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じいちゃん

辛かことば多かね、


じいちゃんの亡骸を見て堪えきれなくなって葬儀場の外で泣き崩れていた時にけんおっちゃんが「魚釣りばいけんごとなったね。」って声をかけてくれた。

いつも利己的で要領が悪いけんおっちゃんにおかんが腹を立てるのはわかるけどやっぱおれけんおっちゃん好きだよ。根はあったかくて良いやつなのわかっとるっちゃろ。


参列者に笑顔で挨拶を交わすばあちゃんに
「大丈夫?」と声をかけると
「大丈夫じゃなかごと、なんとか頑張っとぉさね。」と返ってきた。

91歳までじいちゃんと過ごしたばあちゃんのその一言には想像もつかない何かが詰まっていた。そもそも想像がつかなくて何をしてあげられるかがわからなかったから「大丈夫?」と声をかけたのかもしれない。

だからまた顔見せに行くけん
薪割りもいっぱいするし爺ちゃんのお墓もピカピカにして爺ちゃんの代わりに二人が好きな魚ば釣ってくるせん待っとってよ。


納骨の時に母親が泣いた。
「じいちゃん良かったね、やっと大好きな黒島に帰ってこれたね。半年間も病院で辛かったっちゃろ。ゆっくり休んでてね。」

じいちゃん見てるかな
おれは自分の生い立ちを死ぬほど恨んだこともあるけどこんな時は本当にこの母親から産まれた事を誇りに思えるよ。



じいちゃんのこと以外にも辛いことがたくさんあってね、一つの失敗で自分がやってきた事とかも全て否定したくなったり逃げ出したくなったりするっちゃんね。

人に支えて貰っても立てなくなりそうになったり、自分を許せなくなったり、人を傷つけてしまったり、優しくできなかったり。

そんな事ばっかの人生で辛い事が降ってくるのに自分もまだまだポンコツっちゃけどもう少し頑張るけん見とってよ。

まだやれるけん、今はまだこんなもんっちゃけど躓きながらももっと頑張るけん。もっと強くなりたかばってんさ。

もしダメんなりそうやったら黒島に行くけんその時は力貸してよ。


じいちゃん、もう少し甘えたらいっぱい恩返しするけん待っとってね。じいちゃんの分までばあちゃん笑かしに行くけんね。



また釣りでもしようね

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