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愛力戦隊ラブレンジャー 2-1

第2話「勇気を出して愛を叫べ」


美しい惑星、地球——。
古来からその星では多くの争いが起きていた。
それは人間同士だけでなく、強大な力を持った怪物やそれを使役する悪の組織、地球を侵略しようとする異星人たちとの争いでもあった。
人々は人間同士で争うことをやめて力を結集し、怪物や侵略者からこの星を守ってきた。
幾度となく繰り返されてきた正義と悪の戦いは、500年近く前に起きた”大決戦”によって、幕を閉じることとなった。

そしてその後、
「ヴィランの残党や怪物が現れたときにどう対処するのだ」
といった人々の不安の声に応えるように組織されたのが、「国際ヒーロー部隊」である。
「国際ヒーロー部隊」とは、その国で起こるヴィラン犯罪や怪物襲撃などの対応にあたる、各国5~10名の選ばれたヒーローたちのことである。

そして現在——
世界征服を宣言する「ディボーチ帝国」と呼ばれる組織が、約400年ぶりに日本に出現した。
人々は組織的なヴィランの出現に恐怖する。
だが、もちろんこの日本にも「国際ヒーロー部隊」がいる。
そう、それこそ我らがヒーロー「愛力戦隊 ラブレンジャー」である。
これは美しい地球、そして愛する祖国である日本を守るために戦った愛の戦士たちの物語である。

~都内某所、ラブレンジャーの基地 作戦会議室~

「おはよーさーん! ってあれ。……何だよ~早起きしたのに俺が一番かよ~」
ラブレッドこと赤木炎児は、眠たそうに目を擦りながら自分の席に突っ伏した。
「残念、炎児。一番乗りは僕だったよ」
「二番乗りは俺な!」
会議室の入り口が開き、ラブグリーンこと緑川駿也、それに続いてラブイエローこと黄島電輔が入ってきた。
手にはコーヒーカップが乗ったトレーを持っている。

「お! なんだ、2人とも来てたのか!」
炎児は嬉しそうに顔を上げる。

するとバタバタと走る音がして、ラブピンクこと桃山桜も作戦会議室に飛び込んできた。
「ふ~! みんなおはよっ! 電車が遅延してて危なく遅刻するところだったよ~。あ~疲れた疲れた~」
桜はそう言うと、どかっと倒れ込むように椅子に座った。

「おはよ。災難だったね」
そう言いながら、駿也は炎児と桜にもコーヒーを手渡した。

「お! サンキュー! 駿也!」「ありがと~!」
2人は礼を言ってコーヒーを受け取ると、ゴクリと一口飲む。
「う~ん。やっぱり駿也の淹れてくれるコーヒーは最高だぜ」
炎児がそう言うと、他の2人も頷いた。
「ありがとう」
駿也は照れたように笑う。

「あれ? 水希ちゃんは?」
コーヒーを飲みながら、桜が突然思い出したように口にした。
「おいおい、しっかりしてくれよ。水希はこの時間は高校だろ?」
「桜って結構天然だよな~」
炎児が呆れたように言うと、電輔が手を叩いて笑う。
「むぅ~。2人ともうるさい!」
2人が茶化すと桜は少しむくれたように頬を膨らませる。

そんなやり取りをしていると、秩父総司令から通信が入った。
「みんなおはよう。 朝礼も済んでいないのに申し訳ないが、ラブレンジャー出動だ! 街にヨークが出現した。至急、現場に向かってくれ!」
「了解しました!」
炎児は力強く答える。他の3人も頷いた。
「よしっ! 行くぞ!!」
全員一斉に立ち上がると、基地の出口へ走り出す。
そして5人はそれぞれの愛車に乗り込むと、現場へと急いだのだった。

~都内某所~
「アーッ!!」
ヨークたちが叫び声を上げながら、人々を追いかけている。
「そこまでだ! ディボーチ帝国!!」
「町をお前らなんかの好きにはさせないぜ!」
炎児と電輔は車から降りると、人々を襲うヨークたちの前に立ちふさがった。駿也と桜の2人も到着する。

「おっはよーラブレンジャー」
ヨークたちの後ろで、黒いドレスに身を包んだ白髪の美しい女性がヒラヒラと手を振る。彼女はディボーチ帝国大幹部、エヌである。

「お前は、エヌ!」
炎児は彼女を指さして叫ぶ。
「一番頭悪そうなレッドくんが覚えててくれたんだ。嬉しいね~」
「な、頭が悪そうだとっ!?」
「……うん? 1人足りないみたいだけど?」
エヌは顔を真っ赤にし憤慨している炎児を無視し、不思議そうに首を傾げる。

「へっ、たとえ水希1人が居なくたってお前らなんか4人で十分だ!」
電輔が余裕の笑みを浮かべ、エヌに返す。
「ふぅん。……だってさ、メチャクチャなめられてるよ、お前」
「何っ!?」
電輔が驚いた声を上げると、エヌの後ろから執事のような姿をし、ライオンのような頭部と爪を持った怪人が姿を現した。

「ふむふむ、それは心外ですな……このオジイケの力、ラブレンジャーどもに見せてあげましょうぞ!」
怪人オジイケはそう宣言する。
そして空気をスゥ~ッと肺一杯に吸い込んだ。……しかし何も起こらない。
「な、なんだ!? 何も起きないぞ?」
炎児は眉をひそめる。
ふと、エヌの方を見ると彼女は耳を両手で塞いでいる……と、次の瞬間だった。

「グオオォォォォォォォォォォッ!!!!」
という大きな咆哮が辺り一帯に響き渡った。
「くっ!?」
「う、うるせ……っ!」
「な、なんなのよこれ!!」
「みんな耳をふさぐんだ!」
ラブレンジャーたちはあまりの大音量に耳を押さえる。駿也の指示でなんとか耳だけは塞ぐことができたが、その音圧に思わず膝を着いてしまう。
しばらくして音が止んだ。

「や、やっと終わったか……みんな大丈夫か?」
炎児が声を掛けると他の3人は、顔を見合わせて頷いた。
「よっしゃみんな! 反撃と行こうぜ!」
立ち上がった彼らの背後で、
「ひいぃぃぃぃっ!!」「た、助けてくれ~!!」「こ、怖いよ~」
などという人々の絶叫が聞こえてくる。

「な、なんだ?」
炎児が振り返ると、人々は皆一様に恐怖に顔を歪ませながら逃げ惑っている。中には腰が抜けて動けなくなっている者もいた。
「これは……!?」

「これが人々を恐怖心で満たし、怖気づかせるわたくしの能力でございますぞ、ラブレンジャーの諸君」
オジイケはホッホッホッと得意そうに笑う。

「……終わった? お前の能力は便利だけど、味方のこっちまでうるさいからね……」
エヌはため息をつきながら頭を振る。
「これはエヌ様、失礼しました」
オジイケが彼女に謝罪をした時だった。

「オジイケよ。お前は僕ちんの部下なんだから、エヌに謝る必要なんかないんだぞ?」
という声がどこからか聞こえてきた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
OP
(OPテーマ:「愛力戦隊!ラブレンジャー」)
(作詞:ラブレンジャー 歌:ラブレンジャー)

「くじけそうな時だって~♪ 逃げだしそうな時だって~♪」
「みんな~♪ がいるから~♪ 大丈夫だよ~♪」
「強大な欲望が迫るとき~♪ 愛が包むさ~♪」
「ラブリーガン♪ ラブリーソード♪」
「いっせーのーで~♪ ラブ注入~♪」
「愛を伝え合おうよ」
「悲しみも~♪ 苦労も~♪ 愛のハートで~♪」
「愛さえあれば~♪ 負けないさ~♪」
「ラブ~♪ ラララ~♪ ラブ♪ ラララブ~♪」
「キュンときて~♪ ほんわかして~♪ キュウっとなって~♪」
「ギュッとして~♪ ぽかぽかして~♪ チュウっとして~♪」
「無限の愛を~♪ 力に変えて~♪ 闇を払え~♪ ラブレンジャー♪」
「愛~♪ 愛~♪ 愛~♪ 愛の戦士~♪ 愛力戦隊~♪ ラブレンジャー♪」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「だ、誰?」
駿也が辺りを見回すと、いつの間にかその声の主は炎児たちの背後に立っていた。
「なっ!?」
「お前は……!?」
全員が驚いて身構える。

そこに立っていたのは、でっぷりとしたお腹が服からはみ出しているおじさんだった。
そして歳に似合わない幼稚園児の帽子を被った男は、ニヤッと笑って自己紹介を始めた。
「僕ちんの名は”ハイパ”! 聞いたことな~い? ディボーチ帝国大幹部の1人、ハイパだぞ~?」
そしてハイパは両手を前に突き出して擦る、珍妙なポーズを取る。

この変なおじさんがディボーチ帝国の大幹部だとは、ラブレンジャー全員とても思えなかった。
……が、よく見ると来ている服に幼稚園児用の名札が付いており「ハイパ」と書かれている。

「お前が大幹部のハイパだって!?」
炎児は信じられないという顔で尋ねる。
すると、そのリアクションを待っていたかのように、彼はニヤリと笑った。
「そうよ~? 僕ちんがハイパさ~! ねっ、エヌそうだよね!?」
まるで瞬間移動をしたかのように、エヌの隣へ移動したハイパ。

聞かれた彼女の方は、引きつった顔で答える。
「う、うぇっ……私に話しかけるなよ……。せめてもっと幹部らしい姿をしてくれないか……」

「ええ~? だって僕ちんのかわいいお姿をみんなに見てもらいたいんだもん!」
彼はまたも珍妙なポーズを取って、エヌに反論した。
エヌだけでなく、炎児たちも思わず顔をしかめる。
「というわけで前回のエヌに引き続き、僕ちんもラブレンジャーたちに挨拶にきたよんっ! 見てみて~ラブレンジャー? 僕ちん可愛いだろぉ~?」
ハイパはウィンクをしながら尋ねた。

「はぁ……私は帰らせてもらうとするよラブレンジャー。じゃあね」
エヌは呆れて帰ろうとする。
「あ、おい! 待てよ!」
炎児が呼び止めるが、彼女はそのまま帰ってしまった。

「や~っと、お邪魔なエヌちゃんが帰ってくれた~! だって、今日は僕ちんと僕ちんの部下のオジイケのお披露目会なんだからぁ~。ねっ、オジイケ?」
「その通りでございますハイパ様! 今日はハイパ様の素晴らしさをラブレンジャー、そして人間たちに知ってもらいましょうぞ!!」
オジイケも張り切って答える。
「こほんっ! みなのもの聞くがよい~! この僕ちんこそが、ディボーチ帝国の大幹部が1人”ハイパ”であるぞ~!」

「オイオイ、何が大幹部だよ? そんな変な格好しやがって……」
炎児は笑いをこらえて言った。
しかしそれを聞いたハイパの顔色が変わった。
「な、なんだと~!? 僕ちんのこの格好は、大幹部として相応しい姿なんだぞ! それを笑うなんて……許せないぞ!」
ハイパは地団太を踏んで怒りを露わにする。

オジイケが彼の肩に手を置き、優しく語りかけた。
「ハイパ様。落ち着いてください。あのような戯言など聞く必要はありませんぞ?」
「そ、そうだな! よしっ! 僕ちんの晴らしさをラブレンジャーたちに見せてやるぞぉ~!!」
ハイパはオジイケの言葉に落ち着きを取り戻すと、改めてポーズを取った。
「僕ちんは恐怖のハイパ! 今からラブレンジャーを恐怖のどん底に突き落としてあげるよ~ん!!」
ハイパはそう宣言すると、オジイケに合図を送る。

すると、またオジイケの「グオオォォッ!!」
というの咆哮が響き渡る。そのあまりの大音量に、ラブレンジャーたちは思わず耳を塞いだ。
「ぐうぅ……」
「うるせぇ~……」
「よ、よし。みんな耳を塞ぐんだ!」
駿也が指示を飛ばすと全員が耳を塞ぐ。

咆哮が終わると同時に、炎児は
「みんな変身だ!いくぜ!!」と叫ぶと、他の3人も頷く。
「ラブ注入!ラブリーチェンジ!」
ラブラブ~♪ ラブラブ~♪ ラッブラッブ~♪ ラブラブリ~♪ チュッチュ
変身を終えたラブレンジャーたちは、オジイケとヨーク、そしてハイパたちに武器を構えて立ち向かう。

「よっしゃ決めるぜ! ラブファイヤースラッシュ!うおぉぉ!」
「ラブサンダーシュート!」
「ラブヴァインウィップ!」
「ラブフラワーカッター!」
ラブレンジャーたちはそれぞれの技を使い、攻撃しようとした。

だが次の瞬間、「グオオォォォォォォォォォォッ!!」
と、再びオジイケが叫んだ。
すると4人の足がピタリと止まった。

「な、なんだ!?」
「体が……うごか……ない!?」
ラブレンジャーたちは必死に動こうとするが、まるで金縛りにあったようにピクリとも動けなかった。
オジイケはそんな4人を見てホッホッホッと高笑いをする。
「どうやら怖気づいたようですなぁ~。何度も我が咆哮を聴いているのですから無理もない」

「なっ!? 俺たちが怖気づいただと……。そんなはずねぇ! 俺らはヒーローなんだ!」
ラブレッドはオジイケの言葉を否定しながら、体を動かそうと必死にもがくがやはり体は動かない。
「無駄ですぞ? この咆哮を聞けば誰しも恐怖に囚われるのですから。そう、サバンナでライオンの咆哮を聴けば、誰しも震え上がるものです。私の咆哮を受けたあなた方は、生物としての本能で理解したのですよ。このオジイケには勝てない……とね」

「ふ、ふざけるな! 動け……うごけぇぇぇっ!!」
ラブレッドがいくら叫ぼうとも、彼の体は動かない。オジイケはそんな彼を見て高らかに笑う。
「ホッホッホッ! 無駄ですぞ? 一度感情を支配した恐怖はなかなか消えぬもの……。ハイパ様、あとはお好きなように」
「わ~い! やったぁ~!!」
ハイパはオジイケの言葉を聞いて飛び跳ねた。

そして不敵に微笑むと
「やっちゃえ、ヨーク」
と戦闘員であるヨークたちに指示を出した。
「アーッ!!」
ヨークたちは一斉にラブレンジャーたちに襲いかかる。
「ぐっ!?」
「う、うわぁぁ!!」
4人は動きを封じられたまま、ヨークたちの攻撃を浴びた。
そして地面に倒れ伏してしまう。

「くっ……くそぉ……」
「動けないんじゃ……どうしようもないじゃない……」
「ちくしょう……」

「アーッ!! アーッ!! アーッアッアッアッアッ!!」
ヨークたちはそれぞれ悔しがる4人をあざ笑う。
「それじゃあ、僕ちんが止めさしちゃお~っと!!」
そう言うとハイパはお尻を突き出し、両手を擦り合わせる珍妙なポーズを取り
「ハイパハイパブンブンカッター!!」
と叫んだ。
すると無数の黒い粒子がラブレンジャーたちにぶつかる。
火花が飛び散り、ラブレンジャーたちの苦痛の声が上がった。
「うあぁぁっ!!」
ラブレンジャーたちは極度のダメージを受けたことで、変身が解除されてしまう。

「ひょひょ~! この程度~? 僕ちんの勝ち~!!」
ハイパは勝利のポーズを取った。
「オジイケ、僕ちんたちの連携の勝利だね~。これで、僕ちんたちの恐怖のお披露目会は終わりだじょ~!」
「ホッホッホ! ではハイパ様、この者たちをどういたしましょう?」
「う~ん……そうだなぁ……」と、ハイパは倒れているラブレンジャーたちを見ながら考える。
そして何かを思いついたのか、ニヤリと笑った。

「……よし! みんな、ラブレンジャーを拘束しろ!!」
ハイパはオジイケに命令する。するとオジイケは敬礼し、叫んだ。
「了解しました! 皆のものぉー!! 捕らえろぉぉぉ!」
「アーッ!!」
戦闘員たちが雄叫びを上げながら、倒れている4人に近づいていく。
そして4人を数人がかりで立たせると縄で拘束した。

「くっ……くそっ……動けない……」
「こ、こんな縄、すぐほど……い……こ、この……!?」
4人はなんとか逃れようともがくが、戦闘員たちの拘束はビクともしなかった。
ハイパはそんな4人を見てニヤニヤと笑いながら、ラブレンジャーたちの顔をじっくりと眺めていく。
彼らはまだ戦意を失っておらず、全員がハイパを睨み返していた。

するとハイパの足が電輔の前で止まった。そして
「おやぁっ~、キミの名前は?何というのぉ~?」と、電輔の顔を覗き込んだ。
「くっ……この……! 触るな!」
電輔は顔を背けながら叫ぶ。しかしハイパはおかまいなしだ。
「君の名前はなんていうの~? 僕ちん知りたいな~」
「……っ! お、俺は電輔だ! もういいだろ!? 離せよ!」
「え~! 教えてくれてありがとう~! 僕ちんキミみたいなわんぱくな子が大好きなんだ~! ねぇ、僕ちんの息子にならない? 僕ちんだけの可愛い息子になってよ~!」
ハイパはそう言って電輔に抱きつき、頬ずりをした。

「ひっ!? お、おい!やめろって!」
「や~だよ~ん! 決めちゃった~! キミを僕ちんのモノにする~!!」
ハイパは電輔に抱きつきながら、舌をペロペロと出しながら微笑む。
「ふざけんな! 誰がお前のモノなんかになるかよ!」
「も~照れちゃって~!可愛いんだから~♪」
ハイパは電輔を抱きしめたまま離そうとしない。

その時だった——。
「ラブウォーターアロー!!」
という声と共に、何本かの水の矢が飛んでくる。
それは4人を拘束している縄を切り裂いた。そして自由になった4人はヨークたちを攻撃し、ハイパから距離を取る。
「な、なんだなんだ~? 何が起きたんだ~?」
困惑したように珍妙なポーズを取るハイパ。

「助かったぜ!」
「危なかったぜ、サンキューな!」
「助かったよ!」
「ありがとうね、水希ちゃん!」
ラブレンジャーの4人は感謝の言葉を口にする。

「みんな遅れてすみません! ここから反撃といきましょう!」
そう言ってラブリーガンを弓状に変形させて、ハイパたちに狙いを定めていたのはラブブルーこと海藤水希だった。
「あらら! まだお仲間がいたのね~! 初めまして、僕ちんはハイパ! ディボーチ帝国の幹部だぞ~ん!」
「なっ!? か、幹部!?」
ハイパの見た目に驚いたのか、幹部の登場に驚いたのか、水希は素っ頓狂な声を上げる。
しかしすぐに気を取り直し、ハイパとの戦いに臨もうと身構えた。

「んぅ~ん! ラブレンジャーには挨拶できたし、僕ちんの強さはわかってもらえたしぃ~。人間どもとラブレンジャー4人を怖気づかせることができたからおおむね目的は達成だじょ~!」
「ではハイパ様、ここは戻りましょうか」
とオジイケが進言する。

「うんうん、そうだね~。それじゃあね~、ラブレンジャーたち~! で・ん・す・け・くぅん♡ また遊ぼうねぇ~!」
そう言うとハイパたちは空間を割いてその中へと立ち去ろうとする。
しかし水希はここで逃すわけにはいかないと思ったのか、すかさず攻撃を仕掛けた。
「逃がしませんっ!!」
水希はそう言ってハイパに向けて矢を放つ。
しかし彼は振り向くことなく避けた。そしてそのまま彼らは姿を消したのだった……。

「す、すみません! この距離で外してしまうなんて……」
水希は申し訳なさそうに謝るが、ラブレンジャーたちは彼女を咎めるようなことはしなかった。むしろ感謝の言葉を述べる。
「いや~助かったぜ水希!」
「そうよ! 水希ちゃんが来てくれなかったら結構危なかったよ。特に電輔が」
「ったく……モテる男の宿命とはいえ、変なのに気に入られちまったぜ……」
「ははっ、本当にお気の毒に……」
そう言って笑いながらも、4人はハイパの恐怖がフラッシュバックしていた。
縛られていたとき、ハイパのおぞましい笑みと言葉に背筋が凍るような思いをしていたのだ。
しかしそこでふと疑問を抱く。なぜ自分たちは動けなかったのかと……。

すると水希が口を開いた。「あの……みなさん? どうしてみなさんは動けなかったんですか?」
4人は顔を見合わせる。そして代表して炎児が答えた。
「……それがわからねぇんだ。オジイケっていうあのライオン頭が叫ぶのを直接聞いてから、体が動かなくなったんだよ……あいつらは恐怖で俺たちの体が動かないって言ってたけどな」

「恐怖……ですか。とりあえず一旦作戦会議室に戻って話合いましょう」
炎児から話を聞いた水希は、そう提案し4人もそれに同意する。
こうして彼らはアジトへと戻っていったのだった……。


~恐るべしオジイケの咆哮! そして、エヌに続くもう1人の幹部ハイパの出現!
相手を怖気づかせてしまうオジイケの咆哮の前に、ラブレンジャーたちでさえ、恐怖を感じてしまったのだろうか?
負けるなラブレンジャー! 勝ってくれラブレンジャー!!~

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