ひさびさに昼間からテレビを見ていると、「中絶は殺人か？」と言う話題で議論していた。その番組内で、１人の女コメンテーターが「中絶は殺人だ！命の冒涜だ！なんの罪もない赤ちゃんを殺している！」と鼻息荒く叫んでいた。

なるほどそう言う意見もあるのか、と僕は少し感心した。僕は中絶は仕方ない事だと考えていたが、まぁ確かに殺人と言う意見も理解は出来た。

いろんな考えがあるなぁと思いながらテレビを見ていると、その女コメンテーターが涙ぐみながらこう言った

「今の若い人達にはコンドームなどの避妊の大切さを理解して貰いたいです。」

それを聞いたとき、僕のなかに何かもやっとした違和感が生まれた。

ん？あれ？中絶は駄目なのに、コンドームを着けるのはokなのか？

コンドームって、つけることによって妊娠を阻止する物だよな。

それって、「本来ならそのセックスで生まれてくるはずだった命」を殺していることになるんじゃないか？

コンドームを着けて妊娠しなかった人と、コンドームを着けずに妊娠してしまい中絶した人って、いったい何が違うんだろう？

僕にはそこにそこまで差はない気がした。

そして僕は、ごく当たり前の感覚で涙を流す女コメンテーターにこう思った。

「てことはこの女コメンテーターも、散々コンドーム着けて、ピル飲んでセックスしてんだろうな。」

その瞬間、女コメンテーターの涙ながらの叫びも、他の共演者の真剣な眼差しも、無駄に仰々しいこのテレビ番組も、すべて滑稽な作り物に見えた。

なんか全員善人ヅラして「正義」について語ってるけど、お前らの理論でいくと人殺しのオンパレードじゃねーか。

僕の心はコンドームが上手くつけられない時ぐらいへなへなに萎えていき、自然とテレビを消していた。