見出し画像

「CS」を正しく理解し、ブランディングやCRMに取り入れる

みなさんこんにちは。
マーケティングディレクター兼データサイエンティストのtohari.です。
 今回のテーマは「CS=顧客満足」についてなのですが、CSについてどこまで理解していますか?
「CS、顧客満足でしょ?わかっているよ。」と思われる方も多いと思いますが、実はこの道もそれなりに深いです。同時にブランデイングやCRMを考える際にも避けて通れないテーマなのですが、実際にそれらに取り組むとき、CSをしっかり考えて施策設計されることはほとんどないように感じています。
CSは、事業を行う上での超基本であり、マーケターやクリエイターにとってもとても重要ですので、今回の記事を通じて理解を深めていただたらと思います。
tohari.のプロフィールサイトはこちら


CSの定義


マーケティングの大家フィリップ・コトラーは、CSについて以下のように語っています。

市場シェアを気にする企業はとても多いですが、CSについては今や当たり前すぎてかえって形骸化してしまい、きちんと定点観測している企業は意外と少ないです。
アンケートをするにしても面倒ですしね。
ですが「CSは未来に対する指標」ですので、この変化を追うことは、マーケティング施策を考える上でもとても重要になる訳です。

以下は、企業活動の変遷とCS との関係を目止めたものです。

この中でCSは、高度経済成長の時代を経て、モノづくり志向から顧客志向への変化の中で多くの企業活動を支える軸になってきましたが、昨今では「社会満足の時代」の中で顧客志向はやや薄れてきているようにも感じます。

ですが、CSとは決して一過的なトレンドではないはずです。
社会満足でいう社会とは生活者一人ひとりの集まりであることに他なりませんし、デジタル化の中で合理性を追求する流れが色濃くなっていますが、そんな時こそ改めてCSが企業競争力の源泉にもなり得ると感じます。


CSとロイヤリティの違い


別の記事(こちら)で顧客ロイヤリティの重要性について述べたのですが、ここでCSとロイヤリティの違いについて触れてみたいと思います。

CSと顧客ロイヤリティは、基本的に似た意味を持つ言葉ではありますが、その2つは同じではなく、CSはロイヤリティ形成の重要な1要素と捉えることができます。

それは、「満足」であっても「好き」とは限らないからです。
ブランドが目指すのは固定客=ファンの獲得であり、そのために「満足」は達成すべき大きな通過点になります。「満足」なくして「ファン」はあり得ないのです。


期待値と満足度の関係


CSの特徴をまた別の角度から考えてみたいと思います。

「満足」はよく絶対値的なものと考えられがちですが、実は期待値との関係において変化する相対的(=動的)なものです。
例えば、購入前に期待値の低い商品Aと期待値の大きい商品Bで考えた場合、客観的には商品Bの方が優れていたとしても、商品ごとの満足度で見た場合、商品Aの方が満足度で高いスコアとなる、といったことがよく起こります。

そのため、自社商品の満足度を把握することはとても大事ですが、満足度が低い場合でもそれだけですぐに判断するのではなく、顧客の期待との関係の中で評価していくことが大切です。
これは1つの商品の含まれる個別の機能や仕様の評価においても同様です。
最も優先的に改善すべきなのは、「期待が大きく満足度が低い」要素(商品や機能など)です。
 
また、満足度を上げようとする場合には、高機能・高品質化するといった視点だけでなく、期待値を下げる取り組みも時には必要です。

例えばある効能を持った健康食品が、購入者の満足度が低い点を改善するために、この商品の特徴を競合商品だけでなく、薬品や食品との比較の中で明確にすることで、満足度を改善した事例もあります。


 
満足度と継続利用との関係


次に満足度と継続利用との関係を調べた面白い研究データがあったのでご紹介します。
こちらのデータは、縦軸に行動ロイヤルティ=継続利用、横軸に満足度を示しています。

このグラフを見ますと、業種によって満足度と継続利用の相関には結構違いが出ています。
「自社の満足度は4だからそこそこ高いな」ですとか「3だから低いな」とかではなく、継続利用に必要な満足度ラインを見定めて運用することの必要性がよくわかります。

それにしても、行政機関は満足度が非常に高いが継続利用されるというのはその通りだなと感じます。
行政機関で一生懸命働く方によっては申し訳ありませんが・・・。
 
ちなみにある複合機メーカーでは、4.9以上のみを「満足」として評価しています。


グッドマンの法則


ジョン・グッドマン氏は、アメリカでの顧客の苦情対応に関する調査を実施した結果、企業の苦情対応がいかに重要かを説いています。これも非常に面白いデータです。

例えば、不満を持つ人で苦情を申したてない人は6割で、その人たちの再購入率はわずか10%なのに対し、不満を申し立てそれが解消された人の再購入率は、5-8割に達しています。
いかに不満客を見つけ、しっかり対応することが重要かがわかります。


CS調査結果の活かし方


続いてCS調査を事業活動にどう活かしていくのか、2つのケースをご紹介します。
 

<ケース1:Customer Satisfaction Index>

CSコンサルティングで有名なJ.D.POWER社では、CSI(Customer Satisfaction Index)という独自の調査方法を持っており、企業ごとの活動内容に合わせた調査項目を設定し、調査結果が企業の部門ごとの活動改善に落とし込めるようになっています。

このメソッドを活用することにより、各部門ごとの改善活動に繋げられるだけでなく、どの項目が総合満足度と相関関係が高いかも把握できるので、全社的視点で優先度を定めることも可能です。
 

<ケース2:CSポートフォリオ分析>

CSポートフォリオ分析は、顧客が期待・重視しているカテゴリーと、満足しているカテゴリーの傾向を把握するための分析手法で、期待・重視度の高い項目を抽出し、プライオリティをつけ、改善活動に反映させることができます。


CS調査と顧客満足度向上施策が一体となったRSプログラム


最後に、「RSプログラム」という手法についてご紹介します。
RSとは、Relationship Satisfactionの略で、主にCRM施策の1つとして展開する顧客満足度向上施策になります。

この施策の中で例えば商品購入1ヶ月後などのタイミングでお客様アンケート(満足度調査)を行うのですが、この施策は本当の目的は不満客の抽出とその早期対応にあります。

この施策のポイントは、「不満」に対する回答内容を事前に仮説し、その内容ごとにあらかじめ対応策を決めておくという点にあります。
このような施策を打つことで、お客様からの回答を受けてすぐにその対処を進めることができ、不満客を満足客やブランドファンへと変えていくことができます。

筆者も幾度かこの手法をご提案し実施した経験がありますが、ほぼ全てのケースで高い成果を上げることができています。
具体的な事例は別の記事でご紹介していますので、ご興味ある方はぜひそちらをご覧いただければと思います。
RPプログラムの事例紹介記事

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。
CSと一言でいっても奥深く、またマーケティング課題としても取り入れていく必要性をお感じいただけたのではないでしょうか?

最後にご紹介したRSプログラムなどはとても有効なCRM施策の1つですので、ぜひお試しいただければと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?