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どっちみち後悔するんです-それなら、より後悔が少ない方を選んでみては-

私は今でこそ、Web関連やアロマテラピー関連の業界におりますが、以前は高齢者福祉業界に十数年住んでいました。

離職する直前まで、特に認知症の方の支援を主に、相談員(ソーシャルワーカー)として働いていました。

ソーシャルワーカーは、ご利用者・ご家族と自身の所属する介護サービス事業者(施設など)の間に立って、橋渡しするという役割を担っています。

介護業界に入った当初は介護士(介護福祉士)として、介護業務にも就いていました。
しかしながら、肉体労働であること、小柄な体格ということもあり、腰椎ヘルニアを患い介護職を辞して、ソーシャルワーカーに異動したという経緯があります。

今回は、介護サービスそのものというよりも、サービスを利用する上での心構えや、現役時代?によく受けた質問・悩みを参考に、私自身の考えを書いていきたいと思います。

少しでも介護生活に不安がある方の気持ちが軽くなりますように。。

※介護保険制度自体が数年置きに改正されるため、ここでは制度について詳しくは書きません。

介護サービスといっても、様々な種類があります。
詳しくは厚生労働省サイトの「介護サービス情報公表システム」にある「公表されている介護サービスについて」のページをご参照ください↓

介護サービスを利用するきっかけ

介護保険制度になり、利用者は自由にサービス事業者を選ぶことが出来るようになりました。
(介護保険制度施行前は、措置として行政に決められた事業者のサービスしか受けられなかった)
自由と言っても、要介護度や心身状況、費用などを考慮したうえで選択できる範囲は決まってきます。
ただ、そうした範囲の中でサービスを受けたいとなったときに、事業者を選べるようになっています。
例えば「日本食は選べないけど、イタリアンの店舗の中からならば、好きなところを選べる」という感覚でしょうか。
もちろん選んだからといって、その事業者が必ず受け入れてくれるかどうかというのは別です。
事業者にも利用者を選択できる自由があります(定員などもある)ので、お互い条件があえば「契約」という形でサービス利用が始まります。

この介護サービス利用開始のピーク時期の傾向がありました(私の経験則ですが)。

  • お正月明け(1月中旬〜2月)

  • お盆明け(8月下旬〜9月)

なぜこの時期なのか?
それは、年末年始やお盆に、久しぶりに帰省してご家族の変化に気付くからではないか。と私は分析していました。

毎日3ミリバス停ずらして家の前に(ってわかる人だけわかって(笑))ではないですが、頻繁に会っている人よりは、しばらくぶりに会う人の方が変化に気付きやすいですよね?

異変に気付くきっかけで、よく聞いたのは
「半年ぶりに帰ってみたら、実家がものすごく汚く乱れていてビックリした」
「同じもの(食材や品物)が、すごい数詰め込まれていた」
「しばらく一緒にいたら、母親が炊飯器でご飯炊けなくなっていることに気付いた」
などでしょうか。

ビックリしただけでは、介護サービス利用を検討するまでには至らないと思います。
きっと、少し一緒に過ごしてみて「これは何かおかしいぞ?」と気付くことが複数出てきて、初めて行動に移す決意をしたのだと予想できます。

ここで行動に移さない人の特徴としてみられるのは、怒る。叱る。という感情で「ご本人を正そう」とする方に振り切る人です。
これは傾向ですので、気を悪くしないでいただきたいのですが…。
母親に症状が現れ始めて、息子さん(定年後の方など)が受け入れられず葛藤するパターンが多いですね。
「なんでちゃんと片付けないんだ!」
「何回言ったらわかるんだ!」
「なんでこんなことになってるんだ!」
みたいな…。

働いていた仲間と

後悔に寄り添うこと

今でこそ「介護サービス=恥ずかしい」という風潮はなくなってきましたが、それでもある一定の年代の方には根強く残っているのも事実です。
あと地域によっても、このあたりはかなり差があります。
「介護サービスを利用しているのを近所の人に知られたくないから、通いのサービスの送迎車は自宅から離れたところに停めてくれ」と要望されたこともよくありました。

なんて考えだ!と思われる方もいるかもしれませんが、そういう時代に生きてこられ、それで育った人は仕方ない。とわたしは考えていました。
「仕方ない」は諦めではなく、理解です。

サービスを必要としている人に寄り添う。
特にソーシャルワーカーは「ご家族」側に寄り添って、橋渡しをする立場だと教えられました。
もちろんご利用者にも寄り添いますが、利用を始めるのにご家族の支援が必要なのであれば、協力していただかなくてはいけないのです。
そのための条件や要望を理解して、サービス事業者として何が出来るのか?を考え、事業所内で調整して対応していくことが優先なのです。
サービスを利用しなければ、何も始まらないのです。

介護サービスといっても、前述した通いのサービス(デイサービス、デイケアなど)と、入所サービス(特別養護老人ホーム、老人保健施設、グループホームなど)、訪問サービス(介護ヘルパー、訪問看護など)と形態は様々です。
その時々、その人の心身状況に合ったサービスを利用します。

今回の表題になっている「後悔」の葛藤がみられるのは、このうち「入所サービス利用」に関して強い傾向があります。

入所サービスを利用検討する理由の一つ「在宅介護の限界」にも様々な形が見られます。

  1. 介護者(家族、親族、地域の人など)の心身の限界

  2. ご利用者の心身状況の変化に伴う住宅環境の限界

  3. ご利用者の心身状況の変化に伴うご本人や家族、近所の人の生命リスク増

この中で入所を決心するまでに一番悩むのが、1.です。
2.3.は、ハード面やリスクが高くある以上、諦めが発生するので踏み切りやすいです。

1.は、気力次第でどうにかなるもの。というのが、今もなお、仕事面でも日本社会に蔓延る、悪しき思想だと思っています。

根性論で語るのは、いつでも関係のない人たちで、当事者の決断にイチャモンつけたい人たちだから、大切なのはご自分(たち)がどうしたいかです。
と、私はいつも悩むご家族にお話ししていました。
今思えば、まぁまぁ過激なことを言っていたなぁと思いますが(;^_^A

この「ご自分たち」にはご利用者本人は含まれません。なぜなら「ご利用者本人のご要望通りにしたい」と考えて決断するのは介護者の人たちだからです。

だからこそ悩むのですよね。

「本人の望みようにしてあげたいけど、我々に限界がきてる」
「他にももっと良い方法があると思うけど、もう無理なんです。でも、後悔もしたくないんです」

ご本人の要望通りにしてあげられないからの葛藤ですよね。
それでも決断する時は迫ってきているという(施設入所はある種タイミング問題もあるので)焦燥感や罪悪感、いろいろな感情が渦巻いている中で決断しなければいけない。

そんな状況にたくさん立ち会い、いつもご家族に話していたのは
「どちらにせよ、後悔すると思います。わたしの経験上、いろいろなケースを見届けてきましたから。どうせ後悔するなら、少ない方を選んでみるのもひとつだと思いますよ」です。

たらればは、なんの解決にもならないとわかっていても、結果を見るとどうしても後悔することありますよね。
想像してみて、どちらの選択がよりダメージ少ないか。
現状があって決断するときに、そんな未来まで考えられないかもしれないけれども
「少しだけ選択したあとの未来を想像してみてください。より後悔が少ない方はどちらだと思うかで決断してみてはいかがでしょう?」

そう言って、持ち帰ってもらい、期日までにご回答ください。とお伝えしていました。
期日がないと決まらないんですよね。腹を括るというか。

ソーシャルワーカーになって最初の頃は、明らかに入所した方が良いケースがあれば「入所した方が、ご本人にとってもご家族にとっても良い方法だと思います」とお伝えすることもありました。
そうすると、ご家族から「あなたがあのときこう言ったから、こちら選んだのに!やっぱりやめておけばよかった!」と責められたり、「今からやっぱり家に戻します!」と急遽在宅に戻ることになり、かえってご本人を混乱させてしまうこともあったりで、私自身も対応に悩むことが多かったです。

決断する条件を決めておく

後悔先に立たずという状況をたくさんみてきて、学んだことは「条件を決めておく」ことです。

介護サービスを利用開始する段階で、いきなり入所サービスを選択するケースは少ないです。
在宅サービス(通いサービス、訪問サービス)を利用しながら、いつか来る入所に備えるというケースが多いと思います。

なので、最初に「いずれ入所サービスを利用するかもしれない。なので、こういう状況になったら入所サービス利用する。と、条件をご自分たちで決めておくことをお勧めします」とお話しするようにしていました。

例えば

  • トイレに自力で行けなくなったら

  • 徘徊が始まって、目が離せなくなったら

  • 車椅子が必要な状態になったら

  • 近所や孫に危険が及んだら など

それぞれの住環境や家庭環境によって程度は違うので、それこそご自分たちの条件なので誰かに話す必要はないけれど、介護サービス事業者には共有しておいてもらえると助かります。

ご利用者がその状態になったときに、入所タイミングのご提案ができることもあるからです。
その時にまだ在宅介護で行けそうなら、また次の条件を作れば良いのです。
そうやって、折り合いをつけていくことで、介護者も後悔少なく、ご利用者も混乱少なく生活していけるのではないかと考えます。
このパターンは比較的うまく、入所までスムーズに進んだケースが多かったです。

退職時、最後の定例会で
ソーシャルワーカーのみんなから

今でも活かせていること

今のWebやアロマテラピーのお仕事でも、プライベートでも同じなんだなー。と、感じることがあります。
こちらが良かれと思って提案したことを、決断できず悩み続けるのは相手が「その先を想像出来ない」からなんだろうな…ということです。

今から決断したことで、どんな未来が待っているのかわからない。不安なので、決断できない。ということが共通であるんだと思います。
「こういう未来が待ってますよ!」というと、きっとそういう人に限って「あなたが言ったから選択したのに、思うようにならなかった!どうしてくれる」となるんですよね( ̄▽ ̄;)

だから「未来を想像させてあげ、決断してもらう」お手伝いをすることが一番の役割なのだと思っています。

ソーシャルワーカーとして「後悔」に対峙してきた技術や経験は、今でも活かせています。

どっちみち後悔するんです。
だったら未来を想像して、ベターな選択しましょうか。
期日までにご回答くださいね。

私はそう言って、これからもお客さんに寄り添ってお仕事して行くと思っています。

言葉を尽くし、手間も惜しまず

家族やお友達にも同じように寄り添って、生きやすい選択のお手伝い出来れば最高だなー。と思ってます。

そしてこのnoteも、誰かのために、少しでも役立つお手伝いが出来ていたら嬉しいです(*´∀`*)

昨日、開業2周年迎えました✨

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