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【特別記事】関根健次氏がイラク戦争のクリスマスで見た、恐怖と希望(Turntable Christmas Special裏話)

 道しるべが手掛けるトークイベント「人がつながり生まれる平和―関根健次氏 ピースワイン誕生までの20年【Turntable Christmas Special】 協力:国際平和映像祭(UFPFF)」が12月11日(土)に開催されます。

 イベントに先立ち、今回のテーマである「ピースワイン」誕生につながるエピソードを関根さんの著作『ユナイテッドピープル 「クリックから世界を変える」33歳社会起業家の挑戦』より、ご紹介させていただきます!

 平和を育むワインには、ゲスト関根さんの国籍も宗教も超えた人のつながりを想い駆け抜けた20年が込められています。そしてその20年は、九死に一生を得たイラク戦争での経験の上に成り立っています―。

■平和な世界につながるワインに秘められた、波乱万丈の20年とは

 ユナイテッドピープル株式会社代表取締役関根健次さんにご登壇いただくTurntable Christmas Specialでは、「人と人をつなぐことで世界の課題解決をする」を掲げるユナイテッドピープルが平和につながるワインを生み出す創業20年目までの軌跡に迫ります。


↓イベントチケットサイトはこちら!↓


 ワインが育つ土の色をモチーフとするソイルブラウンのロゴマークには、「国境や国籍、肌の色や宗教の違いを越えてワイン畑、製造者、流通関係者間の友情や信頼関係が醸成される」ユナイテッドピープルワインサイト)ワインを取り扱う情熱が込められています。

 その商品は建国以来一切戦争をしていないサンマリノ共和国産であったり、「世界で最も危険なワイナリー」とも言われるシリア唯一の商業ワイナリーが生産する「東地中海で生産された最高のワイン」など、どれもこれも平和な世界につながるセレクトばかり。当日はこうしたワインに込められた20年の事業の軌跡を紐解いていきます!

 関根さんが世界平和をという壮大なテーマと真剣に向き合う原点は、今もイスラエルとの激しい対立を抱えるパレスチナでした。現地の少年が語った衝撃的な夢とは。関根さんがビジネスで世界の課題を解決することを決意するプロセスとは、どのようなものだったのか。関根さんが平和につながる映画を配給し人をつなぐことで起きた、2021年9月21日ピースデーの「奇跡」とは。

心に秘めた夢がある方、
夢への一歩がなかなか踏み出せない方、
明日をどう生きるか考えている方、
社会貢献の方法を考える方、
激変する経営環境と格闘している方、
そして平和な世界を願う方―。

 様々な方の心に触れるエピソードがある1時間15分です。どうぞお楽しみに!!

■【著作『ユナイテッドピープル』で振り返る】戦時下のイラク渡航計画、生死を分けた決断

 オンライン募金サイト「イーココロ!」を運営し始めた2003年、アメリカは大量破壊兵器疑惑を理由にイラクとの戦争に突入し、イラク戦争が勃発します。当時の関根さんは憤りを隠せませんでした。

 二○○三年一二月、会社の状況は危機的だったにもかかわらず、無謀にもイラクへの旅を決意した。
 僕の胸には怒りが燃えたぎっていた。
 なぜアメリカは正当な理由もなく攻撃をしかけるのか。これは侵略行為ではないか。
 そして、自衛隊を派遣した日本。僕も含めた日本国民の税金が、この戦争に使われている。ひとりの日本人として、責任も感じていた。
 イラクで何が起きているのだろうか。爆弾を投下される人たちは、どのような思いで毎日暮らしているのだろうか。そこで生きる子どもたちは……。
 様々な想いが、胸中で台風のように荒れ狂う。いてもたってもいられない。
(関根健次『ユナイテッドピープル 「クリックから世界を変える」33歳社会起業家の挑戦』株式会社ナナロク社P.103)

日の丸を振る隊員_R

(出典:陸上自衛隊ホームページ 「フォトギャラリー 国際平和協力活動等(及防衛協力等)」https://get.google.com/albumarchive/115305223408918522377/album/AF1QipNiDROEngEz6FTmeGAmaggyl4pnrtP5Gcqu2e46)

 関根さんは取引先など周囲の大反対を押し切って、イラクに渡航することを決意します。しかし、11月29日には日本の外務省職員であった奥克彦参事官、井ノ上正盛書記官が現地で武装グループに銃撃され射殺されるなど、現地の緊迫度は増していました。

 ホントに行くのか?やっぱりやめた方がいいのか……。
 出発の一か月前には、娘が生まれたばかりだった。
 妻に泣きつかれた。

「死んじゃうかもしれないんだよ。それでも行くの?」

「どうしても現実をこの目で見なければならないと思うんだ。死んだりしないって。ちゃんと現地で情報収集して、ダメそうならあきらめるから」

 そして僕は一人、経由地であるヨルダン行きの飛行機に乗っていた。
(関根健次『ユナイテッドピープル 「クリックから世界を変える」33歳社会起業家の挑戦』株式会社ナナロク社P.105)

 関根さんは、ヨルダンでイラクのバグダッドへの交通手段や現地の危険度をホテルにあるバックパッカーたちのノートから探ります。現地でなくてはわからない有事の危険さを伝える情報とともに、日本から関根さんと同じようにバックパッカーとして渡航した若者が危険な目に遭い周囲に迷惑をかけた顛末とともに、次のようなメッセージを残していました。

「行くのは自由」こんな言葉は
他人を傷つけます。
親や友人を傷つけます。
考えなおしてください。
(関根健次『ユナイテッドピープル 「クリックから世界を変える」33歳社会起業家の挑戦』株式会社ナナロク社P.111)

 関根さんの心の中の炎は多くの現地情報に触れても消えることはありませんでしたが、このメッセージでさすがに危険すぎると判断されたそうです。関根さんはイラクへの入国を諦めました。
 それは、関根さんのその後の人生につながる重大な決断の一つだったのかもしれません。

 後日談がある。
 僕はアンマンのホテルから、実は、一度はイラクのバグダッド行きのバスに乗っていた。しかし、思いなおして、国境に行く途中で降りたのだった。
 僕がイラクに旅立った翌年のこと。
 僕と同じホテルに泊まり、同じルートでイラクに行こうとして、同じバスに乗った日本人の若者がいた。
 彼の名前は香田証正さんという。
 僕と唯一違ったのは、国境でバスを降りずに、イラク入りしたということだけ。
 香田さんは武装勢力に拉致され、二○○四年十月三十日に遺体で発見された。
 このニュースを聞いたとき、もしかしたら自分だったかもしれないと思い、胃袋の下あたりが締め付けられる感覚がした。それが、当時のイラクの現実だったのだ。
 香田証正さんのご冥福を、心よりお祈り申し上げたい。
(関根健次『ユナイテッドピープル 「クリックから世界を変える」33歳社会起業家の挑戦』株式会社ナナロク社P.119-120)

■【著作『ユナイテッドピープル』で振り返る】イラク戦争下のヨルダンに見た「希望」とは

 イラク入りを諦めたものの、そのまま引き下がりたくはなかった関根さんはイラクからの難民がある町でバスを降りて、イラクの民衆の現実を確かめようと試みます。しかし降りた先でキャンプが見当たらず、帰りのバスも来ないまま夜を迎えます。
 救いの手を差し伸べたのは、近くにいたヨルダンの国境警備隊の兵士でした。

 翌日、その言葉に甘えて彼の家に遊びに行った。
 アンマンから車で三十分ほど行った、ザルカという町に彼の家はあった。その日はちょうどクリスマス。でもアラブ人でイスラム教徒だろうから彼には関係ないかな、と思っていると、向こうから、

「ケンジ、隣の家にサンタクロースがいるから見に行こうぜ」

 なんて誘ってくる。
 お隣さんはキリスト教徒で、主人がサンタの格好をしてお祝いしていた。僕らもそこにお邪魔して、一緒に食事をさせてもらった。
 イスラム教徒の彼と、キリスト教徒の隣人が、ふつうに仲良く食事をして歓談している。そんな空気を一緒に吸いながら、僕はとてもうれしい気持ちになった。
 宗教対立だとか民族紛争とか、日本では血なまぐさい言葉で報じられることの多い、中東という地域。もちろんそのような争いの歴史があることは否定しない。けれども、現実にはこうして一緒に食事をし、隣人として仲良く暮らしている人たちもいる。
 人間と人間は、宗派や民族の壁を超えて必ず共存できる――。ささやかではあるが、そんな希望がわき上がってきた。
(関根健次『ユナイテッドピープル 「クリックから世界を変える」33歳社会起業家の挑戦』株式会社ナナロク社P.116-117)

 ピースワインにボトリングされた「希望」は、このエピソードが醸造されたものかもしれません。


 この時、ヨルダンの兵士に受けたインスピレーションはこれだけではありませんでした。

 食事を終えて彼の家に戻った。
 彼の家は軍人一家で、親兄弟や親戚もみんな兵士だった。親戚のおじさんが、いかつい顔をして何やら取り出す。

「これが小銃だよ。見たことあるか?」

 いきなり本物の銃があらわれた。おいおい、こっちに銃口を向けているではないか。もちろん冗談だということはわかっていたが。さすがにビビった。
 銃を僕の方に向けたまま、彼は言った。

「なんで日本は、アメリカを支援してイラクに軍隊を送ったんだよ。平和国家じゃないのかよ」

 ヨルダンでも、衛星放送でCNNやBBCをはじめ、国際ニュースに触れることができる。だから日本が自衛隊を派遣したことも知っていた。
 僕は正直な気持ちを伝えた。

「日本の自衛隊派遣については、本当に残念に思うし、怒りすら覚える。なぜ、アメリカに日本が追従しなければいけないのかわからない。日本政府の対応には落胆しているんだ。また、日本人として申し訳なく思う。どれだけイラクの人たちが被害にあっているかと思うと、いてもたってもいられなくなって、ここまで来てしまったんだ。何もできないんだけど……」

 気持ちは伝わったようだった。友だちになった兵士が言った。

「それでも、ケンジの国はいいほうだよ。だって日本は民主主義国家じゃないか。お前が何かすれば、政治が変わるチャンスがある。ヨルダンは王国。我々のような一般人が何を思っても、政治が変わることなんてないんだから」

 頭をハンマーで殴られたような衝撃があった。
 そうだ。
 いくら政府がダメだったとしても、それを僕らが変えるチャンスがある。市民が変われば政治が変わる国なんだ。
 僕は遠いヨルダンの地で、国境警備隊の若い兵士から、日本という国の可能性について教わった。
 来て良かった。イラクには入れなかったし、妻も泣かせてしまったけれど、得たものは大きかった。彼らと出会えた偶然にも感謝した。
(関根健次『ユナイテッドピープル 「クリックから世界を変える」33歳社会起業家の挑戦』株式会社ナナロク社P.117-119)

 関根さんは志を新たに、自分が平和な民主国家だからこそできる社会に貢献する事業を模索していきます。そうした歩みが、第一創業期のオンライン募金サービス「イーココロ!」の成就につながっていきます。

 一つ一つの出会いを大切に歩んできた関根さんの20年目の挑戦に、ぜひご注目ください!!

Tunrtable Christmas Special タイトルスライド バナー画像 第1回日付宣伝 (1)


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