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【ニッチなプロダクトのマーケティングを考える】10万円超えの罠センサーは高いか(前編)

お弁当箱型の試作品を作り始めた一方、世の中に展開していく際には売り方(いわゆるマーケティング)の検討が必要です。狩猟用の罠の監視センサーという超ニッチなところにも探すと先人はいます。「捕獲~加工~流通の改革を一緒に実現する」というコンセプトのもと、競合とは異なる考え方で値付け・売り方を行っています。前編では競合製品を踏まえたコンセプト、後編ではコンセプトを実現するために選択したこと書いていきます

10万円超えでも受け入れられていた罠監視センサー

継続的なサービスとしてスマートトラップを提供していくためにも、きちんとビジネスとして成立させる必要があります。そこで、お弁当箱版スマートトラップを作り始めるとともに、売り方の参考にと似たようなものがないか調べてみることにしました。

業界情報はあれだけ調べてもたいした情報が得られなかったにも関わらず、意外と出てくる競合情報。

最初に見つけた競合製品A。特定小電力無線(トランシーバーとかで使われている通信規格)を利用しているもの。そのため見晴らしのよいところで設置場所から2km、実際の環境下では100mくらいまで近づいてはじめて設置状況がわかる。売り文句は「森の奥に行かなくても車道から罠の状態がわかります。」。結局近くまでは見回りに行く必要あるんかい。1罠当たり初期費用2~3万円で監視できるのが救い。

次に見つけた競合製品B。罠をカメラが監視、画像を基に獣種や個体の大きさを判別して罠が自動で作動、捕獲検知の通知に加え捕獲個体の画像を携帯から確認可能。しかもあの大手IT事業者が手掛けて実証中!?先行されているうえに技術的にも太刀打ちできる気がしない。。。ん?待てよ、獣種がなんであれ回収に行くことは変わらない。それに、大手の人件費でこれだけの技術をかけたら、製品化されたとしてもめちゃくちゃ高いんじゃ。
※のちのち聞いた話によると導入費用は最低数百万円~(1罠当たり数十万円の初期費用)だったそう。

最後に見つけた競合製品C。罠を磁気センサーで監視、磁気センサーが作動を検知すると携帯に通知メールが届く。大手通信グループ会社が提供し既に自治体での導入実績もそれなりにある。やろうとしているものに一番近い、そして実績も含め信頼性もある。試作品づくりを始めたばかりにもかかわらず、大きく方針転換をする必要があるんじゃないかと覚悟しました。

価格を見るまでは。

初期費用十数万円、継続利用には別途通信料も発生。「え、高くない?」


コンセプトは「使ってちゃんと得するものを一緒に作る」

原点に振り返り、どういったものを作ったらいいのか考えました。作動後すぐに見回りに行ければジビエへの利用率もあがる(捕獲後死んでしまっていたら食肉に利用はできない)というメリットもあるものの、最大は見回りの負荷の軽減。

イノシシがかかろうが狸がかかろうが、またそれが成獣だろうが幼獣だろうが現場にいかなければいけないことに変わりありません。また、くくり罠がうまく足にかからなかった、ハコ罠の扉がなにかの拍子に落ちたなど捕獲の出来ていない作動である「空はじき」だとしても再度仕掛けなおす必要があるため、現場に向かう必要があります。つまり、獣種別といった詳細な情報でなくとも、現場に向かう必要があるイベントさえわかれば見回りの負荷は軽減できると考えました。競合製品Cもおそらく同じような考え方に沿ったものだったのでしょう。

改めて競合製品Cの価格。製品の部材コスト、部材の加工や組立コスト、システムの運用コスト、代理店へ支払う販売手数料、開発にかかった投資回収・・・etc。最初は高いと思ったもののコストベースで見ると事業を成立させるためには、わからなくはない価格です。ただ、日々の見回りにかかる負荷を仮に時給千円で計算すると元が取れるのはCの製品寿命のそのまた先。利用者がしっかり得する価格で出すことを目標にしようと考えました。

一方、モノづくりを学びながら開発を進めるということ、また業界では一般的でないため適宜要求が追加・修正が見込まれることから、最初から完ぺきなプロダクトは作れないだろうということも理解していました。そういった意味でも利用者の方には、「サービス提供者とお客様」といった関係ではなく、機能・管理項目の改善要求や新たな使い方の提案をしていただける「プロダクトを一緒に磨くパートナー」として関わっていただきたいという想いも持っていました。


競合も競合なりの考えがあった上でプロダクトを作り販売しています。しかし、ニッチな業界であればあるほど競合も少ないため、改めてそのコンセプトを見てみると本当に利用者のためを思ってのものなのか怪しいものも多いです。また、コンセプトはよくても実現方法がなければ意味がありません。後編では、コンセプト実現のための取捨選択の中身について書く予定です。


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