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昔や今の、自分の言葉の置き場所です。 書こうとするだけで、良い気がします。 なんとなく。

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最近の記事

卒業

傾きかけた夕日に 静かに染められていく放課後の教室 たわむれあそぶ影法師たち その風景からひとりひとりを 輪郭にそって丁寧にきりとり ノートに貼り付けていく ふるえる手で 間隔が あかないように あかないように にぎやかな貼り絵を作っていくように やわらかな風が教室を通り抜ける ノートは色あせた映写機のように ぱたぱたと場面を懐かしみながらめくられていく めくられていくノートからは きりとったひとりひとりが 夕方の風に吹かれ ばらばらの孤独になって窓の外へ運ばれる や

    • 即興、r6.2月、はつね

      冬にあり夏にないものなあんだ なあんだあった なかったものってなあんだ 気づかなかったものってなんだ 新月の前、かけた言葉 冬鳥の北に戻りて春立ちぬ 残されしことのはだけがふりつむ団地 その窓を トントン、たたく月のない夜 うぐいすの初音を聞きぬ藪の中 そっかあれは鼓の音 はやくおかえり

      • 自由をめぐる空想

        正直、高校を卒業した時の成績はよくなかった 偏差値にして40前後 空を飛ぶ試験にうかるには絶望的な数字 なにしろそのころ 空を飛ぶための試験を通過するには 偏差値にして60くらいの成績が必要だった そこそこの数字だ 今と変わらず倍率も高い 当然か 当時、楽観主義者だった僕はあたって砕けろで試験を受けて 見事粉砕して1年間勉強をしなおすことになったわけだ もっとも楽観主義者なのは今も変わらないけれど 高校のころうんざりするほどやった基礎公式 (50kgの人間が30cm空中

        • からっぽ

          めぐる 色を溶かし まちをはがし 道をこわし 服を脱ぎ捨て しゃがんで膝を抱え めぐる 日を着て 道を履き まちにとけ また捨てる 集積所の隅はまだ あきがある 隣の区画で 延び続けるビルと 影のてっぺんを 結び その先にあるのが カシオペア座だって

          01

          0と1がある。0かどうか、0はなにか呟いても、叫んでも、手話でも、動作でも何でもいいから0じゃないことを証明する国境線を眺めて指を使えるなら、動かせられるなら心臓をなぞって小数点から始める0が、もし証明されたら誰かのせいにして、世界みたいなもののせいにして、全ての自動販売機でも良いそのすべてに叫ぶ口がなくても

          歩く

          かかとしょうしきゅうぼしきゅうだいいっしからゆるやかにだいごしまで 流れる間に 転ばぬように意識なく スラーのように もう一つの踵が自然と地につく そんな足があって 地面がある

          初盆(20230821)

          1 あの親父が兄を亡くして少し小さくなった 葬式でははしを渡され お前頼むわと俯いていた 親父に渡すことは出来なかった 2 いつも 男はつらいよ コロンボ ポワロがTVに映っている こないだ観てなかった?と聞くと コロンボは10回目やと 応えた 3 マイルドセブンを買いに行く 渡された小銭を3つ 自動販売機にいれる ならんだボタンが点る 錆びた自販機にみおくられる 家路は めをとじたそのままのよぞらに つつまれるばかり 4 風呂から上がると いつものように タブレット

          初盆(20230821)

          無題

          年の瀬ってなんで瀬と呼ぶんだろ 瀬戸際なのかしら心配になる 師走っていかにもせいてる としのせ って書いた紙を こっそり酒と卵に漬ける てらこやのとしのせ

          朝ぼらけかすみし山の冬木立 鼓膜に残る響き息の跡 ときはかねときあかねさす井戸端の 夕餉の支度暮れのにおいは 山の中静かに凍る湖が 数億年の冬眠を守る 暖冬に明日、明後日と大寒波 君は知るべくもない10年後の冬 きみのまくらもとへ届く天球図きみがむすぶいつか点を

          鍵をなくして 座礁した無人島の浜辺から少しせりだした夕日の淵で 釣りをするたびに地球を釣ってしまい きれた糸の先に針をつけて 昨夜捕まえた痩せた月を餌に じっと 新月を待っているような 針の先にかかった海藻の中に小さな鍵 鍵穴はどこだったか思い出せない

          メルヘン

          わっかのふちに こしかけて いとをたれてる 地球ばかりがつれるから 今夜は つきがない 電灯で くらがりをてらし 星をまく人

          メルヘン

          電車

          終着駅いき先表示は今日の天気輪 転てつ器よし静脈のよう かじかむ 今朝は特に 駅が 凍っているから 行先表示器も 無人でできた街の明かりだけが時刻通りともりきえる朝の5時のポツリ 線路沿いの枯れた草木は黄金色に見えて 銀河の林檎銀河の林檎 線路は廻りながら円柱の内側を のぼっているのかくだっているのか まどろむ雨音もう一度何度も朝は来る どこでも誰にでも望まれてもそうでなくても おはよう

          つゆやみの夜

          つゆやみの夜 降りしきる蛙の鳴き声 このたくさんの鳴き声の中にも さみしい蛙はいるのです 呼ばれているような気がして サンダルを履いて庭に出てみると 蛙の鳴き声が辺りを包みます 白いクチナシの花が咲いて どこで鳴いているのか ここにいるよ ここにいるよ と鳴いているのに つゆやみの夜 庭のたくさんの蛙の中で わたしもひっそりと 鳴いています

          つゆやみの夜

          単線

          ひとりは 紙飛行機からはばたいて そらからひろがれよ野原 駅や車や自転車や花や人の夕暮れを 川面が反射する いつもどこかに帰りたいように 単線切符240円 缶ジュース3本分で 簡単に買えると思ってた 帰りの切符 ひとりははばたいて そこからひろがれよ 反射される光景は今ここにあって 紙飛行機はとうに燃えた

          さそりの心臓

          指先であそぶ旋律がピアノの鍵盤の上を流れて  部屋に溢れるやさしい音階のすきまに 天球図は青くひろがってゆく 東のかなたの さそりの心臓は自ら発火し そのきらめきは引き出しの奥で眠るルビー 観測されるこまかな粒子は 透過する光の空間に 不安定に浮遊しながら おもいおもいにあそんでいる そして 薄明の大気のような 静謐とした調和にしたがい かたちづくられてゆくその さそりの心臓は しずかに燃焼しつづける 目にうつる光がルビーのこまかな粒子を透過し 空間に溢れるやさしい単色光の

          さそりの心臓

          (過去作)1円玉のささやき

          月光にてらされる鼠色のわたし 窓辺の机の上で いつものように月をうっとりと眺めていると だんだんと月が大きくなってゆくようです 最初は夜空の真ん中に黄水晶のように透き通った月の 輪郭がしだいにはっきりと見え ついにはクレーターの様子や かこむようにちりばめられた星の広がり そして深遠な暗闇を感じるようになりました わたしはふわふわとしながら 石くれやクレーターばかりの荒涼とした月面に 一本の旗の立つのを見ました 星条旗とその下から続くかすかな足跡 わたしはこれを知っています

          (過去作)1円玉のささやき