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『蛙の恩返し』

朝食を食べてくつろいでいると、家族がやって来て嬉しそうに「お庭に蛙ちゃんが来てるよ!」と教えてくれた。慌てて一階の和室に向かい、窓から覗くと、いた。淡いグリーンの大きな蛙が。

想像していたよりずっと立派だった。ぽっちりと指先に乗る大きさかと思ったら、なんのなんの、片手にどっしりのしかかりそうな重量級が木の枝に停泊している。

「すごいねぇ、かわいいねぇ」
「綺麗な色してはるねぇ」
「ほんまやねぇ、いい色やねぇ」

突然の来客に色めき立つ親子。

そういえば昔、川で捕まえたおたまじゃくしを一匹、水槽で飼っていたことがあった。脚がにょきにょき生えて小さな蛙になると、人差し指の先に座って愛らしい姿を見せてくれた。艶やかなエメラルド色の肌をしていて、「エメちゃん」と名付けて可愛がったのは、小学生時代の夏のことだっただろうか。

エメちゃんは暫くしないうちに川に返すよう言われて、家族と共に捕まえた場所まで連れて行った。なんにもわからないエメちゃんは、ぴょこぴょことすぐにどこかへ行ってしまった。寂しかった。

二十余年の時を経て目の前に現れた蛙は、ちょうどエメちゃんみたいな緑色をしている。一日中ほとんど動かないので、もしかしてこのまま夜中に挨拶に来るんじゃないかと盛り上がった。

「こんばんは。あの時の蛙です」
「え、エメちゃん……!すっかり大きくなって」
「いつぞやはお世話になりまして……これ、つまらないものですが」
「かえるサブレ?そんな、気を遣わなくてもいいのに。ささ、あがってちょうだい」
「いえ、わたくし先を急ぎますので、これで……」

三つ指をついてお辞儀する蛙。

そんな夜が来ることを夢見て眠った。
蛙は指四本だけど。



HAPPY LUCKY LOVE SMILE PEACE DREAM !! (アンミカさんが寝る前に唱えている言葉)💞