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アクティブラーニングとしての複業

<複業ワーカーのご紹介>
今回は、ワークデザインラボおおすみメンバーの中でも「首都圏複業ワーカー」として活躍している佐藤さんをご紹介します。
「自然」が自分のベースだと仰る佐藤さん。どんな想いでワークデザインラボおおすみに関わっているのか、お話を伺いました。
(インタビュー:2022年6月)


1.プロフィール

ーまずは、これまでのご経歴を教えてください。
地方の大学院を卒業後、総合商社に新卒で入社。最初の4〜5年間は、石油関係の取引に携わっていました。6年目からは、バイオマス燃料(再生可能エネルギー)の輸入事業を担当しています。

ー今の会社を選んだ理由は?
大学・大学院で水循環や環境にまつわる研究をしていたのが1番の理由です。資本の力で環境問題を解決したいと思い、今の会社に入社しました。
またプライベートでも、アルプスに登山したり、森に行ったり、自然にふれることが好きで…。「自然」は自分のベースとなるものなので、環境関係の仕事をしたいとずっと思っていました。

ーでは今のお仕事は、ご自身の希望が叶っている状態ですね。
そうですね。最初は全く反対の石油関係だったんですけど…。環境関係の仕事をしたいと希望して、今は自分のやりたいことができています。
ただ、やればやるほど課題感も見えてきて…そんなところを複業で解決したいと思って取り組んでいます。

2.鹿児島/大隅半島について

ー大隅半島を訪問した経験は?
鹿児島には何度か出張で行ったことがあるんですけど、大隅半島はワークデザインラボおおすみに関わって初めて訪問しました。
複業のプロジェクトが始まってからは、大隅半島に3回訪問しました。直近では、今年の5月に行きましたね。

ー最初に大隅半島を訪れたときの印象は?
大隅半島の印象というよりは、複業人材として何を大隅半島で表現すればいいのか、どう立ち振る舞えばいいのかがわからず、あたふたしていたというのが正直な印象です…。
現地では「自分に何が出来るのか?」をプレゼンする予定がありました。
自分は何も用意してなかったんですけど、周りの方が資料を準備していることに気が付いて…。飛行機のなかでヒーヒー言いながら、プレゼン資料を準備しました。
これまで自分の出来ることを表現する機会がなかったので、このプレゼンは新鮮でした。

3.ワークデザインラボおおすみに出会ったキッカケ

ー複業をすることになったキッカケはありますか?
会社のなかで出来ないことをしたいと思ったのがキッカケです。2018年から環境や自然というキーワードがある幅広いジャンルの勉強会に参加して、そこで自然経営研究会に出会いました。

ー自然経営研究会とは?

出典:自然経営研究会


「自然経営」とは?を定めること自体が難しいのですが、「自然のように変化し続ける経営」と表現していて、特徴的な形態として「自立分散型組織」となることが見受けられます。
いわゆる一般的な会社とは違い、自然の流れに委ねながら、最適な形を探求する組織形態です。自然経営研究会のイベントを通して、一般社団法人Work Design Lab(ワークデザインラボ/以下:WDL)代表理事の石川さんに出会いました。

ーそこからワークデザインラボおおすみに繋がっていくんですね。
はい。組織より自然に関わりたいという思いがあって、複業で出来ないか探していました。WDLは地方のプロジェクトを多く推進していて、そこに魅力を感じました。本業ではやっていない林業や、他の環境に関するプロジェクトに携わりたい、そんな思いがありましたね。
WDLメンバーでワークデザインラボおおすみにも携わっている伊藤さんから声をかけてもらい、今に至ります。

4.なぜワークデザインラボおおすみを選んだのか?

ーワークデザインラボおおすみについて教えてください。

「WDL」や「ワークデザインラボおおすみ」は自然経営研究会と似ていて、「自立分散型組織」のような形態になっています。主体が「組織」ではなく「個人」にある。やってもいいし、やらなくてもいいというスタンスなんです。もちろん出来ないことはそのままにするのではなく、出来るメンバーが担当します。自分で全て完結させるというより、チームで役割を補いながら、プロジェクトを進めていくのが特徴です。まるでパズルのように、みんなで出来るピースをはめていくようなイメージですね。

ー一般的な副業と異なる点はありますか?

大きな違いは、非金銭的報酬価値を置いている点だと感じています。
一般的な副業は、自分が担当した業務に対して、金銭的報酬があるケースが多いと思います。金銭的報酬があるので、対価に見合うだけの業務をしなければならないということ。出来る出来ないに関わらず、金銭的価値を受け取るためにやる必要がある。
でもWDLの場合は、非金銭的報酬の魅力があります。全てやりたいことで結びついているのが特徴だと感じています。

ー非金銭的報酬ですが、メリットは?
僕自身としては、お金が欲しいというより、アクティブラーニングや越境学習、そして面白いことをやる仲間づくりを目的として複業をしています。金銭的報酬の副業はある程度要件定義された範囲内で1人での仕事になりがちですが、WDLでは要件定義から一緒に作っていき、かつ、チームなので、さまざまな視点があります。全く違う業種の方が集まって、同じチームメンバーで学び合いができます。さまざまな方との繋がりを通して、自己の学びに繋がるのがメリットです。お金では表せないところに、価値があると思っています。

ーでは反対に、デメリットは?
本業で多忙になってしまったり、疲れて気分が乗らないときなどは、進みが遅くなってしまうことがあります…。
本業は期限が明確で「義務」的な部分があるため、無理してでも納期に収めようとしますが、WDLになると、自分は期限に対して甘えてしまうことがあります。事前の期待値調整が大事だなと思うと同時に、非金銭的価値を受け取っているという自認識をしっかりと持ち、相手の期待に応えるようにしたいと思っています。

ー本業との兼ね合いはどうですか?
本業との兼ね合いは、フレキシブルに対応できていると思います。打ち合わせはだいたい夜におこなっているので、本業には影響はありません。現地訪問に関しては、有給をうまく使いながらやっている状況ですね。

ーワークデザインラボおおすみのやりがいは?
現場を持っている1次生産者、現場で働いている方々と携われることがやりがいですね。自分でもやりたいことだったので、もっと現場について知りたいという気持ちがあります。またプロジェクトの公共性も魅力に感じています。自社だけではなく、地域と一緒に盛り上がれるプロジェクトが面白いです。本業ではなかなか出来ないので。プロジェクトを通して、公共性の知見を持っている方々とお話できるのが貴重です。

5.これからやりたいこと

ー今、ワークデザインラボおおすみで関わっているプロジェクトはありますか?
現在は主に、大隅半島に関する2つのプロジェクトに携わっています。そこで脱炭素に関するサポートと、ファンベース拡大に向けたイベントの企画をおこなっています。2週間に1回ぐらい全体の打ち合わせや、スモールミーティングに参加しています。

ー今後のビジョンはありますか?
これまでは林業、自然に繋がるところが好きで、イベントを企画していました。今後は、より自分が繋げていけるように、現場に近いところもやっていきたいと考えています。

また複業団体の自立型組織にも面白さを感じています。僕自身は自然経営から入ったので、非金銭的報酬は違和感なくここまでやって来たんですけど、「仕事=金銭的報酬有」という前提が当たり前のものとなっている場合はすんなり入りづらいのかもしれません。どうしたら非金銭的価値を主とした複業に溶け込めるのか?どうオンボーディング出来るのか?を追求していきたいです。

「両利きの経営」のように、「知の探索」+「知の深化」がポイントだと思います。普段出会わない人に出会える点は「知の探索」で、そこからどう「知の深化」に繋げていけるのか?どう探し求めていくのか?この2つのバランスを保つことが必要だと考えています。

ー今後計画しているプロジェクトやイベントは?
今後はもっとイベントを増やして行く予定です。オンラインイベントのプロトタイプは既に実施しましたので、次は、リアルイベントを9月に企画しています。イベントの裏では、ライト層のファンをどう増やしていくのか?ライトからコアなファンになってもらうには?を常に考えています。

「無形の価値」をどう伝えていくかですね。無形の価値は、現地の経営者の想いであったり、目に見えないものです。イベントの体験を通して、わくわくや楽しさを提供していくなかで、無形の価値を伝えていきたいですね。

ーこれからやりたいことは?
一つは、本業と複業の関係性について提起していきたいと思っています。複業で得たことを本業にも還元するにはどうするのが良いか?本業と複業のより良いバランスのとりかたは?など自身の実践を通じて表現していきたいと思っています。

もう一つは、やはり学生時代からやりたいと思っていた環境問題の解決というのを追求していきたいです。特に、自然豊かな地域において、そこに暮らす人が生活するうえで必要とする資源循環・エネルギー循環と自然の循環を調和させることで、地域で無理なく循環が巡る仕組みを少しずつ増やしていきたいです。

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