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選抜試験におけるミス防止(その1)

これまで、いろいろと人材選抜について取りあげて説明してきましたが、今回から3回に分けて、「選抜試験におけるミス防止」について考えていきたいと思います。(Mr.モグ)

選抜試験におけるミス防止

近年、大学入学試験、高校入試、中学入試といった各種の入学試験や、資格試験などの選抜テストにおけるミスが大きな問題となっています。
ちなみに、2000年(平成12年度)から 2018年(平成30年度)までの大学入試でのミスの年度別データは、図のようになっており、ミスの件数は、2000年度の33件から2018年度の390件と大きく増加しています※。

大学入試におけるミス

※このミスの件数は学部入試の例であり、出題ミスや合否判定ミスが含まれていますが、募集要項のミス等は含まれていません。

当然のことながら、担当者はミスが生じないよう細心の注意を払いつつ、慎重に行っているのですが、問題の漏洩を防ぐ必要があることから、(試験問題作成者は当然ですが)試験に関与する者は限定され、秘密裏に準備をすることが多いので、結果として、試験に関する人員や、それをとりまく環境などのリソースは限られています。

このことは、朝日新聞・河合塾共同調査(2019年1月20日、朝日新聞デジタルより抜粋)でも伺い知ることができ(図2参照)、入試ミスの理由について、
〇「チェック体制に不備」が「とてもそう思う」「そう思う」の合計で79.1%
〇「教員の多忙化」が「とてもそう思う」「そう思う」の合計で78.6%
とそれぞれ約8割に近いのに対して、
〇「教員の作問能力の低下」は「とてもそう思う」「そう思う」の合計で32.6%に過ぎません。

入試ミスの理由


すなわち、入試ミスの主な原因は、(問題の漏洩を防ぐ観点から)限定された人員(限られたリソース)による影響が多いと考えられるのです。

他方で、我が国においては、特に、試験に対する世間やマスコミの関心は高く、試験ミスに関しては厳しい状況にあります。

なお、試験ミスの内容については、西郡※が、1990年1 月から2007年12月末までの、大学における「入試」「ミス」に関する新聞記事507件をもとに、「出題関連ミス」「試験実施・合格発表手続きミス」「合否判定ミス」の三つに分類しています。

※ 西郡大、(2008)「大学入学者選抜における「入試ミス」の分類指標作成の試み」教育情報学研究、7巻、39-48

「出題関連ミス」:出題された試験問題そのものにミスがある事例であり、出題者が意図した正答を導き出せないものや、単純な誤字・脱字、出題範囲の逸脱などが含まれている。(これらに該当する件数は、346件(約68%))
「試験実施・合格発表手続きミス」:入学試験を実施時における試験監督者や関係職員等による人為的な手続きミスを含む事例であり、問題用紙の配布ミスや、回答用紙の回収ミスなどが含まれている。(これらに該当する件数は43件(約8%))。
「合否判定ミス」:出題ミス、採点ミス、事務手続きのミスなどが原因となって、合否判定に影響を与える事例であり、追加合格者を出す場合や複数年に渡って合否判定を誤った場合など、社会的影響の程度が大きい事例。(これらに該当する件数は118件(約23%))

これらの試験ミスを、試験実施段階別に整理すると図のようになり、試験の各段階(受付段階、第一次試験段階、結果処理段階など)に様々なミスが潜んでいることがわかります(図3参照)

試験実施段階別のミス

このように、試験ミスは、いろいろなところに潜んでおり、一度そのミスが生じると、受験者に大きな負担を与えるとともに、試験実施側も(信頼喪失なども含め)大きな損失を受けることになるのです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございます。次回は、「選抜試験におけるミス防止(その2)」として、「出題関連ミス」の防止策について,さらに考えていきます。(Mr.モグ)

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