があるイベントの検知」にフォーカスしています。もちろん監視カメラを見ることでもそのイベントはわかりますが、カメラを搭載してしまうとカメラそのものやカメラ制御にともなう部品・プログラムが必要になるため、大きくコストが上がってしまいます。そのため、「現場に向かう必要があるイベント=罠の作動」ととらえ、罠の作動を「0」か「1」で物理的に判断可能な仕組みでの実現を目指しました。(現行版においては磁気センサーを用いて0/1を判断)

また、スマートトラップは屋外で使用するため、検知の仕組み以外にも重要なものとして耐久性を持ったケースが必要になります。ケースを作ろうものなら金型製作だけで数十万円~、そのほかに金型の企画・デザイン・製図にかかるコストが発生するため、これらだけで少なく見積もっても軽く100万円は超えてきます。別途、一個一個の製造コストが2~3千円程度発生するため、千個作ったとしてもケースだけで1個当たり3~4千円もかかってしまうことになります。(現行版で使っているケースは汎用品を一部加工したものでだいたい1個当たり2千円程度)

カッコよさを求めるものであればオリジナルのケースも必要かもしれませんが、屋外に設置し手元に置いておくわけではないことなどを考えると、ケース以外の部品も含めてなるべくありもの(既にある汎用品)を使って作るようにし、原価や製造までにかかる時間を節約することにしました。


取捨選択3「ユーザーに見つけてもらって声をかけてもらう」

スマートトラップを利用される方は鳥獣被害に悩む自治体の方は、捕獲作業の負担を軽減したい猟師の方が大半を占めます。潜在的な利用者を含め北は北海道から南は沖縄、またお世辞にも交通の便がいいとは言えない場所であることが多いです。

新しい取り組みだからこそ、導入への障壁もありゼロから理解をしてもらうには丁寧にコンタクトが必要。huntechへの問合せの中にはたまに「話を聞きたいんだけど(もちろん来てくれるよね?東京からの旅費はもちろん自費で)」というのもありますが、一度の出張の旅費だけで3~5万円、導入までにこれが複数回、そもそもの人的リソースも足りないだけでなく、ちゃんと得する価格を提示するなら数十台単位で買ってもらわないと旅費の回収すらできません。

このようなリソースの制約と得する価格を提示したいという意図に加え、ユーザーの方にはスマホが利用できる程度のリテラシーや新しい取組への柔軟な姿勢が必要だと考えました。そこでプロダクト自体も一見してわかるようシンプルな中身とするとともに、何度も高い旅費を払って出張することなく「積極的なPR⇒ユーザーが発見⇒ユーザがWebから問い合わせ⇒テレカン等でのやりとり⇒契約」をベースの動線として設定し、大勢で何度も出張にいくといった過度な営業費用の支出も抑えることにしました。
※ちなみにご相談によっては現場サポートも行っています。


取捨選択4「改善を前提とした継続的なかかわりを持つ」

継続課金、サブスクリプションモデルがもてはやされていますが、正直なところ売り切ってしまう方が楽です。お金はもらい保証期間が過ぎさえしてくれれば、使われようが使われまいが利益は確定。しかし、利用者にしっかり得してもらうためには、使っていただかないと意味がありません。

使い方になかなか慣れなかったり、機能に対して不満があったり。使われないであろう理由をあげるときりがありませんが、長く使っていただく方がより得もしてもらえるだろうし、過渡期にある業界において新たな仕組みをどんどん提案していきたい。結果、得したと感じてもらえればそこで利益を共有してもらう。

改善・サポート体制の維持や開発にかかる投資の回収期間が長引くといった影響も考えられますが、当時競合ではほとんどなかったサブスクリプションモデルをとることにしました。


発展途上のサービスを作り上げていくためには利用者の方の協力は必要不可欠です。マッチングサービスやPFを展開するWeb系ベンチャーの多くが「利用者の得」と「提供側の機能改善と事業継続のモチベーション維持」のためにも「拡大時の展望を胸に持つ(スコープを広く見る)」、「既存サービスをまねる(シンプルにありものを使う)」、「Web広告(見つけてもらう)」、「サブスクリプションモデル(継続的なかかわりを持つ)」といった考え・仕組みを持っているんだと思います。


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