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記号過程、システム、意味

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人間と自然、人間と機械、人間とAI 対立するふたつのもの それらはなぜ対立するふたつのものになったのか? その答えを「記号過程」という用語を手がかりに考える
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2019年4月の記事一覧

「知らんけど」で想定から逸脱するー読書メモ:郡司ペギオ幸夫著 『天然知能』

 郡司ペギオ幸夫氏の『天然知能』を拝読。ある所で「人工知能と人間の関係」という類の話をする機会があり、なにかヒントをもらえるのではと手にとった。 郡司氏は人工知能、自然知能、天然知能という3つの知能を比較しながら、生命現象(即ち進化)を天然知能による自他の境界の組み換えの営みとして捉える。 知能とは、ある生命の内部と外部を区別したところではじまる、外部から内部への射影(あるいは内部から外部への射影)の関係である。 「誰にとっても共通の唯一の客観的世界」という内的構築物

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「多自然主義」とは? ーヴィヴェイロス・デ・カストロ『食人の形而上学』を読む(3)

最近の人類学の本はおもしろい、というお話。前回に引き続きヴィヴェイロス・デ・カストロの『食人の形而上学』を読んでみる。 ※ もちろん「最近」のものではない人類学の本もおもしろい。特に個人的におすすめしたいのはやはりレヴィ=ストロースの『神話論理』である。 神話論理についてはこちら↑の記事にも書いているのでぜひご参考にどうぞ。 ◇ ヴィヴェイロス・デ・カストロは『食人の形而上学』においてレヴィ=ストロース以前と以後で、人類学の対象がガラリと変わったと書いている。そして

3次元の時空を出る :中沢新一『熊を夢見る』を読む

中沢新一氏の著作『熊を夢見る』を読む。 夢、というのは誰もが経験できるもので、それは確実に「ある」。あるいは「存在する」。 それでいて夢は物のようには存在しない。 「これが夢です」というものを箱に入れて置くことはできないし、フリマアプリに出品したりすることもできない(ただ、夢を売り買いするということは昔から行われてはいた)。  そういう夢で、「熊」を見るとはどういうことだろうか。 リアルな3次元の時間と空間を抜け出るさっそくページを開いてみると次のようにある。 「