井上 航(Wataru Inoue)

運動を通じて障害予防が当たり前になる社会を目指し活動。パーソナルトレーニング指導、運動…

井上 航(Wataru Inoue)

運動を通じて障害予防が当たり前になる社会を目指し活動。パーソナルトレーニング指導、運動指導者の養成も行なっています。身体の適切な使い方や日々の気づきをシェアします。 理学療法士、予防運動アドバイザー、CSCS、ヨガ・ピラティスインストラクター、側弯トレーニング認定トレーナー

最近の記事

身体の痛みをどう評価するか

運動指導を日々行う中で、痛みの訴えのある方も多く見えます。 特にパーソナルトレーニングを行なっていると、痛みの解決をニーズとされる方も多いです。 今回は私が普段痛みを訴えられた方に対してどのように対応しているかについて、お伝えしたいと思います。 【痛みの評価について】まず、痛みの評価についてです。 基本はクライアントさんの訴えを聞きながら、次のような点を意識して情報を集めます。 ・痛みの程度はどのくらいか (10段階の数字で答えて頂くことが多いです) ・痛みが出るの

    • トレーナーが知っておきたい関連痛の話

      運動の指導をしていると、何らかの身体の痛みなどを訴えられてくるクライアントさんもいらっしゃると思います。 その原因としての多くは筋肉や骨格の問題であるのですが、ケースによっては内臓に由来するものや、その痛みの裏に重大な問題が隠れている場合があります。 しっかりとリスク管理を行う上でも押さえておきましょう! 1.関連痛とは関連痛とは、身体のある部位が原因で起こる痛みをその部位とは離れた別の部位で感じるという現象のことです。 主な原因としては内臓であるのですが、実際に痛み

      • 関節の可動域について考えてみる

        私たちの身体を動かす部位である関節ですが、ヨガやピラティスを行なっているとこのような質問をよく受けます。 どの程度まで動かしたら安全なのか ストレッチは痛みを我慢しないと効かないでのはないか そもそも関節が緩い人にはどう対応すれば良いか    など 今回は関節の構造を踏まえて、どのように関節の可動域を捉えれば良いかについて考えていこうと思います。 【関節の構造】まず関節の構造についておさらいしてみましょう。 こちらの記事でもあげていますが、今一度確認です。 靭帯  

        • 歩きからヒトの健康を考える

          健康のためにウォーキングをした方が良いということが当然のように言われていますし、病院などに行っても運動不足なので歩きましょうと伝えられていることも多いです。 そんな歩きについてですが、正しく認識できていないケースも非常に多く、その結果として体に不要なストレスがかかり障害につながっていってしまうこともあります。 皆さんは日々歩きについてどの程度意識されていますでしょうか。 今回はそんな歩きについてをテーマにお伝えしていきます。 1.歩くことにより起こる身体の変化歩くことは

        身体の痛みをどう評価するか

          呼吸に関わる筋肉

          今回は呼吸に関わる構造として、骨格に続いて筋肉に関してお伝えしたいと思います。 呼吸に関しては吸うときに主に働く筋肉と吐くときに主に働く筋肉がそれぞれあります。 主な吸気の筋肉 ・横隔膜 ・斜角筋群 ・肋間筋群 主な呼気の筋肉 ・腹筋群 ・胸横筋 ・肋間筋群 では、それぞれについて細かく見ていきましょう。 1.横隔膜 横隔膜は息を吸うときの70〜80%を担っていると言われており、呼吸に関わる最も重要な筋肉といっても過言ではありません。 横隔膜は3部構成 ・下部の

          呼吸に関わる筋肉

          呼吸に関わる骨格

          解剖学について難しいと感じられるインストラクターや運動指導者の方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。 ボディーワークを行うにあたって、呼吸の理解は非常に大切です。 まず今回は呼吸の基本的な話として、呼吸にはどのような骨格が携わっているのかについてお伝えしたいと思います。 呼吸に関わる骨格主に呼吸に関係する骨格は以下の通りです。 ・胸郭(肋骨、胸骨、胸椎) ・肩甲骨 ・肩関節 実際に呼吸運動に関わってくるのは胸郭になりますが、肩甲骨や肩関節についてはそれぞれ胸郭の

          呼吸に関わる骨格

          胸椎を柔らかく動かす重要性

          首や腰の不調などといった、いわゆる背骨に関わる問題で苦労している方は多いのではないでしょうか。 実はこの問題の多くに関わってくる部位が胸椎になります。 今回はこの胸椎についてフォーカスを当てていきます。 胸椎の構造胸椎は脊柱の中で、肋骨と関節を作っている部分です。 そのため左右肋骨の数と同じく12個の椎体で構成されています。 形態としては、後方に伸びる棘突起が頸椎や腰椎と比べると下方向に向かって伸びています。 そのため、脊柱の生理的弯曲の中での後弯を作っている部位にな

          胸椎を柔らかく動かす重要性

          身体の左右差について考える

          人の姿勢や動きを見る上で左右差を見るという視点は誰しもが持つ部分ではないでしょうか。 左右差があればできる限り修正したいと考えることも多いと思いますが、その点についても考察していきたいと思います。 胸郭の構造上の左右差私たちの体にはそもそも構造上左右差があることを考慮しなければなりません。 まず内臓に左右差があるということについて見ていきます。 心臓は中心からやや左側へ位置し、それにより肺は左の方が右よりやや小さくなります。 また、肝臓も右側でそれにより横隔膜の高さ

          身体の左右差について考える

          関節の構造について

          身体を痛めてしまうことは誰もが避けたいと思いますが、その痛めてしまう箇所の多くが関節です。 関節の構造を知らずに、身体を無理に使ってしまう結果、様々な痛みなどが発生してしまうことも多いです。 そこで今回は関節の構造について整理してお伝えしたいと思います! 関節の構造 靭帯  ストッパーとしての役割を持ち、関節を安定させる。  強靭な結合組織で、主にコラーゲン線維  硬さは遺伝の影響も受ける  緩くなってしまうことの問題の方が大きい(関節弛緩性:Laxity) 関節包

          関節の構造について

          膝はねじらずに使う!そのためにすべきことは

          膝の痛みで困っている方は非常に多いです。 今回はその膝の痛みについて、膝のねじれという視点から見ていきたいと思います。 膝関節の構造膝関節は人体の中で最も面積の広くて大きい関節であり、二本の足で立つ上で非常に負荷を受けている部位になります。 厳密には膝蓋骨、大腿骨、脛骨からなる関節で、脛骨大腿関節と膝蓋大腿関節で構成されています。 主に膝関節の運動は大腿骨と脛骨の間の脛骨大腿関節で起こっています。 膝の痛みと膝のねじれこの膝の痛みが生じる原因には様々ありますが、そのう

          膝はねじらずに使う!そのためにすべきことは

          「歩くこと」の重要性

          リハビリの現場では当然高齢者の方を相手にすることが多いのですが、同じぐらいの年齢の方でも介護の必要な方とそうでない方がはっきりと分かれています。 特に元気に歩き続けている方たちに話を聞くと決まって出てくる言葉があります。 「とにかく、たくさん歩くようにしています。」 当然といえば、当然なのかもしれませんが、この「歩く」ということがいかに重要かということについて改めて深掘りしたいと思います。 ヒトはどんな動物か歩くことの重要性について考えていく上で、ヒトというのがどうい

          「歩くこと」の重要性

          身体が変化するきっかけとは

          普段運動をされていると、なかなか結果が出ないこと、効果が現れるのが難しいケースも多いのではないでしょうか。 今回は、身体の状態や動きが変わっていくことやそれに伴う症状の緩和のためにどういった考え方をしていくべきかについての私見を述べたいと思います。 原因を追求するまず第一に考えるべきは原因を追求することです。 言ってみれば、十分な評価に基づいて運動指導をするということですが、このときに見えた問題点がその根本的な原因まで落とし込めているかどうかが非常に重要と感じています。

          身体が変化するきっかけとは

          前捻角をチェックする方法

          先日の記事では大腿骨の前捻角とはそもそも何か、といったところから、この変化があることによって何に影響するのかについて書いてみました。 今回は、この前捻角をチェックする方法をいくつか紹介したいと思います。 Craig's test(クレイグテスト)直接大腿骨を触れながら大腿骨の前捻角をチェックする方法です。 手順は次の通りです。 ①被験者はうつ伏せになり、検査側の膝を曲げる ②検査者は大腿骨の大転子を触診する ③そのまま下腿を左右へ動かし(股関節の内外旋)、大転子が最も

          前捻角をチェックする方法

          大腿骨の形の個人差について

          私たちの骨の形は基本的には皆教科書通りの形であり、基本的には一律であると無意識に考えがちだと思いますが、実際は本当でしょうか? 例えば私たちの顔も一人一人違いますが、これは顔面の骨格に個性があるからと言えるはずです。 このように、私たちの骨格にはそれぞれ個性があり、これを骨格特性と呼んでいます。 今回はそのうち大腿骨についてお話ししたいと思います。 【大腿骨の基礎】大腿骨は股関節を形成している脚の骨であり、以下の部分で構成されています。 ・大腿骨頭 ・大腿骨頸部 ・大

          大腿骨の形の個人差について

          シンプルに考える

          どうしても医療関係をはじめとして専門的な分野に関わる勉強を進めていくと、物事を複雑に考えがちになると思います。 専門的な難しいことを知っている方がすごい 素人にはわからない世界で話をしている 複雑なことをたくさん考える 私自身もこのようなマインドで過ごしていた期間がありました。 特に以前の職場は脳外科がメインでしたので、なかなか理解が難しい脳神経の知識やその障害の後遺症に対してのアプローチを日々模索していました。 また、週末には沢山の講習会で知識や技術を学びましたが、

          シンプルに考える

          脚長差と側弯症

          普段運動指導を行っている中、側弯症をお持ちの方向けのトレーニングも提案させて頂いています。 以前も側弯症のトレーニングについては取り上げさせて頂きました。 そんな中、やはり側弯症の方で脚の長さの左右差(脚長差)がある方が非常に多いため、そのことについてお伝えしたいと思います。 【脚長差を有することによる背骨への影響】まず、そもそも私たちは常に重力の影響を受けています。 普段立って歩いている時の姿勢が仮に崩れているとすると、特定の場所にストレスがかかってきたり、その結果