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じいちゃんの左手 その22

学校から帰ってくると 
縁側には いつも 群青色の市場帽子を斜にかぶった じいちゃんがいた 
右手にワンカップ 左手には “わかば” 
田んぼの案山子のように 僕の問いに 何でも答えてくれた じいちゃん
今思えば ほとんど 的外れだったけど 心は いつもポッカポカ
そんなじいちゃんと あの縁側が 今もあったら・・・ 
きっとこんな 会話になっただろう・・・

『ホワイトデーとサンジョルディ』

Haaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa 
と僕・・・

「おい お主 何をため息ついてんだ
 ため息一つで 茶碗一杯の米が 消えるぞ!」

そ・・・ そうなの・・・ 

「でもね じいちゃん
 もうすぐホワイトデーだから みっちゃんに
 お返ししなくちゃいけないんだけど 何も思いうかばないだ
 どうしよう・・・
 あっ・・・ホワイトデーっていうのはね・・・」
説明しようとした僕を 左手で制した じいちゃん
おっと!!
わかばの灯が 鼻先につきそうになって 慌てて避ける僕

「馬鹿にしちゃ いかん! それくらいわかっておる
 チョコのお返しじゃろ!!」
たばこのことなんか まったく お構いなしのじいちゃん!
どや顔で ワンカップを ゴクリ!

「それにしても 外人は おもしろいのぉ
 バレンタインさんだから バレンタインデー 
 サンジョルディさんだから サンジョルディデー
 ホワイトさんだから ホワイトデー(※違います)
 日本でいえば 弘法大師デーに 安倍晴明デー 
 みたいになっちゃうなぁ・・・ 言わんけど!」

Pufaaaaaaaaaaaaa
と煙を吐く じいちゃん 
となりで ごほっ・・・ と咳き込みながら
ホワイトさんだから ホワイトデーなのと 驚く僕(※違います)

「そうだ ホワイトだから 米!持ってけ うちの米は最高だから」
と じいじゃん
みっちゃんより お母さんのほうが喜びそうだけど まぁいいか・・・ 

これで 問題解決・・・ 
とその時 ふと 思った・・・ 
じいちゃん そういえば サンジョルディ―ってなに・・・ 


♪ふたりのサン・ジョルディ [1986]宮里久美♪

日本では、1986年に4月23日を「サン・ジョルディの日」と定めて 
いっとき「本を送ろう」運動が 活発に推進されていましたね・・・

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