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70年間変わらないことが凄い!「宇野亜喜良展2024」

宇野亜喜良の展覧会を東京オペラシティに観に行ってきた。
お客さんの9割は女性で、20代から(おそらく)70代までと幅広かった。
年齢は関係なく、女性の中の深いところに響く何かが宇野亜喜良にはあるようだ。

一番初期のカルピスの宣伝部時代の仕事


カルピスの広告の三年後にはもう「宇野亜喜良」

20代の初めにはすでに誰が見ても「宇野亜喜良」という個性的な作品が出来上がっている。
そこから90歳の現在まで、作品のタッチはほとんど変わっていない。
最初から完成されていたので変化する必要もなかったのかもしれない。


ポスターの原画の絵柄のサイズは10cmくらい

ポスターとその原画が並んで展示されているのだが、原画が思った以上に小さくて驚く。
その大きさが10cmもなかったりする。
それを拡大してポスターにして、あの美しさ。驚異的な画力だ。

左の小さな絵が右のポスターの原画

また、イラストではなく写真をディレクションしたマックスファクターの新聞広告が素晴らしかっった。
50年以上前の仕事とは思えない斬新で美しい広告だ。
今なら雑誌の表紙などでよく見る手法だが、商品名の「PAN-CAKE」をモデルの脚で隠してしまっているところなど革新的だ。
イラストではなく写真のディレクションだからこそ、宇野亜喜良のエッセンスがより感じられるように思える。
それに、何の束縛もなく自由に描いた作品よりも、企業の広告のように依頼された仕事の方がよりクリエイティブに思えるのは私だけだろうか。


今見ても斬新で新鮮なマックスファクターの新聞広告


特にこの広告は素敵だ

私は、宇野亜喜良の作品の中でも、ペンで執拗に細かく描き込まれたちょっとグロい耽美的な作品は少し苦手だ。
さらっと鉛筆やクレヨンで描いて水彩で色を彩色した軽くて明るめの作品が好みだ。
無表情な少女と一緒に猫が描かれているともうたまらない。かわいいの完成形の一つだ。





2017年の作品だから83歳の仕事!可愛すぎる!
圧倒的なポスター群

ただ胸もまだ膨らんでいないような少女の裸の絵など、今の価値観で見てしまうと嫌悪を感じる人もいるかもしれない。
事実、その少女たちはどことなく妖しい色気を醸し出している。
しかし同時に無垢な存在であることも感じられる。

今回の宇野亜喜良展を観て思った。
善か悪か、正しいか正しくないか、美しいか醜いか、それは時代の価値観に左右される要素が大きい。
そういった二元論に収まりきらず、時代性を突き抜けたところに存在するのがアートなのかもしれない。


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