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「ものを買う」の先に、何があるのだろう

全国各地の工場を訪問する中で、多くの工場に行き場のない在庫があるという事実を目にしてきました。厳しい検品基準を満たせずに正規品から除外された商品が数多く残っていて、工場の方々の悩みの種になっているのです。

しかしそうした商品の中には、「不良品」とするにはあまりに惜しいような、使用する上で全く問題のないものが数多くあります。確かにちょっと訳ありだけれど、それも見方を変えれば、他と違った個性のうち。

そう思える商品を「乙なもの」と定義し、工場から買い取り、きちんとご説明した上で販売するという取り組みを2019年から始めました。詳しくはこちらの記事でご紹介しています。

新年より販売開始した「乙なもの箱」を通じて、お陰様でじわりじわりと皆様のお手元へ乙なものをお届けすることができています。本当にありがとうございます。

「これなら全然気にならない」と乙な理由を許容してくださったり、「なるほど、乙だね」と魅力を感じてくださったり。お客様からそんなお声を実際に頂いており、嬉しいばかりです。

「乙なもの」は使用に問題がないものです。例えばハサミポーセリンでは、飲食店向けにこのような器を少し安価に卸すといった取り組み例もあると言います。

この「乙なもの」の取り組みを、よりたくさんの方に知っていただきたいと思っています。この記事では、私たちわざわざがどのような考えを持って取り組みを続けているかをお話しさせてください。

「乙なものを買う」とは、どういうことか

乙なものを購入すること。それは、行き場を失ってしまった商品を受け入れること。そして、工場・製造元、ひいては産地・地域を支えることに繋がります。

この取り組みが1人でも多くに広まり、購入してくださるお客様が増えることで、工場の方々が抱える悩みの種はひとつずつ解消されていくはずだと考えています。

乙なものであっても、関わる人の多さは正規品と変わりません。木製品であれば産地で木を育て木材となるところから始まり、工場や職人たちが製造を担い、そしてメーカー、販売店へと渡っていきます。その間を物流などでつなぐ人もいますし、産業があなたの町を支えていることもあるでしょう。

今回乙なもの箱にご協力いただいた東屋より「今回のわざわざの『乙なもの箱』の取り組みによって、乙品をかなり減らすことができました」とのお話を頂くことができました。しかしその後も少なからず乙なものは出ているといい、この取り組みを続けていく必要を感じます。

一度、お金を使って「ものを手に入れる」という行動に留めることなく、お金を通して「ものを手に入れるまでに関わってきた人」を思い描いてみませんか。

わざわざでは「お金はコミュニケーションのツールである」と捉え、お金を渡した先には何があるのか想像することを大切に考えています。「訳ありだから」という理由で見放されてしまえば、ものづくりに関わった人のもとへお金が渡ることもなくなってしまうでしょう。

「訳ありだけれど使用上問題がないもの」に対し「乙だね」と価値を見出し、そこに購買が生まれることで、お金は関わった人たちのもとへ正当に渡っていきます。

そしてお客様は「乙」である分、少しお得に製品を生活に取り入れることができます。渡ったお金が、お客様も含め、関わった人たちが暮らす社会に還元されていく。乙なものの購買を通じて、そんな循環を感じていただけたなら嬉しいです。

#乙なものキャンペーンにご応募頂いたお客様より。「乙」を通してものづくりの背景を想像してくださったこと。とても嬉しく思います。

B品としてではなく、アップサイクルの意識で

乙なものを販売すること。それは単に値引いて販売し、眠っている在庫を減らしたいという取り組みではありません。

使用上問題はないものの、検品基準をわずかに満たさなかった商品について、ハサミポーセリンは「『B品として販売』ではなくアップサイクルの意識で販売していきたいと考えている」と話していました。わざわざの乙なもの箱へも、その観点から賛同とご協力を頂きました。

今回乙なもの箱をお届けするために各メーカーさんにご相談したところ、私たちが当初想定していた以上の数の乙なものが集まりました。1点1点丁寧にものを作り、検品し、お届けしているメーカーさんが多いからこその、細部まで妥協のないものづくりを改めて感じます。

その背景には少し個性を有した「乙なもの」もあるということを、きちんとお客様へ伝えながら販売機会を増やしていきたい。

例えば贈りものには不向きかもしれないけれど、家庭で使う分にはまったく気にならないという方もいらっしゃるかもしれません。乙なものが持つ個性と同じように、私たちにも一人ひとり異なる考え方や感じ方があります。多様な考え方、多様な選択肢のひとつに「乙なもの」を加えていただけたなら幸いです。

持ち物全てが乙なものである必要はありません。持ち物のひとつになった乙なものは、あなたの暮らしに自然と馴染んでいくはずです。

乙なものという選択肢があることで、知らず知らずのうちにモノに対して寛容になっていて、ものづくり全体への助けにもなっていく。このような循環になればという思いです。

「ものづくりを応援したい」「少しお得に購入できるから」「気兼ねなく使えるから」。どんな理由であっても乙なものを選択肢に入れてくださる皆さんに感謝をお伝えしたいです。

#乙なものキャンペーンにご応募頂いたお客様より。作り手にとってだけでなく、使い手も同じように喜べる取り組みでありたい。乙なものは全ては誰かの幸せのためにというわざわざの精神に則っています。

最後に

乙なもの箱をお買い上げくださったお客様が、そのご感想をnoteに書いてくださいました。“買う”という行動について深く考えてくださったことが伝わってきて、スタッフ一同しみじみと嬉しく拝読しました。本当にありがとうございます。この記事とあわせてぜひご覧いただきたいです。

“基準外とは、ある種の特別感ですね。買った人とその物との絆を、より強めてくれるもののような気がしました。”

『新しい年、新しいものに出会う』より引用


また乙なものの取り組み以外にも、わざわざでは靴下工場の残糸を活用した「わざわざ残糸ソックス」「わざわざザンシンバッグ」などの製品を作り販売しています。

近年では3足1,000円の靴下なども多い中、捨てられるはずの糸を使った残糸ソックスがどうして2足1,000円なのかをお伝えしたく、ものづくりの背景からまとめた記事も公開しています。商品代金として支払うお金は単に商品対価としてだけではなく、流れの中にあるということを感じていただけたら幸いです。

文責>鈴木誠史 写真>若菜紘之

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